急性・重症患者看護専門看護師とは

役割

急性・重症患者看護専門看護師には、緊急を要する現場において、危機的状況にある患者に対し、最良の医療的なサポートが実現できるよう支援していく役割が課せられています。

急性・重症患者が運び込まれる現場では、対応ひとつが患者のその後の病状を左右し、適切な介入のタイミングを逃してしまうと、生命の危機に繋がってしまうこともあります。こうした一刻を争う現場では、質の高いケアを実践できる医療従事者の個々の技術に加え、それを効果的に発揮することができる現場でのチームワークが大切になってきます。

急性・重症患者看護専門看護師には、医師、看護師をはじめそのほかの医療スタッフや家族などの間に入って調整を行い、より良いケアを提供できるよう、環境を整えていくという重要な役割があります。

また、急性・重症患者やその家族は、予期せぬ事態に、身体的にも精神的にも負担が大きくなっています。こうした患者や家族に対する精神面も含めたケアや支援も大切な役割となっています。

そのほかにも、急性・重症看護の質向上を図るため、院内外において研修や勉強・講習会などを開催し、急性・重症看護に携わるナースの教育、育成にも携わります。

求められる専門知識や技術

急性・重症患者看護を必要とする現場では、患者は危機的状態にあり、迅速かつ細心の注意を払った対応が求められます。急性・重症患者看護専門看護師にはこうしたことを可能にする幅広い知識と高い技術、豊富な経験、また、これらに裏打ちされた優れた判断力と行動力が求められるでしょう。

こうした能力とともに、効果的なケアを行うためには、現場におけるチームワークが大切であり、急性・重症患者看護専門看護師には、それを実現できるような現場における調整力も求められます。

また、急性・重症看護に携わるナースへの教育には、指導を行ったり相談に対応したりする立場にある者として、日々進歩する急性・重症患者看護に関する新しい技術や知識を常に学んでおくという姿勢も必要です。

急性・重症患者専門看護師になるには

資格取得方法

急性・重症患者看護専門看護師となるためには日本看護協会が実施する、急性・重症患者専門看護師認定審査に合格する必要があります。

審査の受験には、看護師の資格を有すること、看護系大学院修士課程を修了し、日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準における所定の単位を取得(26もしくは38単位)していること、実務経験が通算5年以上で、かつそのうち3年以上の急性・重症患者看護分野における実務経験が必要です。

急性・重症患者看護専門看護師の教育課程を実施している大学院は、聖路加看護大学大学院、東京医科歯科大学大学院など、東京を中心に、全国で21ヶ所あります。名古屋市立大学大学院看護学研究科では、平日夕方や、土曜日などに講義が開かれており、仕事を続けながらの単位取得を支援しています。

資格保有者数

2013年1月現在、急性・重症患者看護専門看護師として147名が登録されています。

難易度・合格率

急性・重症患者看護専門看護師認定審査の合格率は、8割から9割程度と高いものとなっていますが、実務経験や修士課程の修了、所定の単位の取得など審査にたどりつくまでの道のりを考えると、急性・重症患者看護専門看護師へのハードルは低いものとは言い難いでしょう。その分認定後の活躍の場は広がっており、やりがいを感じることもできるのではないでしょうか。

急性・重症患者看護専門看護師の資格取得後

活躍できる職場

急性・重症患者看護専門看護師は自治医科大付属病院、東京女子医科大学病院などの大学病院、名古屋第二赤十字病院など赤十字が運営する病院、地域の拠点となっているような総合病院、救急医療を行う医療センター、国立循環器医療センター、救急救命センターなどが活躍の場となっています。

集中治療室や救急救命で活躍している人が多くなっています。また、大学や大学院の教員となり、後進の指導にあたっている人もいます。

将来性

近年では、医療の高度先進化により、危機的な状況のなかでも「助かる命」が増えてきています。こうした急性・重症患者に対して最良なケアを行っていくためには、専門的で高度な知識や技術に加え、それを効果的に実践し、患者にとって最良のサポートができるような環境を作っていくことが何より大切です。そうした役割を担うことを期待されている急性・重症患者看護専門看護師の必要性は、今後も高まっていくものと考えられます。

また、急性・重症患者に対するケアは、急性期だけに必要なものではありません。一般病棟においても、複数の病気を患っている場合や、合併症を併発してしまった場合などでは、患者の体調が急変したり、重症化してしまったりする恐れがあります。こうした一般病棟における緊急時の対応においても、急性・重症患者看護専門看護師が介入することで、より効果的な看護を実践していくことができると言えます。

特に高齢化が進むなかでは、基礎体力や免疫力が低下している高齢の患者への緊急的な対応は、増えてくるものと考えられます。このようなことから、急性・重症患者看護専門看護師の活躍の場は、今後も広がっていくといえるのではないでしょうか。