政府はいろいろな政策を打ち出していますが、その中でもIT戦略本部というところがあります。

ITなどの高度情報通信ネットワークを社会に推進させるための基本的な戦略を練るところなのですが、医療分野のIT化についてもいろいろと戦略を打ち出しています。

その中の一つに、2010年に公表された「どこでもMY病院」というものがあります。

どこでもMY病院とはどのようなものなのか、具体的にどの程度医療界では浸透しているかについて検証します。

個人の健康情報を管理するメリットは?

どこでもMY病院とは、簡単に言ってしまうと個人の健康情報を管理して、その人にとってより良い医療サービスを受けやすくするためのシステムという意味合いがあります。

たとえば日常生活における健康管理がやりやすくなります。健診結果のデータなどを電子化することで、例えば携帯電話のキャリアと連携して、食べ過ぎるとスマホが警告してくれるといったサービスを導入できるかもしれません。

自分でいちいち運動量や食事量、体重を記録しなくても管理できるわけです。

また医療機関を受診した時にも、どこでもMY病院はメリットがあると考えられています。

診療明細や調剤情報などを管理できれば、医者を受診した時に過去の病気や治療内容をいちいち説明する必要がなくなります。

患者の状況を相当レベルまで医者や薬剤師も把握できるので、無駄な検査や投薬を防止でき、より効率的な医療サービスが受けられるようになります。

急病で倒れて意識を失ってしまうことも、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気を発症すれば起こりえます。

このような場合本人から症状を聞き出せなくても、既往歴や服薬歴に救急隊や医療機関がアクセスできれば、素早く適切な処置を受けられるようになります。

その結果、救命率を従来と比較して飛躍的に向上させることも十分可能でしょう。

どこでもMY病院構想の進捗具合は実際のところどうなの?

どこでもMY病院構想が立ち上がってから5年以上の年月が経過しました。

個別に見てみると、どこでもMY病院の実践的な計画も進められている部分はあります。たとえば糖尿病連携手帳の電子版やお薬手帳の電子化などが進められています。

全く進んでいないということはないのですが、実際のところスピードは決して速くないというのが現状と言わざるを得ません。

なぜどこでもMY病院構想が進まないかですが、医療業界の疑問が関係しています。民間サービスには不向きなのではないかという意見が医療界ではけっこう聞かれるからです。

まず患者がどこでもMY病院で電子化することで、逆に扱いにくいと感じてしまうのではないかという懸念があります。

たとえば先ほど紹介したお薬手帳の電子化の場合、携帯電話やスマホを使って管理をする手法が取られています。

しかしデータを出力する場合、バーコードの読み取りが必要など普段あまり携帯電話やスマホを多機能で使っていない人にとっては、やり方がわからないといった問題が出てきます。特に高齢者の場合、使い方で手間取ることが十分考えられます。

さらに電子化を広く導入することになった場合、どの業界でも課題になるのはセキュリティ対策をどのように進めればいいかという点です。

最近ではクラウドによる情報管理も進められているので、震災などの大きな被害の発生した場合でもデータが失われる心配をする必要はないかもしれません。

しかし医療データに個人情報をどの程度含めればいいのか、どうやって管理をすれば情報漏えいなどの問題が起きないかといったことを検討していく必要があります。

電子版お薬手帳の発行時に、ICカードを交付します。交通のICカードを利用したことのある方はわかるでしょうが、デポジット代をカード発行時に支払わないといけません。

これはあくまでも一時金ではありますが、それまで無料でお薬手帳が発行されていたので、患者としてみれば電子版お薬手帳を入手することに躊躇する人も出てくるでしょう。

このような課題が出てきていて、なかなかスムーズにどこでもMY病院構想が進行していっていないのです。