入院患者の中には肉体的なコンディションを崩している人もいれば、メンタル面に問題を抱え入院している人もいます。精神科病棟で入院している患者の場合、他の診療科目の患者とはまた違った退院支援を行っていく必要があります。

精神科の退院調整看護師は具体的にどのようなことに注意して仕事を進めればいいかについてみていきましょう。

精神科の患者には2タイプいる

精神科の退院調整看護師を担当することになった場合、患者には大きく2パターンがあることを頭に入れる必要があります。

まずは、精神症状が顕著で入院している人です。このような患者はまだ精神面で不安定なところがあります。そこでまずは症状をいかに安定させるかに重点を置く必要があります。精神療法をベースにして、時には薬物なども取り入れて治療にあたることになるでしょう。

もう一つのタイプとしては、症状は安定しているけれども退院できない患者というパターンもあります。どういうことかというと、退院させても受け入れ先が見つからないという事例です。

たとえば自宅療養をするにあたって、面倒を見てくれる家族がいない場合が考えられます。また長年の精神疾患のために家族関係が破たんして、受け入れてくれないというケースもあります。

このような場合、無理に家族と一緒に生活させると逆効果になることも考えられます。ならば家族と住まないという選択肢を模索することになるでしょう。

長期入院になる原因を探る

精神疾患を抱えている人は、少し前まではなかなか社会で受け入れられない傾向がありました。しかしメディアでも取り上げられるようになって、精神疾患も病気の一つという認識が世間でも広く共有されるようになりました。

また、地域による精神疾患患者のフォロー体制もだいぶ整備されています。しかしそれでもなかなか精神科の患者は退院できないことが多いです。

その理由にはいくつかのことが考えられます。まずは、環境の変化で病状の悪化する可能性があるからです。長期にわたって入院していると、病院内の環境に慣れてしまうことがあります。

そのような人が退院すると急激に生活環境が変化してしまって、精神のバランスが不安定になってしまうことがあります。病院では言われるがままに生活できていたのが、退院すると自主的に動かないといけなくなります。そのような面で不安を感じる医療関係者・患者も少なくありません。

その他には、入退院を繰り返していると「またどうせ退院してもしばらくすれば入院する羽目になるのでは?」という懸念もあります。長期的に入院していると、今まで慣れ親しんでいた地域のコミュニティが大きく変化している可能性もあります。その変化に対応しきれずに、ストレスをため込んでしまうことも心配されます。このような理由で、なかなか退院できない精神科の患者は多いのです。

精神科での退院準備で重要なこと

精神科の退院調整看護師にとって重要なことは、主治医と密にコミュニケーションをとることです。精神科の患者の中には体は元気なので、「すぐに退院させてほしい」という人も結構多いです。

見た目健康でも精神面が安定していないと退院して地域での生活になじめずに、また発症する危険性もあります。そこで精神症状が安定しているのか、退院させたとしてその環境の激変に耐えられるのかを判断する必要があります。

また患者が退院するにあたって、頭や体を慣らしていくことも大事です。今まで看護師などに世話してもらっていたことを、退院後は自分でこなしていかないといけません。

そこでたとえば病院の作業療法に参加させるなどして、社会生活を営んでいくために必要な能力を培わせることも退院調整看護師にとって重要な役割の一つといえます。

退院しても薬の服用は引き続き必要なケースも多いので、服薬講習なども実施することがあります。