放射線治療室で勤務する看護師の役割

多職種との連携

放射線治療室には、医師・医学物理士・放射線技師・看護師・受付事務など、様々な職種の人が働いています。

更に、各職種には自分の持ち場があり、例えば放射線技師で言えば、治療室で実際にビームを出し治療をしているため、待合室にどの患者さんが待っているのか、どのくらいの患者さんがいるのか把握することは難しいです。

また、医師で言えば診察中であれば、どの患者さんが治療中なのか、待合室にはどれだけ患者さんがいるのか放射線治療室全体を自分で把握することは出来ません。

そこで活躍するのが看護師なのです。

次にどの患者さんが治療室に入るのか、誰を診察に呼び入れるのか、どんな有害事象が出現しているのか、それらを判断し多職種と情報を共有することで、患者さんに安全・安楽な医療を提供でき、治療を円滑に進める役割を担っているのです。

患者さんの精神的なケア

放射線治療を行う患者さんの9割は「がん患者」であり、その宣告を受け入れられずに悩みを抱えている人、治療を行うことを受け入れられない人、更に放射線と聞くと怖いという人など、様々な不安を抱いている人がいます。

このような患者さんの不安を解消し理解を得るために、患者さんが納得できるような説明を行うことは特に重要となります。看護師のみならず、医師から詳細な説明を受けられるように環境を整えるのも看護師の役割です。

患者さんの気持ちに寄り添い治療に励むことができるようにサポートを行うというナースの役割は、がん治療には不可欠なものとなっています。

セルフケアの指導・サポート

放射線治療中は、治療用の印が消えないように注意しながら入浴する必要があったり、絆創膏の貼付は禁止など日常生活において色々な制約があります。

また、外照射による皮膚炎を予防したり、実際に皮膚炎になってしまった場合は、セルフケアで自宅で軟膏を塗布する必要も発生します。

そのような患者さんには、どのように処置を行うのか指導を行い、予防のためには提案を行ったり、自宅での様子を確認したり、患者さんの体調や治療の進捗状況、副作用などを考慮して、患者さん1人1人に適したケアを行うスキルが求められます。

このような業務を行うナースの存在は、放射線治療を行う患者さんとその家族にとって病気や治療のことを理解してくれる存在でもあり、精神的な支えにもなっています。

治療の準備・介助

点滴を挿入しながら治療を行う患者さん、高齢で治療台に1人では登れない患者さんなど、管理や介助を行うこともあります。

基本的には放射線技師さんが行いますが、やはり点滴の管理は看護師でないとできませんし、移動に関しても技師さんは勉強してきていませんので、患者の安全を考慮し、看護師が手伝う場面も多くあります。

また、更衣が必要な場合もありますので、介助しながら皮膚の様子を観察し、患者さんに何度も羞恥心を与えないのも看護師の腕の見せ所であると思います。

放射線治療に関する正しい知識を持つ

患者さんにとって、放射線治療とは未知の領域であり、「怖い」と感じる人は多くいます。

患者さんが理解しやすいように砕いて説明したり、患者さんからの疑問に答えられるように多くの知識を備えていること、正しい知識を教えられることは、放射線治療室という専門分野で働く看護師にとっては、必要不可欠なことであると言えます。

また、曖昧な知識で患者さんを混乱させることがないように、分からないことがあれば、医師・放射線技師に相談することも必要であります。

専門分野で働く看護師

ナースの仕事には、「一般的な看護知識・スキル」使うものと、「特定分野の専門的な知識・スキル」を使うものがあります。どちらの知識・スキルを使う部署に就くかは人それぞれですが、自分の目標とするナースになるために適した方を選ぶことが重要です。

特定分野の専門的な知識やスキルを必要とする職場には、手術室や内視鏡室、放射線治療室などがあり、主に手術や検査などに携わる部署がこれに該当します。

最近では放射線治療室を整備する医療機関が増えてきていることもあって、スキルアップ・キャリアアップを目指すナースや放射線治療を専門とするナースを目指す人からの人気が高まってきています。

放射線治療は、がんの治療に用いられており、現代では非常に重要な治療法の1つとなっています。

がん治療を行っている医療機関のほとんどで放射線治療ができる環境が整備されており、比較的治療の効果や安全性が高いのが特徴です。総合病院や大学病院などでは「放射線科」「放射線治療科」など専門の診療科を設置していることもあるなど、放射線治療自体の需要も高まってきています。