高齢者は、入院と言ういつもと違う環境に置かれると、認知的に問題が無くても精神的に不安定となったり、せん妄や混乱を起こしたりすることがあります。

不眠になったり、自分の病室が分かりにくくなる事をはじめ、この他にも物忘れがひどくなったり、注意力が無くなることがあります。

環境の変化が人の認知力に与える影響は多く、まず、疾患に対したショックや不安から精神症状を起こしやすくなります。

入院では、在宅と違う、自分の楽しみにしていた習慣が出来ない、日々の刺激が無くなる、苦痛な事が多いという状況から、認知症症状を切らしたり、初めは少しの物忘れから性格や人格の変貌、認知症となってしまったりする事があります。

看護職者として、患者さんの認知症予防について理解し、高齢者の入院にストレスを軽減させ、認知症を発症しない関わりをしたいものです。

それは、在宅へ帰る患者さんにとって大切な看護ケアとなります。

患者さんの認知的低下を察知する

長期入院で認知的低下を来たしたかもしれない患者さんの変化に気づくことが大切です。

まず、最も現れやすい状態が、表情が暗くなり、これまで明るく挨拶していた患者さんの言葉数が少なくなります。こちらが話しかけてもうかない表情で、刺激に鈍感になります。

どうしたのか聞いてみても「なんともない」「大丈夫」という答えが、どこか寂しそうに見えるようになります。何かすることを勧めても、楽しくない、やりたくないと積極性が無くなります。

このように、体の活動、精神活動の低下がみられ始めたら注意が必要です。

認知症予防に良いとされているもの

運動:ウォーキング、歩行を1日30分程度を週3回程度。有酸素運動は、アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβたんぱくの脳への蓄積を予防し、海馬の神経細胞を増加します。

知的活動:パズル、脳トレーニング、ドリル、オセロなど。神経伝達物質であるドーパミンの受容体を増加し、知的活動の中核である前頭前野の刺激がなされます。大切なことは、難しさではなく、達成感を感じられることです。

食事:食べすぎに注意し、ゆっくり食べるようにします。食べることが早い人は、血糖値が急上昇し、インシュリン過剰となり、それが脳機能低下に繋がります。ビタミンE、ビタミンC、βカロチン、DHA、EPA、ポリフェノールが脳機能低下に繋がります。

看護現場における認知症予防

運動

早期回復、機能低下予防のためにリハビリテーションが行われることがあります。リハビリテーションにより体を動かすこと、看護師も病棟内の歩行練習に付き添ったり、話しながら散歩する事も良いでしょう。

病室で横になっている患者さんに対しては、離床し、ロビーに出たり、テレビを見たり、談話室などがあれば、そこへ誘導したり他の患者さん等と関われる所への移動を促しても良いでしょう。

知的活動

医療現場では、空いた時間に塗り絵をしたり、脳トレーニングやドリルを勧めたりすると知的刺激を与えられる支援が出来ます。

ロビー、談話室、食堂やレクリエーションが出来る場所がある医療機関では、他の患者さんと関わり、何かのゲームが出来れば認知症予防に繋がります。

介護福祉施設などでよく行われるオセロ、将棋、パズルなどを勧めても良いでしょう。そして、なにより人と話すことが人間の楽しみでもあります。

一人病室に閉じこもるのではなく病室から出て他の患者さんと関われる時間や、看護師自体が話し相手になるゆとりを作るようにしましょう。

食事

食事はカロリー計算され、その人に必要な栄養と食事の提供がなされます。

しかし、療養中は活動性が低下し食欲も低下している場合が多くあります。その患者さんがどの程度食事摂取出来ているか、残食は多くないかを観察し、また、間食の有無にも注意した観察が必要です。

また、食事を楽しく食べる為に、食堂がある医療機関では食堂での食事を促し、他者との交流を持って楽しく食べられる機会を設けます。

そして、日中の活動が食事に与える影響も多く、病室でじっとしている時間を無くし、食事の時にはお腹がすいていると言う状況が作れるよう日中の過ごし方にも注意した観察をしましょう。

まとめ

認知症ケアには、認知症ケア専門士、老年看護専門看護師などの専門資格があります。また、看護協会や各種個人団体、認知症サポーターなどが行う研修やセミナーがたくさんあります。

看護師は、入院と言う患者さんの認知力への弊害をなくす試みを持って看護ケアを行う必要があります。もし、患者さんが退院の時、認知症を発症したり、初期認知症状態となった場合、困るのは患者さんと、そのご家族です。

安心した療養と、これからの生活維持のためにも介入しなければならない看護ケアと言えるでしょう。