多忙を極める看護のお仕事ですが、患者さんの心を癒すケアがどれほどに行えているでしょうか。

安楽、リラックス、思いの表出など、これらストレスの消失に関わるケアは、不安や苦痛を抱える患者さんに大きな力を与えるケアです。

しかし、現状の看護現場と言えば、日々の業務、検査、処置に手いっぱいとなり、一人一人の患者さんにじっくりと向き合う時間が少ないように思います。

闘病する患者さんの力が取り戻せる聴ける看護師になりたいと感じませんか?

では、「聴く看護」「聴ける看護」とはどのような看護でしょうか。

まず大切なことは、患者さんと看護師という関係ですが、その壁をとっぱらい、一人の人間として対話する事です。

その空間が一人の人間として存在し、自分が自分として話し、コントロールできるように支援します。

話をすることで、その患者さんは孤独感や不安感を和らげ希望を取り戻せます。

看護師は、ただその思いに耳を傾け、相槌や理解しようとする雰囲気を持って対応し、自分の意見を言うわけでなくただひたすら聴くことに徹します。

それは、患者さんのみでなく、心を痛める患者さんの家族や関係者にも適応し、その方に関わる全ての人々の心痛に対応します。

アドバイスや指導を行う看護師の仕事を一時中断して、ただひたすら訴えに耳を傾けます。

がん患者さんとの関わりの中で

がん患者さんの意思決定は、疾患の衝撃と恐怖、たくさんの選択肢もある為に困難を極めます。

しかし、医療職者は、「どうしますか?」と迫ります。

患者さんは、どうすべきか考えなければならない事を充分に分かっています。そんな心境でない事を医療職者は分かっていなければなりません。

患者さんは、聴いてほしいのです。

何を考え、何を不安に感じ、どうすれば良いのか、自分の選択は間違っていないのか、多くの心をにぎわす事柄を聴いてほしいのです。

そして、話して理解をして貰い、自分の意思についてもう一度考えてみて、自分の意思を固めていくのです。

話して、話して、自分を納得させ今後の方向性を決めていくのが告知を受けた患者さんなのです。

看護師は、医療職、専門職者としてベストな方法を指導、教育、導き出すのではなく、患者さん本人がベストと考えることを引き出す支援を行うのです。

そうする事で、患者さんは、自分の決めた道を歩み出せ、治療に参加できるようになるのです。

がん医療の今後

これからがんという疾患は増えてくるでしょう。高齢化、食の欧米化、生活習慣の変化からそのような時代が来ます。

2人に一人ががんを経験する時代が来るとも言われています。

医療の進歩により、癌は不治の病ではなく治る病気になっています。早期発見、早期治療開始がカギとなります。

また、治療開始が早いと、その治療の選択肢も多くなります。

生活の質も落とさず、自分らしさを保った治療が出来るでしょう。

医療職者として、がんを宣告された患者さんがショックを受け、前を向けなくなった時、そっと目を向け、耳を傾け、その言葉を聴けることが大切ではないでしょうか。

がん患者さんとのコミュニケーション

言葉のキャッチボールを知っていますか?相手の発する事に応対しなければ成立しません。

そこで大切なことは、相手の目線に立ち、その表情、仕草を観察しながら、その人の言葉を待ちます。

また、上手く観察していなければ次に言葉を発しようとしていても気付けず、話の腰を折ることとなります。

そして、オウム返しをして理解を示すことを教わりましたが、オウム返しで共感を伝えられるでしょうか。

患者さんは、共感、理解を求め、心の奥底を吐き出したいと思っています。

マニュアル的な反応より、心の底から「そっか」「うん、うん」「私だったら、、、」と考えられた返答を求めています。

時に、本当に患者さんの状況が理解できないことがあります。

それに患者さんは気付いていますし、分かったふりをしていると「私の身になったことが無いのに何でわかるの?」と不審に思います。

そんな時、本音で語られたら患者さんが安心する事があります。

「真剣に考えてみたけれど、経験していない私にはわからない」「でも、きっと本当に辛いんですよね」と知ったかぶり、分かったふりをされるよりずっと良いと感じられる事もあります。

患者さんとのコミュニケーションで大切なことは、誠実さや正直さで、本当の人と人との対話をすることではないでしょうか。

がん告知後のコミュニケーション

告知を受けると、患者さんは死を連想します。死を連想した患者さんは、元気に振舞おうとしたり、本当に衝撃に耐えられなくなったり、様々な表出をします。

どのような対応を患者さんがしたとしても、看護師は患者さんに付き添い、付き合う気持ちで関わる必要があります。

患者さんが今後、どのような選択をしても、寄り添い、人生と向き合い、信頼関係に元治療が継続できるよう支援しなければなりません。

看護師自身、落ち込む患者さんと付き合う事に辛さ、しんどさを感じることがあります。

しかし、患者さんは心を寄せられる居場所を求めています。

やり場のない気持をしっかりと受け止める看護を行う事が必要です。

患者さんの求めていること

がん告知後の患者さんは、様々な事を考えます。予後、死後、これからの生き方、治療方針など心を巡らせます。

そして、告知を受けた患者さんの周囲の人々の変化に気付きます。異様に優しくなったり、腫れものを扱うように大切にし始めます。

患者さんの本音は、いつも通り変わらない接し方をしてほしいと感じています。

私の経験を言うと、「あなたが来てくれると普通の人に戻った気がする」と言われたことがあります。

私の性格上、同情やオブラートに包んだような対話ができません。思った事を思ったように話しますし、そこから対話を生みます。

周囲の人々や看護師は、言葉を選びながら慎重に話してくるけれど、あなたは自分の思いを率直に話してくれる。

そんな人と人との会話がしたい、重病を忘れるような会話がしたいと言われたことがあります。

患者さんは、がんと知らされても一人の人間として、人と人とのつながりや関わりを求めています。大切に、愛護的に「がん、大変ですね、かわいそう」と言われたいと思っていません。

これまで通りの関係で、変わらず日々を送りたいと考えています。

患者さんにより、性格や思い、どのように対応してほしいかと考えているかは違いますが、このようなケースがある事も知っておいてほしいところです。

まとめ

患者さんとのコミュニケーションで悩むことは多々あるでしょう。

同じ状況の患者さんでも、Aさんには良好な関係が築けても、Bさんにとったら立腹させてしまう事もあるでしょう。

良好な関係を築くには、患者さんを知り、患者さんの思いを聴くことではないでしょうか。

その為にも、「聴ける」看護師を目指しましょう。