患者さんの「死」と向き合う回数の多い病棟、患者さんの「死」とあまり遭遇しない病棟、病棟それぞれにカラーがあり、同じ年数の看護師も、病棟により死後の処置の経験は差が出てくるものです。

人の死についてどのような意見がありますか?

人生を全うし、辛い闘病の最期の時に、その方の最後の医療処置を行う事が「死後の処置」という事になります。

もう、その患者さんに何かのケアをすることはありません。

だから、思いを込めて、敬意を払った対応を心掛けたいものです。

そして、悲しむ残された家族も、看護師の最後の対応によっては、「救われた」「良かった」と感じられることがあり、グリーフケアにも繋がります。

では、患者さんの最後のケア「死後の処置」について学びを深めましょう。

「死後の処置」項目達成のためのポイント

看護師になる時、絶対に向き合わなければならない仕事として「死後の処置」がある事を知って看護師になったでしょうか。

その人の人生を締めくくる最期の時間を看護師が心をこめてケアします。

ターミナルケアを行う病棟、救命救急外来、集中治療室、腫瘍系疾患の病棟などに多いのが死後の処置です。

人が死を迎える時、「余命宣告がされている場合」「急病や災害、大けがなどの急な死」「いつの間にか亡くなっていた」という事があります。

病院では、いつの間にか亡くなっていたと言う事はありませんが、日常では、独居老人等の孤独死があるようで、その様な患者さんが死亡確認に救急搬送されることもあります。

人の死

・心臓の停止
・瞳孔の散大
・呼吸の停止

死後の処置

「死」の診断を受けて、すぐに受けとめられない、死を理解し準備していたけれど、実際冷静でいられないと言う事が多くあります。

死後硬直が始まる為、早めに処置を行わなければなりませんが、家族の方の悲嘆する時間を持つべきです。

5分、10分程度では何も変わりません。

だから、少しの間近くにいて話しかける時間を持つ配慮が必要です。

また、遅れて入っている家族もいるでしょう。

快く入室を促し、最後の対面が出来るよう配慮しましょう。

そして、死後の処置に関しても、その時間一緒にケアを行い心のケア、受けとめの促進が図れる関わりが出来ればよいものです。

また、処置中に葬儀屋さんや搬送車の手配が必要です。

各医療機関でマニュアル化されていることが多いですが、病院が準備する場合と、ご家族に依頼して貰う病院があるでしょう。

その取り決めに応じた対応が必要です。

必要物品

エンゼルセット:青梅綿、割り箸、おむつやT字帯、かみそり、化粧品

清拭用品:バケツ、タオル(ホットタオルであればバケツ不要)

着替:自宅や葬儀屋に帰る衣類の準備を依頼します

タオルケット

方法

患者さんに装着してあったモニター、チューブ、ドレーン、カテーテル、点滴などを除去します。

点滴などのルートは、まだ出血するリスクがある為、止血できるようアルコール綿を当てたりします。

家族の方が一緒に行いたい場合は、死後の処置に参加して貰います。

そして、退出を希望される場合は、最期の時間を設けます。

死後の処置開始です。

下腹部を圧迫し、残便と尿を排泄させます。

陰部洗浄を行い、新しいおむつやT字帯に改めます。

そして、全身清拭を開始します。

医療機関により異なりますが、アルコール清拭を行ったり、通常の全身清拭を行います。

タオルは、捨てて良いもの等をご家族に確認し、使用しても良いと言われたものを使用します。

義歯を外し、口腔清拭を行い、口腔内に綿をつめます。

そして、顎バンドで顎を固定しますが、自然な表情が保てるよう両顎が合致するように固定します。

鼻と耳、膣、肛門の穴にも綿をつめます。

特に表情には注意し、顔を見て綿がはみ出していないように注意します。

用意して貰える衣類を着用します。

着物の場合は、左前身頃にし、ひもを縦結びにします。

整髪、ひげそり、化粧を行います。

手のバンドを付け、合唱をして終了です。

心をこめて、敬意を払って、その方のこれまでの人生を感じながら行いましょう。

そうすれば、おのずとご家族も、自分たちも「最期をみとれてよかった」と思える死後の処置になるでしょう。

まとめ

初めて死後の処置を経験した時に聞いたことがあります。

その患者さんは、「あなたを選んで今日を選んだ」と。

本当かどうかは分かりません。

しかし、そうなのであればこちらも、哀悼の意を持って対応したいものです。

私なら最期を綺麗に終わらせてくれる、と感じてくれたのであれば喜ばしいものです。

終わりよければすべてよしという言葉もあります。

その方の最期を印象深いケアに出来るかどうかは、自分次第なのかもしれません。