がん性疼痛看護認定看護師とは

役割

がん性疼痛看護認定看護師はがん性疼痛に苦しんでいる患者さんやその家族に対して、がんを起因とする苦痛を軽減することができるような熟練した看護技術を用いて、ほかのスタッフとも協調しながら水準の高い看護を実践することが求められます。

それとともに、がん性疼痛に対応する看護実践を通してほかの看護スタッフへの指導も行います。さらには、がん性疼痛の分野においてほかの看護スタッフの相談にも乗り、相互で知識の共有を図る必要もあります。

求められる専門知識や技術

がん性疼痛看護認定看護師には、がん性疼痛に関する最新の専門知識が求められます。

また、がん性疼痛がある患者さんの身体的、心理的な問題だけでなく就労や経済面なども含めた社会的な問題、人生の意味といったスピリチュアルな問題も総合的に判断し、その患者さんに最適なケアを計画・実施することのできる豊富な知識が必要とされます。

さらに、がん性疼痛に対して用いる薬剤や薬理作用について理解した上で安全、適切に使用することができ、その効果について評価することのできる技術も必要です。

その上で、がん性疼痛のある患者さんやその家族に対して生活上の負担を減らし、生活の質を維持し向上させるよう、医療や看護を受けている以外のときに必要とされるケアなどについて指導するとともに、常に適切な看護援助をする技術もなければなりません。

これらは、がん性疼痛のある患者さんとその家族の権利について擁護し、自己決定を尊重する看護が実践されるための知識にもとづくものであり、より質の高い医療のためにほかの職種とも共働し、チームの一員としての役割を果たすことができる能力を発揮する必要もあります。

がん性疼痛看護認定看護師になるには

資格取得方法

日本看護協会が実施しているがん性疼痛分野の認定看護師認定審査に合格し、登録手続きを済ませることによって、がん性疼痛看護認定看護師になることができます。

資格保有者数

がん性疼痛看護認定看護師の資格保有者は、日本看護協会認定部の資料によると2014年現在、全国で700名となっています。資格保有者の全国的な分布については都市部に多い傾向があり、地域によって人数にはかなりばらつきがあります。

難易度・合格率

合格率はここ数年で90%台が続いているものの、受験するまでのハードルは非常に高くなっています。

まずは、がん性疼痛看護認定看護師認定審査の受験資格を満たさなければなりませんが、5年以上の実務経験と3年以上のがん性疼痛看護の分野の経験に加え、なおかつがん性疼痛看護の分野で指定された教育課程を修了しなければなりません。

がん性疼痛分野の認定看護師養成機関は数が非常に少なく、年度によっては休講になっている場合もあります。教育課程の期間は6ヶ月以上であり、授業は平日の昼間に行われるますから、勤務を続けながら通学することはできません。

教育課程を受講するためには早めに情報を集め、各養成機関の開講期間に合わせて自分自身の勤務計画も年単位の長期で立てておく必要があります。

また、費用も高額であり、養成機関に支払う授業料などのほか認定審査の受験料、講座を受けるにあたって養成機関のある地域へ引っ越さなければならないという場合もあります。

がん性疼痛看護認定看護師の資格取得後

活躍できる職場

総合病院がおもな職場となり、配属される職場については内科、血液、呼吸器、神経内科などといった科の病棟や地域連携総合支援センター、緩和ケアチームの外来窓口、外来化学療法センターなどといったように幅広くなっています。

日常的には、病棟でがんの患者さんを看護するほか、緩和ケアチームの一員となってがんの分野での医師をはじめとするスタッフとともに患者さんやその家族のコンサルタントも行います。また、定期的に検討会を開いて緩和ケアの啓蒙や質の向上に資する活動もします。

さらには、自分が働いている医療機関以外の関係者とも定期的な事例検討会を行い、地域連携のために知識を共有するといった活動もしています。

がん性疼痛分野の認定看護師が活躍している具体的な医療機関としては、茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター、三重中央医療センター、新潟県済生会三条病院、信州大学医学部附属病院、愛知医科大学病院、横浜南共済病院、帝京大学千葉総合医療センターなどが挙げられます。

将来性

以前はがんを治療することに重点が置かれていて、がんにかかったことによって生じるさまざまな問題については患者さんやその家族にとって、治療をする上で避けて通ることのできない深刻な問題であるにもかかわらず、十分に考慮されているということのできない状況でした。

しかし、がんによる疼痛のために日常生活へ支障が生じ、治療を続けることも困難になると、がんに立ち向かう精神力もなくなってしまい、治療の効果を発揮することができないといった事態になってしまいます。疼痛による患者さんの苦痛を和らげ、患者さんや家族が抱いている不安も解消することで治療の効果も上がり、がんが治癒する可能性は高まります。

今後は、単にがんを治療するだけの医療よりも、患者さんや家族の生活の質を向上させ、将来の生活も見据えた医療が重要になりますから、がん性疼痛看護認定看護師の果たす役割は大きくなっていくと見込まれます。