泌尿器科看護師の役割

患者に対する紳士的な対応

病棟、外来、クリニックなど勤務先はどこであれ、泌尿器科に勤務する看護師の仕事内容・役割で一番大切になってくるのは、患者さんへの対応です。

泌尿器科は、排せつや生殖といった体のなかでもデリケートな部分を扱う診療科であることから、診察や治療を受ける患者さんは常に「恥ずかしい」という思いを抱いています。看護師には、こうした患者さんの心情をくみ取り、安心して治療に取り組めるよう精神的にサポートしていく役割があります。

泌尿器科の患者さんの中には、ナースに対してセクハラまがいの言葉をかけることや行為をしてしまう人もいます。患者さんからの「セクハラ」に関しては、泌尿器科勤務の看護師のなかで問題になっていることのひとつです。

しかし、このような場合は、なぜ患者さんがそのようなことをするのかを考える必要があります。もしかしたら、背後に恥ずかしさや不安があって、それを隠すために「セクハラ」をしているのかもしれません。

一方で確信犯的なものであれば受け流したり、上司に相談するなどしながら毅然とした態度をとったりする必要もあります。患者さんの様子を見ながら、冷静で的確な対応をとれるかどうかが問われます。

診察時の介助や処置、手術の介助・術後のケア

泌尿器科の看護師は、患者さんへの対応に加え、診察時の介助や処置、手術の介助・術後のケアなども行います。近年の泌尿器科の治療では、患者さんへの負担が少なくなることから、内視鏡やロボットなどといった先進の医療器具を用いて手術を行っているところも増えてきています。

こうした先進医療に対する、専門知識や技術も求められます。また、病棟などでの術後のケアでは排せつに関わるケアも多くあります。専門知識や技術に加え、患者さんへの誠実な態度での対応が求められます。

患者1人1人の最善の看護、問題点の抽出

最近では、高齢の患者さんの増加に伴い泌尿器科の病棟において順調に回復して退院できる場合ばかりではなくなってきました。長期化する療養生活のなかで、患者さんひとりひとりにとって最善の看護ができるよう、問題点を探り、医師など関係者と連携をとりながら、看護を行っていく必要性もあります。

こうした看護を実践できるよう調整し環境を整えていくのも、日々患者さんに接する立場である看護師の重要な役割です。

羞恥心を取り払う

泌尿器科は扱う病状から、一般に男性の患者さんが多いとは言えなかには女性の患者さんもいます。女性患者さんからは、「男の人が多い診療科なので、受診をためらっていたけれど、通りかかった病院の泌尿器科に女性の看護師さんがいるのを見てそこで診察を受けようと決めた」という声もあります。

男女を問わず診療を躊躇してしまう診療科であるからこそ、受診を促し適切な治療を進めていくために看護師の果たす役割が大きいといえます。

また、泌尿器科は看護師の間でも患者さん同様「恥ずかしい」という先入観を持っている人が少なからずいるようです。

膀胱炎や前立腺炎などの感染症、尿管結石、腎臓がんなど排出に関する病気を扱うのに加え、クラジミア、淋病や梅毒などといった性感染症(性病)も扱うため、「偏見」があるかもしれません。性病は感染症であり、ほっておくと性交渉を通じてほかの人に移してしまったり、治療が手遅れになると特に梅毒は精巣腫瘍など命に関わってくる場合もあります。

また最近では、高齢化に伴い、前立腺肥大や前立腺がん、腎臓がん、膀胱がんなどの治療が必要になってきている患者さんも増えてきています。男性側に原因があると考えられる不妊治療や、病院によっては性同一性障害に対する手術など、患者さんが人生を送っていく上で重要な局面に対峙することもあります。

そういったことが泌尿器科を「特別な診療科」にさせているのかもしれません。

しかし、適切な治療を行い患者さんの健康を守っていくという点で、ほかの診療科と何ら変わりありません。看護師もイメージや先入観からだけでなく、そのことを十分理解して業務にあたることが求められます。