看護師の職場は病院以外にも様々な選択肢があり、仕事内容の幅も広がってきています。

その中の一つに企業の医務室や健康管理室で働く産業看護師(産業保健師)の仕事があります。

産業看護師は、看護師が就くことができる病院以外の仕事の中でも、さらには企業看護師の仕事の中でもトップクラスの人気を持つ仕事です。

近年では、社員の健康管理に力を入れる会社が増えてきており、特に社員が多い会社や24時間稼働する工場を持つ会社では、積極的に医務室や産業保健の機能を整備・拡充する動きが見られます。そのため、産業看護師は、今後も需要が高まる仕事の1つとして注目されています。

このページでは、企業内医務室(健康管理室)で働く産業看護師(産業保健師)の仕事や転職活動についてご紹介していこうと思います。

企業で従業員の健康を守る!産業看護師の仕事内容

産業看護師の主な仕事内容は、企業の医務室や健康管理室などに勤務して、そこで働く社員の健康管理を行うことです。

定期健康診断時の補助や診断結果の管理、健康指導といった健康診断・健康管理に関する業務だけでなく、健康維持のための職場環境の改善や怪我・事故時の応急処置、健康に関する相談・カウンセリングなどを行うことも増えています。

看護業務よりも保健に関する業務が多いので、職場によっては別枠で保健師を採用して一緒に仕事をしたり、保健師免許も持っている人を募集したりすることもあります。

1つの職場で採用される産業看護師は数名で、多くの社員を抱えるような会社でも十数人程度です。そのため、1人で多くの社員を担当するということも多く、健康診断の時期は特に忙しくなる傾向が見られます。病院などに勤務する場合と違って医療行為を行うことはありませんが、その分、パソコンを使った事務作業が多くなります。

また近年では、健康面だけでなく精神面のケアに注目する企業が増えてきています。というのも、過労や人間関係などが原因で精神疾患を患う人が増えてきており、これを苦に自殺に追い込まれる人もいるためです。精神面の疲労などは自分自身で気づくことが難しかったり人に相談しにくかったりするので、産業看護師は小さな異変を素早く見つけるという役割を担っています。

また、上司や先輩に相談できないような悩みを受け付ける相談役としての役割も担っていることが多く、メンタルヘルスケアに関する知識や経験も重要とされています。このようにメンタルヘルスケアに関する知識やスキルを求められる傾向が強いため、カウンセラーの資格やカウンセリングの経験は採用面で強みになり、仕事を行う上でも役立つ機会が多くあります。

企業の中には、オフィスワークが中心の職場と肉体労働が中心の職場があります。仕事のスタイルが複雑化してきていることや、残業や長時間労働などが増えてきていることもあって、それぞれの職場に合った健康管理やメンタルヘルスケアが求められています。

このような需要を満たすためには、産業看護師はその会社について知ることから始め、どのような現状や課題があるのかを分析する必要があります。そのため、医務室や健康管理室内に閉じこもるのではなく、実際にオフィス内の各部署を見回ったり工場内を巡回したりして社員と同じ目線に立つことが重要で、体力を必要とする仕事でもあります。

また、健康管理やメンタルヘルスケアに力を入れている企業では、社員の健康管理に力を入れたことで会社の業績がアップしたというケースも多く見られます。そのため、会社の業績を上げる陰の立役者としての役割も期待されています。

産業看護師に転職するメリット&デメリット

病院勤務を辛いと感じている看護師さんにとって、産業看護師という転職先はメリットがとても大きいです。しかし、デメリットがまったくないというわけではありません。

ここで今一度、メリットとデメリットを確認しておきましょう。

【メリット】夜勤がなく、残業もほぼなし

産業看護師に転職をする最大のメリットは夜勤がなく、残業もほとんどないこと、つまり勤務が規則的に行われ、生活サイクルが乱れないことです。

企業によって多少違うものの、一般企業であれば夜まで仕事をしている従業員がいないため、医務室で働く看護師も同じく、夜勤の必要はまずなく、残業の必要もありません。

病院勤務では3交代制や2交代制を敷いていて、夜勤や準夜勤によって生活サイクルが乱れ、体調を崩しやすいのがデメリットになる場合がありますが、企業で働くとその逆になります。勤務時間が規則的になることで、体力的にきつかった看護師の仕事がかなり楽になります。

【メリット】休みが安定していて、有給が取りやすい

企業の休業日はきっちりと休みを取れるので、病院勤務のような不規則な休みにならないという点もメリットです。

働く時間と休みが安定していて、規則的であること、あらかじめ休みになる日が分かっていることは働きやすい環境と言えます。

また、有給も比較的自由に取得できるため、家族や友人との予定が立てやすいのも魅力です。

【メリット】体力的な負担が少ない

仕事内容が体力的に楽であることも産業看護師のメリットです。

企業での仕事は、基本的にはデスクワークが中心です。診療の際に、一時的に体を動かすことがあっても、データ入力などを含めて、パソコンに向かっている時間が主な時間になります。

病院で働く場合には、体力的な理由で転職や離職に繋がる方もいますが、企業で働く上で体力的に厳しい仕事はまずありません。

勤務時間の規則正しさと相まって、体力的に厳しい年齢の方はもちろん、それほど体力に自信がない方にも働きやすい環境になっています。

【メリット】医療機関に比べて自由度が高い

病院に勤務していると、規模にはよりますが、多忙でいつも何かに追われている感覚を抱きませんか?

実は、医療の世界は制限の多い職場なんです。

それに比べると、産業看護師の職場はとても自由度が高いです。

例えば、職場によってはデスクでの飲食禁止というところもありますが、席以外でコーヒーを飲んだり、お菓子を少しつまんだりしても咎められることはありませんし、病院のように、処置の合間を塗って急いでトイレに行く必要もありません。

これだけでも相当な自由を感じると思いますが、さらにランチも自由に外に行くことができますし、たっぷり1時間取ることは当たり前です。

ナースコールを気にしながら、お弁当をかきこむように食べる代わりに、お財布を持って「今日は、どこにランチに行く?」という憧れの会話をすることができるのです。

また、白衣着用を義務付けている職場は多くなく、ほとんどの場合、服装はオフィスカジュアルと定められています。これは、ビジネスシーンに合うようにラフ過ぎない服装というもので、ある程度自由に着たい洋服を着ることができます。

もちろん、看護師には制限がされているネイルも楽しむことだって問題ありません。

また、フリーな環境という以外にも、制度においても感じることができます。

それは、勤務時間などについて寛容であることです。例えば子供が急な発熱になった場合、早退したり、遅く出勤するなど、臨機応変に決めることができます。

【メリット】昇給に期待できる

企業へ転職することそのものがキャリアアップに繋がり、収入を上げていくことに繋がります。具体的に言えば、病院で働く場合の平均年収は約470万円、一方、企業で働く場合の平均年収は約500万円、場合によってはもっと上がることもあります。

確実に収入を増やしたいのなら、柔軟性があり、先を見据えて昇給制度を充実させている企業が狙い目です。

【デメリット】環境の変化に適応する必要がある

産業看護師へ転職する事による最大のデメリットは、企業で働くことによる環境の変化です。

病院をはじめとする医療機関では、最低でも10人程度、多ければ100人単位の看護師が同じ職場で働いています。同時に医師や技師と言った医療従事者が他にもいて、医療分野における責任と重圧を分散して背負っている環境です。

それが企業へ転職した場合は、1名から数名での勤務となるため、責任と重圧が重くのしかかってきます。企業によって産業医、産業看護師の数は異なりますが、医療チームの一員としてではなく、企業に勤めている従業員の健康をほぼ単独で預かると考えておいたほうが良いかもしれません。

【デメリット】今後、医療機関への転職が難しくなる

一度、企業と言う環境に慣れてしまった場合、再び医療機関へ戻ることが難しくなってしまうというデメリットもあります。

企業という現場は特殊で、医療機関も特殊であるため、精神的にも技術的にもどちらかに慣れれば再び転職することは難しくなってしまうというデメリットが存在しています。

産業看護師の給料・年収ってどのくらい?

正社員の平均年収

産業看護師の給料は、月収で25万から50万くらいで、ボーナスが平均2回で70万から100万円くらい支給されているようです。人それぞれ違うようですが年収は、大体400万から700万円くらいとばらつきがあります。

企業がどのような用途や待遇で雇うかによって全く違ってくるようですが、年収700万も稼いでいる人はごくまれです。有名な大企業であれば、年収は高くなる傾向にあるようですが、平均的に言って、専門手当などが考慮されますので普通の一般職のOLより少し高めな給料をもらっていると考えておけば良いようです。

福利厚生

病院と違い、企業で働くことは福利厚生も手厚く恵まれるようになる傾向にあります。保養所の充実や、健康保険組合による医療保険の援助や企業内や関連会社の施設におけるお得なサービスなどが受けられることがあります。

何より助かることは、病院内で働いていると不規則な労働になりますので、福利厚生があったとしても頻繁に利用することは難しく見過ごしてしま人が多いです。企業は休日がある程度固定されており、計画的に福利厚生を利用することが可能になるので、積極的に利用している人が多いようです。

アルバイト・パート・派遣の場合の時給相場

産業看護師の仕事をアルバイトやパート、派遣の働き方で行う人もいます。パートや派遣などはさまざまな職種でたくさんありますが、専門職の資格があると専門手当がつきますので時給も高くなります。

企業内で看護師として働いた時の時給は、平均で900円から1,600円くらいが相場のようです。学生のアルバイトや主婦のパートなどよりは少し高めな時給で設定されています。病院内でパートをするよりも、午前中か午後のみでも良いなどの融通が比較的にききやすいので企業内で働くことは正社員と同様に人気があります。

産業看護師になるには?必要な資格や経験について

まずは、資格についてですが、これはどの求人ごとに異なります。たとえば、企業内医務室や企業内診療所のような、医療行為を中心に行うことが多い場合には、看護師の資格のみで採用されることもあります。

逆に、医療行為はあくまでも副次的な業務で、基本的にはデータ処理や、健康増進事業に重きを置いているような場合は、保健師の資格が求められます。この場合、産業保健師としての採用になります。

とはいえ、これはあくまでも目安であり、企業によって本当に様々な募集条件を出しているので、参考程度にとどめておいてください。

さらに、看護師や保健師としての経験年数をしっかり定めている企業もあれば、新しい人材を欲することから、あえて経験は問わないような企業も数多くあります。卒業校に関しても同じです。

それなので、企業に勤めた経験がない、十分な看護師経験がないからと心配する必要は全くありません。

先ほども少し触れましたが、基本的にデスクワークが中心になりますので、パソコンのスキルを問われる場合が多いです。

しかし、電子カルテを使用したり、日常的に自宅でパソコンを操作することができるレベルであれば、ほとんど採用に問題ありません。

もちろん、エクセルを使いこなし、プログラムが組めるようなスキルがあれば、データ管理が容易にできるので、歓迎されることは間違いありません。しかし、求められる業務はエンジニアではなく、看護師(保健師)としての資格なので、その点は重要視されません。

最終的に、募集している企業次第ということを言ってしまえば、元も子もないように聞こえますが、そのくらい選択の幅はあるということです。

そういった意味で言えば、自分の将来像を自分で好きなように選べるということです。

また、就職後に必要な資格取得を全額補助でサポートしてくれる企業も多いです。特定の資格を求めてくる企業に就職しようとしない限り、就職前に衛生管理者や産業カウンセラーや心理カウンセラーなどの、看護師以外の資格について、取得を焦る必要はないと思います。

産業看護師の求人を出している企業を効率的に見つけるには?

さて、企業内看護師になるための基本的なお話についてこれまで、触れてきました。では、実際にどのように求人情報を探せば良いのでしょうか。

実はここが一番重要なポイントと言っても過言ではありません。

病院の採用情報と違って、限られた転職サイトなどで情報が公開されていること、さらにその掲載期間が非常に短いこと。というのも、企業は年がら年中人員を増やそうという姿勢ではありません。

その年の売り上げや、人件費がシビアに採用に反映されますので、悠長に時間をかけてより良い人材を探そうということはしません。短期集中で採用を行います。

具体的には、人の入れ替わりの時期に合わせて行うことが多く、人事異動などの時期にもよりますが、4半期ごとの時期が一つの目安になります。要するに、4月、7月、10月、1月頃です。

その都度、新しい事業開発を進めたり、それに伴う決算を行いますので、募集を出しやすい時期になるわけです。もちろん、これ以外にも産休職員の代わりなど、不定期のものもありますが、より多く募集が出るのはこの時期です。

そして先ほども記載しましたが、企業は即戦力を重視しますので、この時期に一気に募集して、短時間に採用を決定します。

というわけで、求人探しのコツは1つだけ。

企業の求人紹介に強い転職サイトに登録して、いつでも求人を紹介してもらえる状態にしておくことです。

産業看護師の求人が見つかる看護師転職サイト

では、実際にどのような転職サイトで、このような企業の情報が掲載されているのでしょうか。

これに関しては、まず企業が人材を募集する際の仕組みについて説明する必要があります。企業では、採用をかける際に、転職サイトなどのサービスを通して募集することがほとんどです。

そして、一般的な企業は、医療資格者の採用に対してあまり慣れていないので、転職サイトの中でも「看護師専門の転職サイト」を利用して効率的に良い人材を確保しようとします。

これが、看護師転職サイトに企業系の看護師求人が集まる理由です。

さらに、看護師転職サイトの中にも「企業の求人紹介が得意な転職サイト」と「企業の求人紹介が苦手な転職サイト」があります。

これは、企業との取引実績や、運営形態の違いによるものです。

例えば、マイナビグループが運営している看護師専門転職サイト「マイナビ看護師」。マイナビグループは一般職の転職支援も行っているため、一般企業との繋がりも深く、「マイナビ看護師」は企業の看護師求人を収集する能力が高いです。

こういった転職サイトを選んで登録しておけば、産業看護師に転職できる可能性がかなり高くなります。

>>>病院以外の求人が見つかる看護師転職サイト一覧

どんな企業が産業看護師を募集するのか?

では、どのような企業が看護師の募集をしているのでしょうか。

当サイトでは定期的に求人状況を調査しているのですが、過去に以下の大手企業が産業看護師(産業保健師)の求人を出していました。

マイクロソフト、ソフトバンク、ネスレ、明治安田生命、損保ジャパン日本興亜、トヨタ、旭化成、東京日動火災、学研、ワタミ。

その他にも、産業看護師の求人を出す可能性のあるとしては、NTT、日産、サントリー、au、ユニクロなどの大手企業も考えられます。なぜなら、ある程度の規模の企業では、産業医などの配置を義務付けられているからです。

現在これらの企業で勤務している産業看護師も、定年を迎えるなどして、入れ替わりを定期的にすることになるため、今後募集が出ると考えられます。

もちろん、ここで挙げたような大手企業だけではなく、中規模の企業からも求人が出されているので、求人に出会えるチャンスは必ずありますよ。

産業看護師・産業保健師として採用される秘訣

それでは、タイミングが合って産業看護師の求人に出会えたとします。しかし、企業で働きたい看護師がたくさんいる中、どのように採用を勝ち取ればよいのでしょうか。

実は、私は企業に勤めていた際に、新規採用のための面接を行う担当でもありました。私自身は看護師なので、看護師さんの採用はもちろんのこと、一般の社員の面接にも携わっていました。それらの経験から言えることが、皆さんのお役に立てれば幸いです。

面接前の準備

まずは、企業の面接になれることが大切です。病院の採用面接と違い、面接官は、看護業務のみについて質問することはありません。むしろほとんどの時間を、その人の人となりや社会性を観察します。

企業では、実に様々な人と接することと、バランスよく全体を見ながら立ち回れる人が重宝されます。そういう点を見極めるためには、どのようなことを考え、どのような回答をするのかをしっかりと見るのです。

例えば、今朝のニュースで一番記憶に残っていることは何ですか?と質問されたとします。あなたは満足のいく答えができる自信はありますか?

このように企業ならではの面接に備えることが必要なのです。そのためには、看護師転職サイトにある面接対策を参考にしたり、セミナーに参加するのも良いでしょう。

他にも、転職サイトの方が、面接時に同行してくれる場合もありますので、対策などを面接前に事前に話し合うのも良いと思います。特に企業の面接が初めての方は、打ち合わせをしておいた方が無難です。

転職サイトの方は、数多くの企業を見てきているので、どのような対策が必要か的確に教えてくれます。

面接時のポイント

では、事前の準備をしっかりしたとして、面接時のポイントはどのようなものでしょうか。

それは「やる気が見える」の一言に尽きます。

数多くの面接を行ってきたからこそわかるのですが、採用した人は全て、自分なりのやる気を見せていました。これは単純に明るく元気が良いというようなことではありません。この企業で自分が何をしたいのか具体的な絵が描けているかということです。

前にも述べましたが、企業は即戦力を求めています。自分から素直に吸収し、伸びていける人を求めているのです。これは、不思議なもので、面接時にどんなことをしたいかという質問などで、その人の内面をみることができるのです。

精神論のように聞こえてしまうのが残念なのですが、企業に本気で就職したいのであれば、明確な熱意を持ってください。私はこれがやりたいと言えるものがある人と内人では、本当に差が出ます。

そして、もう一つぜひお伝えさせていただきたいのですが、綺麗な答えができなかったり、経歴がスラスラ言えなかったりしても、問題ありません。そのような点はあまり見ていませんので、静かに熱意を伝えることに尽力してください。

産業看護師に転職した看護師の声

■20代女性

大学病院の看護師として3年勤務して、その後産業看護師となりました。病院勤務の時は、救急指定病院だったこともあり、24時間常に患者さんを受け入れていたので、非常に忙しく、いくら働いても足りないといった状況でした。

ある時、父の知り合いの方から「今勤めている産業看護師の方が退職して欠員が出るので、そこに勤務してみないか」というお話を頂きました。病院とは全く違う環境で働くことは非常に不安でしたが、今までの看護師経験を活かすことができるならと思い、産業看護師となりました。

主な業務は社員の健康データ管理、時間内に体調が悪くなった従業員への対応、健康相談、社内に向けて健康情報の発信などです。自分のペースで仕事ができ、残業もほとんどなく、夜勤もありません。

患者さんではなく、従業員の方が相手になるので、色々な話ができ視野も広がります。企業と同じく土日に休みもとれるので、従業員の方々との交流も増えました。皆さん気軽に声を掛けてくださるのがとてもうれしく、楽しく勤務しています。

私の場合給与面では、大きな差はありませんでした。病院勤務の忙しさに比べたら、肉体的にも精神的にも余裕ができたのが一番大きいです。体の健康だけでなく、メンタル面の相談もあるので、今は心理カウンセラーの資格を取得しようと勉強中です。


■30代女性

看護師という仕事が好きだったので結婚後も仕事を続け、出産後、日勤のみで現場復帰しました、保育所の空きが出るまで、近くに住む自分の両親が子供の面倒を見てくれたので安心して勤務できました。

しかし、保育所に預けるようになって、子供が急に熱を出したり、急病になったりすると、お迎えの呼び出しがあったり、急に休まなければならないことが多くなりました。その度同僚たちは「子供の急病は仕方ないから気にしないで」と言ってくれるのですが、何となく気が引けてしまっていたのです。

看護師という仕事は続けたいけど、同僚に迷惑を掛けたくないという思いから、看護師としてもっと違った働き方があるのでは?と思い、産業看護師の分野で仕事を探すことにしました。

現在は、週3日非常勤で産業看護師として勤務しています。収入面ではかなりダウンしましたが、時間にはかなり余裕ができたので、子供と接する時間が多くなりました。また従業員の方々と接する時間も多くあるので、コミュニケーションが取りやすく、こちらから声を掛けることも多くあります。

今まで看護師は病院で勤務するものと思っていました。視点を変えてみると、産業看護師の仕事もとてもやりがいがあります。これからも家庭を両立しながら頑張っていこうと思います。


■40代女性

出産を機に看護師を辞めて、子育てに専念してきましたが、子供も手が掛からなくなったこともあり、また看護師として働きたいと思い求人を探していました。私の性格では家庭と仕事の両立が難しいと思ったので、家族に負担の掛からない求人を探していたところ、今の職場を見つけました。

依頼された企業へ出向き集団検診をする企業です。業務内容は、血圧測定、採血、心電図などでした。病院勤務と違い、毎回違った企業に行くので新鮮味がありましたし、健康な人が相手なので、精神的にもかなり楽でした。

その日予定されている企業の健診が終了すれば本日の業務も終了となるので、勤務時間は様々ですが、早ければ午前中、遅くても18:00には帰宅できています。

それから、健診は事前に予定が組まれているので、子供の学校行事などで休みを取らなければならない時も助かっています。企業には数名の看護師が行きますし、業務内容も比較的簡単なことばかりなので、急な休みの場合も柔軟に対応しています。

同年代で私と同じような立場の方が多いので、大変な時はお互い様という気持ちが強いです。また話の話題も似てるので、コミュニケーションもよく取れます。主人や同居の愚痴をこぼしたりもするので、ストレス発散になったりします。夜勤も時間外勤務もないので、収入面では病院勤務より落ちますが、時間と気持ちに余裕ができ、楽しく仕事ができるのでこれからも続けていこうと思います。

現役の産業看護師が答える!気になる疑問Q&A

産業看護師の仕事は楽?辛い?

企業で働く産業看護師の仕事内容は、社員や従業員に対する健康管理というのがメインです。社内の医務室に常駐し、看護師は私1人のため保健活動から定期健康診断の手配などをすべて行わなくてはならず、多忙で辛い時も多くあります。

同業者の職場仲間がいないというのも、人によっては寂しさを感じるかもしれませんが、従業員の方と話す機会もあり、優しく声をかけてくれるので私は楽しくやってます。

産業看護師に向いてる人は?向いてない人は?

産業看護師に向いている人は、コミュニケーション能力が高く、リーダーシップのある人だと思います。産業看護師の仕事は、病気の患者が相手ではなく社員や従業員の健康管理というのがメインですが、最近ではメンタルヘルスに関する相談で医務室を訪れる人も増えているため、相手を理解するためにもコミュニケーション能力が必要です。

また、相手から頼りにされるリーダーシップがあることも大切です。逆に引っ込み思案の人や、消極的な性格の人は、向いていないかもしれません。

看護未経験の看護師でも働ける?

企業の医務室に勤務する産業看護師は、未経験でも可能な場合が多くなっています。

しかし、産業看護師は人気の職種で求人が出されると募集が殺到するということも珍しくはないため、やはり看護経験者の方が有利です。また、中には保健師の資格を保持している人を優先的に採用する企業もあります。

そのため、未経験の看護師が企業へ転職するのは難しいというのが現状です。

転職後に取得したい産業看護師のスキルアップ関連資格

産業看護師として仕事をしていると、カウンセラー関連の資格などに必要な資質も身につきます。

これから紹介する産業看護師のスキルアップ資格は、採用に際してあらかじめ取得しておくと有利になる資格でもありますが、採用後、必要に応じて勉強し、取得する人もいるような資格になっています。

働く企業によっては、地域の産業保健推進センターにおいて、必要な研修、セミナーを受講できるようになっています。

登録産業看護師

産業看護師の関連資格としては、登録産業看護師が代表的です。企業において産業看護の実務経験を2年以上積んでおくことが受験資格のひとつで、2年以上働いていれば資格を満たせます。

加えて第一種衛生管理者の資格を取得すれば受験資格が満たされます。あとは、専門教育課程である産業看護講座Nコース、産業看護講座基礎コースを修了し、登録することで資格を取得できます。資格試験はなく、教育課程を修了したと証明することで取得できるタイプです。

産業看護師や産業保健師として企業で働き続けるには、キャリアプランを考えれば取得しておいて損はありません。もちろん資格を取得しなくても一般企業で働くことは可能ですから、専門性を高めてより企業の役に立ちたい人がスキルアップを兼ねて取得します。

衛生管理者

登録産業看護師の資格の関連資格として、衛生管理者という国家資格があります。受験資格の中で、保健師、薬剤師は無試験で免許が与えられ、看護師は実務経験を一定以上積むことで受験資格を満たします。

合格率は第一種が5割から6割弱、第二種が6割から7割弱となっています。あまり高くありませんが、地道な勉強で合格できる圏内です。

産業カウンセラー

産業カウンセラーとは、企業で働く従業員が仕事で心の病気を抱えることがないように、カウンセリングや相談、アドバイスを行う仕事です。

カウンセラー兼看護師であれば、なおさら話しやすく、負担をかけずに会話しやすくなります。精神的な負担を和らげることで、従業員の士気を高めて、会社の収益を上げることに繋がっていくため、かなり重要な仕事となっています。

産業カウンセラーには初級中級上級とあり、日本産業カウンセラー協会の養成講座を受けていることが条件となります。夜間コースや土日コースで受講することもできます。試験は学科試験と実技試験とで構成されています。

心理カウンセラー

心理カウンセラー(相談員)も類似するカウンセラーの資格のひとつで、産業カウンセラーと違い企業専門ではありません。

メンタルヘルスケア、ストレス耐性への援助、リラクゼーション指導、職場の雰囲気作りに貢献するのが役割です。

受講資格は、看護師の場合、健康に関する面接、相談の実務経験を1年以上積んでいることです。中央労働災害防止協会の心理相談専門研修を受講し、登録すれば取得できます。

産業看護師になると身につくスキル

パソコンスキル

産業看護師として働く中で、パソコンスキルを高める事も出来ます。ほとんどの企業においては従業員の健康管理情報をパソコンで管理していますから、必須のスキルであり、最低限パソコンを扱えることが採用条件となります。

基本的にWordとExcel操作が出来ればよいでしょう。あとは採用後に必要に応じて操作方法を覚えていけばよく、働いていくうちに身につくスキルのひとつとなっていきます。

責任感と行動力

一般企業内の医務室は基本的にひとり、もしくはごく少数での勤務となります。

よって、従業員の健康を預かるのは自分ひとり、産業医を含めて医務室の極少数のメンバーのみという責任重大な状態が続くため、自分だけで行動する責任感と実行力、行動力が身についていきます。

思考力と予測力

自分で考えて決めて実行することを迫れてきますから、思考力や予測力も身についていくことでしょう。今従業員の状態がどのようになっているのか考え、予測して対応していかなくてはならないからです。

採用される企業によって違いますが、従業員のいない夜間は仕事がなく、夜勤がないため、その分の負担は減らしてもらえます。その分、従業員とのコミュニケーションは重要となっており、会話内容や従業員の様子から健康状態を探るスキルが自然と身についていくことでしょう。

まとめ

産業看護師への転職はいろいろな意味で壁があるかもしれません。

今すぐに転職を考えていない方も、考えているけど良い募集条件に出会えないという方も、長い目で探してみることをお勧めします。私は、実際に半年以上かけて、企業を選択しました。そのくらい納得する求人に出会えるのは、時間がかかると考えてください。

しかし、本当に新しい自分に出会えるチャンスになることと、その後の世界観がまるで変わることを考えると、挑戦して損はないと思います。

自分の経験から、かなり具体的な内容を記載させていただきましたので、これをご参考にされて、皆さんが企業に転職できることを願っています。