看護師は、一般的に「高給取り」というイメージがあります。

しかし実際に看護師として働いている方の多くは、「看護師は本当に高給なの?」と疑問に感じており、中には「今の職場は月収が安いから、もっと給料を多く稼げる職場へ転職したい」と考えている方もいらっしゃるではないでしょうか。

そこで今回は、看護師がより確実に年収をアップさせるためにはどうすればよいかを、看護師としての実体験を交えながら、解説していきます!

給料が高い看護師と給料が安い看護師の差

同じ看護師という資格職であるはずなのに、給料が高い看護師と安い看護師には、どういった差があるのでしょか?

年収をアップさせる方法を考える前に、まずはどういった点で看護師の給料に差が出るのかを、考えていきます。

看護師の給与は本当に高給?

そもそも、看護師の給料は世間一般で言われるほど「高給」なのでしょうか?

日本看護協会が2012年に行った調査によると、看護師の平均年収は532万5324円でした。

同じく2012年の日本国内おける平均年収は、厚生労働省の調べによると約409万円であることから、看護師は平均年収に比べ約120万円、月に計算しても約10万円高いという計算になります。

よってこれだけを見ると、「看護師は他職種に比べて高給である」ということが言えます。

しかし一方で、こんなデータがあります。

厚生労働省では、調査結果を元に「年収が高い職業」をランキングにしているのですが、そのランキングにおいて、看護師は26位でした。

看護師よりも上位の職業を見てみると、「医師」「弁護士」など、世間的にも給与が高いといわれている職業がある一方で、「高等学校教員」や「自動車外交販売員」など、一般的にはそこまで高給とされていない職業も多くあげられています。

このランキングを見ると、看護師という職業が、他職種に比べてずば抜けてお給料が高いというわけではない、ということが言えます。

また、看護師の場合は患者さんの命を扱っており、責任も重い仕事です。

残業も多く、夜勤もあることから、仕事内容もハードと言わざるを得ません。

そのため、世間一般から見れば、確かに高給と言えるかもしれないが、他にも高給である職業は多く、仕事内容や労働時間等を加味すると決して高いとは言えません。

看護師の給料を上げるには、「基本給」と「手当額」をチェック!

けっして高給とはいえない看護師の給料。そんな中、看護師の給与に差が出るのは、なぜなのでしょうか?

看護師は、初任給は他職種に比べてとても良いのにも関わらず、それから先の昇給率が大変低いという現状があります。

20代のころは他職種に比べ圧倒的に高かった給料が、年を重ねるごとにその差は縮まっていき、ついには抜かされてしまう、というケースが多いのです。

では、昇給率が低い看護師において、なぜ給料に差が出てしまうのでしょうか。それは、「基本給」と「手当額」にあります。

基本給は、給料において基本となる金額です。また、ボーナス支給の際は、この基本給がベースとなって計算されます。

よく、「給料がイイところはボーナスがイイ」という意見がありますが、一見すると、〇か月分が多ければ多いほど、ボーナスも高くなり、年収も高くなるというイメージがありますが、せっかく〇か月分だけが多くても、元となる基本給が少ないと、実際には他の病院と大差ない、ということになってしまいます。

つまり、基本給が高ければ、それだけボーナスが高くなることが予測され、結果として年収額もUPが期待できる、というわけです。

また、看護師として外せないのが、「手当額」です。

たとえば夜勤に入るごとに支給される「夜勤手当」ですが、この手当についても、金額が低ければ、いくら夜勤をやっても、手元に残る金額は決して高くありません。

他にも、「役職手当」や「資格手当」など、様々な手当がつく一方、これらの金額が高くなければ、お給料の金額も高くはなりません。

よって、手当額の額により、お給料の金額も変動してしまうのです。

このように、看護師の給料を大きく左右しているのは「基本給」と「手当額」であり、これらの額が高い職場で働くことができれば、「給料が高い看護師」になれます。

給料が高い看護師と給料が低い看護師の差、それはそのまま「基本給・手当額の高い職場と基本給・手当額の低い職場の差」ということが言えます。

地方による差も大きい

また、職場の差は職場がある地方にも大きく由来しています。

私自身、関東の都市部にある病院から、家庭の事情で東北の過疎地域の民間病院へ転職をした際、夜勤回数はほぼ変わらない中、基本給と手当金額がとても低かったため、手取りの給料が月約10万円もさがってしまいました。

また、肝心のボーナスも「月々の給与に分散して支給する」という形式がとられていたため、年収としては200万円以上さがってしまいました。

正直、「看護師の資格さえあれば、どこでも働ける」と安易に考えていた私にとって、年収約500万円から一気に300万円代に下がってしまったことは想定外のことであり、とてもショックでした。

都市部であればあるほど、病院の規模が大きい一方で看護師不足も深刻となり、給料面を改善することで、看護師を集めようとします。

実際に年収が高い病院を調べてみると、そのほとんどは東京または大阪の職場であり、年収が800万円をこえるケースも珍しくはありませんでした。

一方、過疎地域では職場数が少なく、看護師の給料は極端に上げなくてもある程度人は集まるため、どうしても金額は低く抑えられています。

私も家庭の事情で東北の過疎地域の民間病院へ転職しましたが、看護師の求人募集を探しても数件しかなく、とてもお給料によって転職先を選べる環境ではありませんでした。

よって、より多く稼ぎたい、という点だけに注目して募集を探すならば、地域ではなく、都市部の職場へ転職することで、よりお給料の金額を上げることが期待できます。

罠に注意!?やってはいけない年収アップ方法

看護師の求人情報を見ていると、「年収800万円オーバーなんて、本当にありえるの?!」とびっくりしてしまう求人がある一方で、「本当にこんなたくさん稼げるのか?」と疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、「やってはいけない年収アップ方法」と題し、注意していただきたい「年収アップ方法」をご紹介します。

「美容外科クリニック」は、インセンティブが嬉しい反面…

看護師求人を見ていると、とびぬけて高給となっている業種が「美容外科クリニック」の求人です。

美容外科は通常の給与に比べ、一見すると給料が高く表示され、年収800万円以上も狙える求人も確かにあるのですが、これには「インセンティブ」という裏があります。

インセンティブとは、いわゆる「出来高」のことを指しており、より多くの方に美容外科を利用してもらえるように勧誘したら、その分お給料の金額も上がっていく、という仕組みになっています。

これは逆を言えば、「患者さんの勧誘ができなければ、お給料の金額はとても低くなる」ということを意味しており、接客を苦手と感じる方や、話下手な方にとっては、かなり難しい条件となります。

また、美容外科は原則として働く看護師自身も美容に気を使い、常に綺麗でいなくてはいけません。

患者さんが看護師を見て、「私もこんな看護師さんみたいなきれいな人になりたい」と思わせるような美貌を持ち合わせていること、それが採用の基準となるのです。

よって美容外科クリニックへの転職を希望される場合には、まず「ある程度自分の美貌に自信がある看護師でないと、採用されにくい」こと、そして採用された後も「インセンティブ次第で給料金額は大きく変わる」ことに、注意しましょう。

募集要項に掲載されている「月給モデル」を鵜呑みにしない

今よりもより多く稼ぎたい、月収を上げたい、と考えている看護師さんにとって、募集要項に記載されている「月給モデル」は、夢が膨らむものです。

しかし、この「月給モデル」は、あくまで「総支給額」であり、実際の手取り金額ではありません。

例えば「今は手取り30万円いかないのに、この職場は35万円を超えている!」と思い、転職したところ、転職後初の月収は35万円どころか、30万円にも遠くおよばない、ということもめずらしくありません。

これは決して職場側が騙そうとしているのではなく、あくまで「総支給額」として提示したものであり、実際にはそこから厚生年金や社会保険料などがひかれるため、手取りの金額は少なくなります。

よって、募集要項をチェックする際には、「あくまで総支給額」ということは常に頭の片隅に置きながら、チェックすることをお勧めします。

管理職になることで得られる、「役職手当」の実際

給料を上げたいと考えている看護師さんの中には、「役職に就くことで、夜勤を少なくしながらお給料を上げたい」と考えている方もいらっしゃるかと思います。

しかし実際に看護師が役職に就くと、日中業務が中心となり、夜勤が少なくなるため、看護師の給料を大きく左右する「夜勤手当」が下がり、結果として手取り金額がほとんど変わらなくなってしまう、というデメリットがあります。

私が実際に主任看護師から聞いた話では、「夜勤手当が減少し、残業手当もつかなくなった一方で、役職手当が夜勤手当一回分程度しか出ないことから、手取り金額は夜勤をたくさんやっていた役職前の方が断然多かった。今はなるべく年休を使わず、ためた年休を年度末に買い取ってもらうことで、なんとか年収額をキープしている」とのことでした。

他にも、師長が飲み会において冗談交じりに「私のお給料額を聞いたら、みんなあまりの安さにびっくりしちゃうと思うから、言わない。」と言っていたこともあります。

公立の病院では公務員扱いとなるため、在籍が長ければ長いだけ昇給が見込めますが、それ以外の病院へ勤務している場合には、「役職に就く=お給料が上がる」とは言いにくいのが現状となっています。

認定看護師等、資格は年収アップに有効?

認定看護師・専門看護師を筆頭に、今は看護師の資格に+して、様々な資格を取得する看護師さんが増えています。私も、看護師免許の他に糖尿病療養指導士の資格を所持しています。

しかし、これらの資格取得について、講習や試験など、お金がかかるものが多い一方で、取得後も認定看護師や専門看護師等、一部の資格しか資格手当がつかないのが実情です。

ある認定看護師さんから聞いた話では、「認定看護師の資格を取得したところ、資格手当は数千円と微々たるものなのに、勉強会や新たな委員会の立ち上げ等、業務量が膨大となり、連日残業続きとなった。主任となったために残業手当もつかず、金額は取得前とほぼ変わらないものの、感覚として、お給料は増えるどころかむしろ下がった」とのことでした。

資格を取得することは、看護師としての知識や経験、そして自信を与えてくれるので決してマイナスとは言いません。

しかし、職場において看護師が年収アップのために新たな資格を取得する、というのは有効な手段ではない、といえます。

夜勤専従や有休未消化での年収アップが、後々もたらすもの

シフト制勤務をしている看護師の職場において、もっとも手っ取り早く収入額を増やす方法。

それは、夜勤専従になって夜勤回数を増やす、積極的に残業を引き受ける、有休を極力使わずに年度末、まとめて買い取ってもらう等、労働時間を増やすことで手当金額を増やす、という方法です。

私の知り合いでも、こういった方法で年収を100万円ほどアップさせた看護師さんがいるのですが、これらの方法はけっしてお勧めはできません。

私自身、以前家庭の事情から仕事量を増やすとともに、休日にも派遣バイトを入れ、一日も休まず働き続けたところ、3か月ほどで体調を崩してしまい、働けなくなってしまったことがあります。

私の場合は極端ですが、看護師はシフト制勤務によって生活リズムが崩れやすく、ただでさえ体調を崩しやすい職場といえます。

そんな中、看護師の仕事時間を増やすということは、それだけ心身への負担が大きくなることを示しており、無理がたたると体調を壊し、看護師という仕事そのものができなくなってしまう恐れがあるため、できる限り避けたほうがよいと考えます。

看護師が給与を上げるための現実的な作戦

ここまで、「やってはいけない年収アップ方法」をご紹介してきましたが、では現実的に給与を上げるための現実的な作戦としては、どういったものがあるのか。考えていきましょう。

医療機関にこだわらず、年収に着目して転職先を探す

先ほど「基本給」と「手当額」についてお話させていただきましたが、給与を上げるために真っ先に考えられる現実的な方法、それは「これらの金額が高い職場へ転職する」ことがあげられます。

求人情報を見ていると、やはり大学病院など看護師の業務が多忙であることが予想される職場では、給料も高くなっています。

実際に私も新人時代勤務した大学病院は、それ以降就職したどの病院よりも年収は高かったです。

しかし、看護師の職場は、病院など医療機関だけとは限りません。

今は訪問看護や有料老人ホームといった、介護系の求人も増えており、中には医療機関以上の金額で求人を出している職場もあります。

私も派遣看護師として働いた有料老人ホームにおいて、「医療機関よりも良い条件を出すから、うちの常勤にならないか」と勧誘を受けたことがあります。

具体的には「オンコールなしで、最低でも年収500万円以上は出す」と言われ、当時すでに医療機関への転職を決めていた私も、心が揺れたのを覚えています。

これらの職場における看護師不足は、医療機関以上に深刻であることも多いため、より良い条件を出すことでなんとか求人を確保したい、という介護業界側の狙いもあります。

よって、年収アップのために転職を検討している場合には、多忙であることを覚悟して病院を検索するか、あるいは医療機関にこだわらず、年収、特に「基本給」「手当額」が高い職場に狙いを絞って探していくことが、現実的な作成として有効となります。

仕事をする上でのNGを極力なくす

また、より年収の高い求人を探すために、心がけたいのが「仕事をする上でのNGを極力なくす」ということです。

年収を高く設定している職場の中には、一部の看護師さんにとっては受け入れにくい、「夜間オンコール対応あり」「休日も緊急時は電話対応し、必要時は現場へ駆けつける」等の条件を出しているところがあります。

これらの条件は嫌厭されることが多い分、オンコール手当が高くなり、より高い年収が提示されやすくなります。

特に年収アップを交渉する際、「私はここまでNG項目なく働くことができる」というのは、とても大きな武器になります。

ライフワークバランスが提唱され、プライベートとの両立がより重要視されている今だからこそ、NG項目なくスケジュールを仕事に合わせることができる看護師さんは貴重であり、「多少年収をアップさせてもいいから、うちに来てほしい」と思ってもらいやすくなります。

よってより年収をアップさせるためには、仕事をする上でのNGを極力なくす、ということも良い手段と言えます。

仕事に専念できる環境を整える

年収が高い職場であればあるほど、看護師としての責任は重く、仕事内容も大変である可能性は高くなります。

そういった職場で仕事を続けていくためには、仕事をする上でのNGをなくすとともに、プライベートにおいても仕事に集中できる環境を事前に整えておくことがおススメです。

例えばシングルマザーであり、より収入を増やしたいと考えている看護師さんの場合は、子どもが体調不良となった時や保育園・小学校が休みの間でも預かってもらえる人や施設をあらかじめ何か所かチェックしておき、いざという時にいつでも利用できるようにします。

実際に私も、周囲に頼れる人がいない中、乳幼児である二人の子育てと仕事を両立させるため、普段は保育所を利用しながら、同時に子育てタクシーとファミリーサポート、そして病児保育にも対応できるベビーシッターさんと契約を結び、体調不良時にはそれらのサービスを活用するようにすることで、子どもの体調に左右されずに、安定した収入を得ることができるようになりました。

事前に仕事へ専念できる環境を整えておくことで、より年収が高い仕事を選びやすくすることができるのです。

転職で年収アップをする流れ

昇給率が低い看護師において、確実に年収をアップさせる方法、それはやはり「より年収が高い職場へ転職すること」です。

実際に転職によって、年収1000万円超えを達成した看護師さんもいるんです。

では、転職によって確実に年収をアップさせるために、抑えたいポイントをご紹介します。

給与情報、ここをチェック

看護師の求人情報をチェックする上で、年収をアップさせるためにまず確認するのが「給与情報」です。

ご紹介しているように、まずチェックしていただきたいのが、求人情報のトップに挙げられている年収金額ではなく、「基本給」および「手当額」です。

特に手当額は、金額自体もさることながら、「就職後、どれくらいの割合で手当がつく業務ができるのか」も重要です。

いくら手当額が高くても、月に1~2回のみの勤務では、まとまった金額となりません。

給与情報を見る際には、「基本給」「手当額」のチェックとともに、「どれくらいの割合で手当がつく業務ができるのか」もチェックしておきましょう。

「長く働けるかどうか」も重要なポイント

いくら年収の高い職場へ就職しても、その職場で働き続けなければ、高い年収を得ることはできません。

高い年収だからという理由だけで転職してしまうと、就職後に仕事へ支障をきたすほど人間関係が悪い、利用者からのクレームに上層部が全く対応してくれない、などといった理由から、仕事を続けられなくなってしまうことも考えられます。

よって年収が高いという点にだけ注目するのではなく、職場での人間関係や仕事状況など、できる限りの内部情報を集めた上で、「長く働けるかどうか」という点も事前に確認することが大切です。

同じような業務内容なのに、ひとつだけとびぬけてお給料が高い、という職場は、特にこういった何かしらの問題を抱えている職場が多いため、より多くの情報を集め、ひとつひとつじっくりと求人情報を確認することが大切です。

転職は「情報量」が勝負。だからこそ、転職サイトを活用すべき!

より年収が高い求人を探す際、最も重要なのが「情報をよりたくさん集めること」です。

しかし、求人情報を自力でたくさん集めようと思っても、ネット上には真偽が確かでない情報も多く、より確実な情報を集めることは難しくなっています。

そこでお勧めしたいのが、転職サイトを活用することです。

転職サイトでは、表向きに掲載されている求人情報の他に、非公開となっている求人情報や、人間関係・有給取得率など、個人では集められない情報をたくさん持っています。

これらの情報は登録することで提供してもらえるので、利用しない手はありません。

また、転職サイトを経由することで、個人ではしにくい、年収UPに関する交渉も、直接職場へしてもらえる、というメリットがある他、「自分では思いもつかなかった新たなジャンルのお仕事も紹介してもらえる」というメリットもあります。

例えばある男性看護師が、結婚をきっかけに転職を検討したところ、自分では全く考えていなかった「医療器具メーカー」への転職を勧められ、最終的に病院での看護師時代に比べ、年収が200万円以上アップした、というケースもあります。

より年収が高く、そして長く働ける職場を見つけ、転職するためにも、ぜひあなたも転職サイトを活用してみてください。