失敗は誰にでもあるもの、インシデントレポートを書くこともしばしばありました。新人の頃は、レポートを書くたびに心が折れたりもしたものです。

そんな人を元気づけるわけではありませんが、私の失敗談を紹介したいと思います。こんなこともあったなと今は懐かしいのですが、当時はとても焦ったものです。

いろんな失敗がありました。私が新人のころに苦手だったのが、点滴を混注する作業。シリンジの使い方にも慣れていなかったし、アンプルをカットするのもすごく怖かったのです。

そのため、混注する作業にはかなりの時間を要していました。その中でも、アンプルをカットするのが特に怖く、大きなアンプルはドキドキしながら、少し距離を置いたりしながら、ビビりながら割っていました。

緊張しているのも混ざり、さらにうまくいかなくなってしまう。周りの同じ作業をしている先輩たちはみんな高速でこなすことができるため、余計についていけない不安もあり、上手に手が動かないこともありました。

そんな状態での点滴のインシデントが、アンプルを落として割ってしまったというもの。

その時は、今でも忘れません、アドナでした。そう、あの黄色い薬品、しかも20mlのやつ。少し手が滑ったところで、床に落下。はっとしたところに、パリーンと鳴り響く悲しい音。床に散らばる黄色い液体とバラバラになったアンプル。白衣のズボンとナースシューズには飛び散った黄色いシミ…。

新人だった私にとって、やってしまったと頭は真っ白。今思えば、そんな失敗誰にでもあることですし、それくらい仕方ないじゃんと思うかもしれませんが、私の問題はそこじゃなかったんですよね。

まだ新人だった私、その後の対応がイケてなかったのです。落としてしまったことに大慌てしてしまい、早く片づけなければと思う気持ちが先走ってしまいました。

まぁ、何をしてしまったかというと、その落としてしまったアンプルをそのまんま素手で取ろうとつかんだのです。無心でした。周りにいる人に対して、危ないから早く片づけなければいけないとそればかり思っていました。

ところが、自分の危険を考えておらず、素手で触ったため、ガラスの破片で指を切ってしまったのです。「そのまま触っちゃだめ!!」と注意してくれた先輩の声はすでに遅し、すでに私の指からは流血中。

「あーあ」と先輩に言われ、片づけるからどいてと言われる始末。指から流れる血を洗い流しながら、片づけてくれる先輩を見つめる私。そして、黄色く染まった白衣に出血までつけてしまう私。ため息をつきながら「先に絆創膏貼って着替えてきなさい」と先輩に言われる私。かっこ悪かったです。

先輩には、「もー、割れたガラスは素手で触っちゃだめじゃん」と優しく叱っていただきました。がっくりと肩を落としている私に、笑いながら先輩は話かけてくれました。「誰にでも失敗はあることだけれど、その後は間違っていたよね」と優しく教えてもらいました。

そう、そこで学んだことは、大事なのは、インシデントを起こしてしまったと反省する気持ちよりも先に、まずは正しい対応をすることなんだということでした。

あたり前かもしれませんが、新人の私にはそれは欠けていました。もちろん、インシデントを起こす前に予防策を十分に練って、行動することが一番大切です。しかしそれもすべて冷静に対応することが大切なのだと思います。

新人のときは、やってしまった気持ちが先行してしまうもの、焦ってしまうもの、それはあたり前だと構えて、対応できる心を持っておけるようにしておきたいものです。

それはプリセプターになってからも心得ておきました。反省するより先に、対応する。反省は後で、と何度もプリセプティに話をしてきました。

今回は、私は自分が怪我をしてしまうことで済んだのですが、自分のミスで何かしら患者さんに迷惑をかけてしまったとき、その後の対応でも患者さんの信頼度は変わってくると思います。そのためにも、まず冷静な対応ということを心がけたいものですね。

といっても、いくら冷静に対応できても、そのあと待っている反省とインシデントレポートはかなり凹むものですから、できれば避けたいですし、ミスはしないように作業は慎重に行いたいですよね。