呼吸理学療法という、患者さんの呼吸機能を安定させる看護ケアをご存知ですか?

慢性呼吸器疾患、手術前後、重症患者さんの気道や呼吸がし易いよう、呼吸筋に刺激を与えるケアで気道のクリアランスを正常化させ、無気肺、痰の排出促進、ガス交換の効率化を図り、全身に効率的な酸素供給を行います。

理学療法と言う為、理学療法士が行うケアと考えられがちですか、患者さんと多くの時間を共にする看護師が、率先して行う事で、患者さんの呼吸器合併症予防や呼吸の安定が図れます。

しかし、呼吸筋のみではなく、全身への刺激となり、充分な理解が無ければ患者さんの体力の消耗や苦痛を感じさせてしまうケアにもなります。

では、患者さんの安楽な呼吸を実現するために必要な呼吸理学療法の知識について学んでみましょう。

「呼吸理学療法」項目達成のためのポイント

そもそも、呼吸理学療法とは、肺や気道に溜まっている分泌物を苦痛や困難さを感じることなく容易に排除できるようにするためのケアです。

これを行う事で、ガス交換が効率的に行え、身体的疲労を伴う事無く呼吸がし易くなります。

痰の貯留や吸引により痰を排出している患者さん、手術前の術前訓練、手術後の自己排痰困難な患者さん、人工呼吸器や酸素療法などで呼吸筋の低下や自己排痰困難な患者さん、慢性呼吸器疾患で分泌物の増加が認められ分泌物の貯留が著名な患者さん等を対象とします。

方法としては、体位ドレナージ、吸引や吸入、電動式振動法、タッピング、スクイージングなどを行います。

必要物品は「体位変換枕」「吸引器、吸引セット」です。

観察点

・患者さんの基礎疾患に対する情報

何の疾患で、どこに、どのような症状が出ているのか、呼吸理学療法を行うその効果

心疾患、肺水腫、肺出血、肺の手術後、脳浮腫、喘息やCOPDの有無など

・全身状態の観察

体温、血圧、不整脈の有無、SPO2

・呼吸状態の観察

肺音聴取、呼吸回数、呼吸のリズム、痰の量と性状、SPO2、呼吸困難感、チアノーゼ、末梢循環動態や冷感の有無、

・患者さんの自己排痰状況

・検査データ

胸部レントゲン検査、血液ガスデータ、肺機能検査、一般血液検査など

・手術後の場合

術後疼痛の有無と程度、持続硬膜外麻酔の利用やその効果、離床の程度

方法

・患者さんにとって、効果的な呼吸理学療法の方法をアセスメントします。

・患者さんに呼吸理学療法を説明し、どのように行うか説明します。

・各種検査データを基に、患者さんの呼吸に対するアセスメントを行います。

・バイタルサイン測定、呼吸状態の観察を行い、呼吸理学療法が実施できる状況かどうかを確認します。

・直前に聴診し、どの部分に分泌物が貯留しているかを確認します。

・患者さんに、体位ドレナージの方法と目的を再度説明し、協力を得ます。

トイレに行ける患者さんは、排尿を済ませてもらう。

※体位ドレナージは、1回30分程度施行する事が効果ていであるとされています。

この事も患者さんに説明し、すぐに終わることのないケアであることを理解して貰います。

・患者さんの体位を整えます。

施行前に、ネブライザーや加湿による気道の感想を改善しておくと効果的です。

痰は、あまり動かない夜間に貯留し易く、そのたまった痰を効果的に排泄させるためには午前中のケアが望ましいものです。

・痰の貯留部を上にする体位でドレナージを行います。

(慢性呼吸不全の患者さんの場合)

貯留部:肺上葉 ファーラー位

貯留部:肺下葉 腹臥位(下肢側を50cm程度ベッドアップします。)

※時間ごとに体位変換を行うだけでも呼吸理学療法は果たせます。

(急性呼吸不全さんの患者の場合)

・状態が変化し易く、臥位での生活が多い為、背中方向に痰が貯留し易いです。

よって、患側を下にした側臥位が、低侵襲な体位ドレナージ方法です。

そのたびに、背中をタッピングしたり、呼吸筋の動きに合わせて胸郭運動をアシストするスクイージングを加えたりすることでより効果的な呼吸理学療法が行えます。

・体位ドレナージについて施行後の評価を行い、次に繋がるケアを考えます。

呼吸状態、痰の量や吸引施行の有無、痰の性状、呼吸や肺雑音の聴取、SPO2の変動を観察します。

また、バイタルサインの異変が無いか、モニター波形を含めた状態観察を行います。

注意点

・患者さんの表情やモニター、自動血圧計やSPO2の変動を観察しながら行います。

・体位によっては、低換気や気道閉塞、窒息や嘔吐を誘発してしまう事がある為注意が必要です。

・循環器に問題があったり、人工呼吸器などを使用している体力的にも疾患的にも消耗している患者さんには、時に負担が多いケアとなる事を考慮し行います。

・呼吸理学療法の禁忌
心不全、肺感染症、肺水腫、肺出血、重症不整脈、重症高血圧、脳浮腫など

まとめ

呼吸理学療法は、時に患者さんの負担を伴うケアを理解し、その方にあう方法で無理なく行えることが基本です。

看護師は、呼吸機能の評価とその患者さんの全身状態、国理学療法がもたらす効果を充分にアセスメントし、安全に行う事が求められます。

呼吸理学療法は、どの方法がどの程度有効かと考えられている分野でもあります。

この研究を学習し、しっかりとした根拠を持って患者さんの安楽な呼吸ケアを実現出来るようにしましょう。