フィールドナースは看護師資格を活かせる働き方の一つです。クリニカルスペシャリスト、クリニカルアドバイザー、クリニカルコーディネーターなどと呼ばれることもあります。

医療機器や医療用具を製造販売している民間企業である医療機器メーカーが主な勤務先となります。

このページでは、フィールドナースを転職先候補にしようか迷っている看護師さんに役立つ情報をまとめています。

ぜひ参考にしてみてください。

フィールドナースの仕事内容

医療機器の使い方や効果の説明や医療機器を売るための営業補助

仕事内容としては、医療機器の使い方や効果の説明や医療機器を売るための営業補助です。

昨今の医療機器は進化を続けていて、機能も高度化しています。このような医療機器を医療機関へ販売するにあたり、フィールドナースが持っている専門的な知識やアドバイスが必要とされます。

主に仕事中は営業担当者とコンビを組んで行動します。自社の医療機器を導入している医療機関へ赴き、営業のサポートにあたります。機器の正しい使い方や利便性、ほかの機器と異なっている点などについて、医療機関や代理店などへ説明します。

その他にも、フィールドナースは医療機関や代理店へ向けた資料作りなどをして、販売戦略の策定にあたります。さらにデモンストレーションや専門的な説明もして、最後に導入の手続きや手伝いをします。

医療機器が導入された後は、基本的なアフターサポートやメンテナンスに加えて病院での業務改善を行うコンサルティングや看護師向けの医療セミナーを担当することもあります。

フィールドナースの給料・平均年収

フィールドナースの給料面については、勤務する職場によって金額が大きく異なります。

平均的な給料(正社員の場合)は、年収でおよそ500万円から550万円です。

初任給から平均的な金額を受け取ることができることは多くなく、年収にすると400万円以下になるケースもあります。

しかし、中には「TOEICで800点以上のスコアを持っていると年収700万円以上」「営業成績によってはボーナスを大幅増額」など、年収UPに繋がる高待遇を用意している例もあります。

例えば、海外留学から帰国した後に国立病院で5年間、ホスピスで3年間の実務経験を経た看護師がフィールドナースとなった場合、複数の職場における経験が評価されて年収は総じて500万円以上になります。

病院での外来勤務を3年間にわたって経験した上で健診センターでも4年間働き、それからフィールドナースになったという場合の年収についてもやはり、500万円程です。

病院やクリニックにおける勤務に比べれば収入としてやや上回っている場合も多いのですが、それでありながら職場環境としては働きやすく、休日に出勤することも残業をすることもほとんどなく労働時間に見合った給料です。

雇用保険や厚生年金、健康保険、労災保険などは、全て適応されるのは当然ですが、福利厚生面では、団体定期保険・団体傷害保険などに加入するケースもあります。

なお、退職金制度に関しては1年目から退職金を出す医療機器メーカーはあまりありません。最低でも入社3年目以降から退職金制度が適応されるケースが多くみられます。

医療機関の看護師との給与比較

世間では、看護師は女性の仕事の中で最も平均収入が高い部類だと思われていますが、フィールドナースになった場合、病院で働いている看護師と比較しても年収がさらに50万円~100万円くらいは高くなっています。

このように、フィールドナースの年収は500万~550万円程度のところが多く、看護師全般の平均年収のおよそ430万円と比べてみましてもかなり高めです。

看護師からフィールドナースに転職するメリット・デメリット

【メリット1】働きやすい勤務体系になる

フィールドナースになると、病院などの医療機関への勤務に比べて労働環境や勤務時間の面で働きやすくなる可能性が高いです。

  • 深夜に働くことはない
  • 休日出勤は多くない
  • 交代勤務なし
  • お正月やお盆やゴールデンウィークに連休取得可能
  • 土日の週休2日

フィールドナースは医療機器メーカーの営業で、平日も休日もないような生活を強いられることはありません。また、会社員と勤務体系がほとんど同じで、看護師に必ずあると言っても良い交代勤務も夜勤もなく、休日も家族で楽しめるようになるということが最大のメリットです。

【メリット2】仕事に慣れやすく、スキルを伸ばすことでやりがいにも繋がる

看護師としての勤務経験があれば、比較的早い段階でフィールドナースの仕事に慣れることができます。

当然のことながら勤務する企業によって仕事の内容は変わりますが、看護師としての臨床経験があればその経験を活かしながら正しい医療機器の使い方をプレゼンしたり、現場から求められれている情報やサービスが分かったりととてもフィールドナースをしていく上では役立ちます。

フィールドナース単独で行動することはなく、営業マンと一緒に病院やセミナーなどに出向いて仕事をしますが、プレゼンテーションの方法・資料作成の工夫など新たなスキルを習得することができ、コミュニケーション能力に問題がなければとてもやりがいのある仕事です。

【デメリット1】成果や実績を求められる

フィールドナースの場合は、民間企業で働く営業職なので常に成果を求められます。実績を残せないときは給料が下がったり、職場にいられなくなってしまうということも起こり得ますので、こういうところは最大のデメリットです。

【デメリット2】畑違いの分野に足を踏み入れるリスクがある

臨床の現場から離れて営業職として企業で働くということは、患者さん達と直接接することは全くなくなり、看護の仕事からも遠のいてしまうため全く違う畑に足を踏み入れる点で少なからずリスクが存在します。

本来、看護師は患者さんのために働いていますが、医療機器メーカーに就職すれば医療機器の販売等に注視することになり看護をすることを目指して看護師になった人にとって覚悟が必要になります。今まで行っていた業務と180度内容が変わることに対応できなければなりません。

フィールドナースになるには?求められるスキルや経験

看護師としての経験

フィールドナースは様々な医療資格者の転職先として選ばれていますが、中でも看護師としての実務経験は非常に重宝されます。

看護師の実務ではいろいろな機器を使用するので、経験から感じた疑問、またより使いやすくなるポイント、理想的な機能などといったように使ったことがなければわからないポイントに気がつくことができるからです。

フィールドナースとしてかかわることで、看護師時代に自分の感じていた点を商品に反映させるような提案をすることなどもできます。

また、ユーザーの要望をヒアリングして自社に持ち帰るという、いわゆるつなぎ役を担うこともあるので、患者さんとのコミュニケーションやその後の職場伝達などで得た経験も活かすことができます。

パソコンスキル

企画や説明の内容などをまとめるためにパソコンスキルも求められます。ワード、エクセル、パワーポイントといったソフトを普通に使いこなすことができれば問題はありません。特にパワーポイントは、大勢を相手にしてプレゼンテーションを行う場面もあるために求められるところがあります。

自動車免許

営業活動では、社用車を使用するケースがあります。

顧客は都市部だけでなく地方にも多く存在しています。対応するエリアも広範囲になることも多く、フィールドナースが単独で顧客のところへ出向くこともあります。

そのため、運転免許を応募にあたっての条件としているケースも少なくありません。

英語力(あったら有利)

フィールドナースを必要としている企業は世界的な規模で活動していることも多く、海外企業と連携している企業や外資系企業も少なくありません。そのため、英語をはじめとした語学力があれば就職する上でもアピールポイントになります。

そういった企業で働いた場合、海外への出張、製品の取扱説明書、社内会議でのやり取り、メール、電話のやり取りのほとんどが英語です。企業によってはTOEIC600点以上など条件を提示している場合もあります。

フィールドナースに転職してから伸ばせるスキル

プロモーション能力、発想力

お客様となる病院側への商品説明や自社の営業担当への勉強会の際には、その時に使用する資料、よりわかりやすく説明するための提案資料の情報収集、資料作成が必要になり、それもフィールドナースの業務のひとつです。

そういった業務を通じて、看護業務ではあまり伸ばすチャンスがなかったプロモーション能力や発想力を伸ばしていくことができるでしょう。

利益を上げるためのスキル

フィールドナースとして働くと、販売戦略、企画立案、マーケティング、マネジメントなど会社としての利益を上げるためのスキルも高まってきます。医療業界の傾向、問題など常に新しい情報を入手することが重要です。一歩二歩と先を予測することで今後の動向を予想する力もついてきます。

また、医療市場を把握することで今、医療現場で何が求められているか、どのような機器が必要かなどマーケティング力、分析力が養われます。

看護師としての経験と知識を活かして新製品の開発に携わり、患者さんが負担とならないための工夫、看護師が業務しやすい製品の提案などを行うこともあり、フィールドナースが中心となって製品を開発する場合もあります。

リーダーシップ、人をまとめる力

上記に述べたことを行うには、リーダーシップ、人をまとめる力、意見を集約し形にする力が必要になってきます。

マーケティング、マネジメント、市場分析などの能力は業務をしながら学ぶことも可能ですが、看護師とはかけ離れた専門知識となりますので経営セミナーや研修会、社内勉強会等への参加も検討してみるとよいでしょう。

看護師からフィールドナースに転職するための求人探し&採用対策

求人の見つけ方

フィールドナースの募集は1年を通してどこかしらから出されています。基本的に不定期ではありますが、中でも退職者が増える冬から春にかけての時期については増える傾向があります。

求人の数はそこまでは多くありませんが、今後はさらに需要が増していくと見込まれています。

そして、応募条件として主に看護師としての臨床経験を求める企業が多いことから、看護師専門の転職サイトで募集が行われるケースがほとんどです。

看護師転職サイトに登録して、常にフィールドナースの最新求人を入手できる環境を整えるところから始めましょう。

登録する転職サイトは、看護師転職サイトの中でも病院以外の職場紹介に強い看護師転職サイトがおすすめです。

どんな企業を選ぶべきか

フィールドナースの求人は、主に医療機器メーカーで行われています。

こういった企業は、海外と取引をしているケースも多いため、一定の語学力が求められることもあります。語学力にあまり自信がないという人は、特に外資系企業による募集は避けたほうが無難でしょう。

また、企業によっては多忙であり、残業が多い場合などもあります。そういった企業では給与も高く設定されている傾向にありますが、体力的に自信がない人は給与の額だけで選ぶということは避けたほうが良いでしょう。

また、日系か外資系かによって給与形態や労働環境、雇用契約などにも多少の違いがあります。

給与形態については、外資系ですと営業職であるフィールドナースについて出来高制を導入しているケースも多くなっています。

労働環境については、日系企業の社員に臨機応変な対応をすることが求められる一方、外資系企業では自身の役割が非常に明確となっています。自分の仕事以外の業務には対応する必要がない代わりに、仕事の結果は強く求められることとなります。

雇用契約については、外資系企業ですと1年から2年単位の契約になることが一般的です。

採用されるためのアピールポイント

フィールドナースの採用の際は、看護師のであることに加えて営業職としてのビジネスマナーやスキルへの適性が見極められることになります。

また、必要に応じて出張しなければならないケースもあるので、その点もフレキシブルに対応できるというのも積極的にアピールしていきたいところです。

さらに、現場で直接的に医療へかかわるのではなく、間接的なポジションを望んでいることは強みになります。現場の看護師をはじめとして医療従事者のサポートに回りつつ、医療業界を支援する仕事をしたいといった姿勢があれば採用につながりやすくなります。

そして、何と言ってもこれまでの看護師としての経験が1番のアピールポイントになりますが、何よりも新しい分野にチャレンジしたいという意気込みを示すことが大切です。医療機器に関する知識を身につけたい!という熱意をアピールしていきましょう。

看護師転職サイトを利用して転職活動を行った場合、この辺りの採用対策も含めてしっかりサポートしてもらえるので、分からないことやアドバイスをもらいたいことなどがあったら積極的にサポートを活用していきましょう。

フィールドナースに転職した看護師が答える!気になる疑問Q&A

フィールドナースの仕事は楽?辛い?

仕事内容は病院勤務とは大きく異なるため、医療機関で働くよりも楽か辛いかを単純に比較することはできません。

前半の章でも紹介したように、フィールドナースの仕事にはビジネスライクな人間関係や成果主義ならでは大変さがあり、体力的にも精神的にも辛い
場面があります。

しかし、医療機関ならではのストレス(人の生死に関わることなど)は解消されるので、医療機関でそういったストレスを敏感に感じながら働いていた人にとっては、フィールドナースは「楽な仕事」として捉えられるかもしれません。

フィールドナースに向いてる人は?向いてない人は?

フィールドナースは、営業担当者と共に製品をアピールし、契約に至るということが大きな役割となります。

そのため、医療に関する知識や技能だけでなく、セールスやプレゼンテーションに関するスキルも求められることになります。丁寧でわかりやすく、説得力のある説明が得意であるという人には向いているということができるでしょう。

また、時には顧客から難しい質問をされることもあるため、そのような時にもうろたえず落ち着いて堂々と対応することのできる度胸も必要とされます。体育会系の人に向いている仕事であるとも、いうことができます。

新卒看護師や看護業務未経験でも働ける?

フィールドナースは、高度な専門知識が求められる職種です。

そのため、新卒や未経験の看護師を採用する企業はあまり見られません。看護師の資格を持っているというだけで採用されることは難しいですし、実際に採用されたとしても結果を出すまでには大変な苦労をすることが想像に難くありません。

ただし、フィールドナースとしての職務経験が求められるということは少なく、未経験者を歓迎している求人も頻繁に見受けられます。

アルバイトやパート勤務で働ける?

フィールドナースの求人は、正社員での募集が多くアルバイトやパートでの求人はほとんど見ることができません。

フィールドナースは、企業の製品について熟知してセールスするという立場であることから、情報のリークを防ぐためにも非常勤採用などは行わないということが一般的です。

フィールドナースに転職した看護師の声

20代 女性

看護師免許を取得後、都内の大学病院に勤務し中央手術室に配属され一般的な手術の介助の仕事をしていました。

その後、県立病院へ転職し腎臓内科、産婦人科・泌尿器科病棟、小児科・小児科病棟を経験した後、結婚を機に首都圏に引っ越すことになり仕事も医療機器メーカーでのクリニカルアドバイザーに変わりました。

病院に勤めていた時には、経験を積むにつれて看護師業務以外の仕事も任されるようになっていたため、クリニカルアドバイザーの仕事を行う時は看護業務の経験以外にそういった経験も役に立ちました。

看護師は夜勤が前提ですので労働条件は非常に厳しいものですが、結婚をするということもあり夜勤のない勤務に変わることができたことはとても嬉しいことでした。

病院勤務から外資系の医療機器メーカーに転職して、年収もわずかですがアップしました。手術室で勤務していましたので様々な医療用の機械の取り扱いを経験し、その経験が今の仕事に生きています。

現在は病院を中心に医療機器の営業をサポートしながら、語学学校において英語の勉強もしています。

30代 女性

看護師として順調にキャリアを積んでいたのですが、一念発起して自分自身の力をつけるためにイギリスの大学院に2年間留学しました。その後、仕事を探すことになるのですが、再就職については悩みました。看護師の資格を活かして臨床から離れた仕事に就き、自分の可能性に挑戦することを理想としていたからです。

途中で何度も、もう一度病院での勤務に戻ろうかと思ったけど、妥協して働き口が見つかっても後悔すると考え、最終的に医療機器メーカーにクリニカルスペシャリストとして転職することができました。

クリニカルスペシャリストとして働くには、看護師としての臨床体験が役に立ちます。さらに英語が使えるので外資系の医療機器メーカーで働くことができ、自分の力を活かしていくことができます。

何度も迷ったのですが、人材紹介会社からの適切なアドバイスによって自分の目指す仕事について明確な方向性を持って転職活動ができました。そして、最終的に自分の培ってきた力を活かすことができる会社に転職することができました。

30代 女性

看護師として病院で働いていたのですが、忙しすぎる病院での勤務ではなくて医療機器のメーカーでフィールドナースの仕事を希望し転職しました。

以前に比べて若干ですが給料がアップし、医療機器メーカーでは総合病院の病棟勤務では経験できないことがたくさんあります。また、看護師の資格や目線を活かして仕事をすることもできます。日勤で残業もなく、仕事と家庭が両立しやすい仕事です。

40代 女性

国立病院の循環器科で5年間勤務して、2年間アメリカ留学、帰国後は救急外来を経て、外資系の医療機器メーカーに転職しました。医療機器は看護師として勤めていた時に使っていましたので、製品についての研修を受ける時は簡単に理解することができました。

しかし、フィールドナースはコンピューターを使う必要がありますので、そちらの面ではかなり苦労しました。

仕事のスタイルも変わり、出張が増えましたが、そのぶん自分の視野を広げることができます。

働きながら英語の力も少しずつ向上してきています。

フィールドナースは、看護師とは仕事の質が異なり、看護師の仕事と単純に比較して辛いか楽かを言うことはできません。看護師の知識や経験を活かせるので非常にやりがいがありますが、時には体力的・精神的に辛い場面も出てきます。

50代 女性

フィールドナースは、メーカーが開発した機器や用具を病院などに購入してもらうために営業を行います。看護師としての知識を活かして、商品の良さを説明します。さらに、その用具をうまく使いこなしてもらうためのアフターフォローも行います。

病棟勤務と違い過酷な勤務に悩まされることもなく、収入も看護師よりも50万~100万円高いです。ただ、成果主義を導入している職場も多いので、営業成績によって収入に大きな差が出ます。求人数も少なく、看護師の仕事と比較して良いところばかりでもありません。