緩和ケア(ホスピス)で働く看護師の役割

心身の痛みと苦しみを取り除く

緩和ケア(ホスピス)の役割は、積極的な治療を行わなず、患者さんの痛みを緩和するケアを行うことです。そこで働く医師は如何に痛みを軽減できるか考え、実行し、看護師は患者さんが自分らしく充実した日々を送ることが出来るようにサポートします。

特にナースの役割で重要なことは、緩和ケア専門の医師や麻酔科の医師と連携を取り、如何に患者さんの心身の痛みと苦しみを取り除くかに集中することです。麻酔科と言えば手術の時に麻酔をかけるだけの印象ですが、緩和ケアにおける麻酔科医の重要性は大変重く、通常は使わない強い痛み止めを処方したり、ナースにどんな痛みを止めを使うのか指示したりと幅広い仕事をすることになります。

ナースは麻酔科医の指示のもと、一般病棟では使わない痛み止めや麻薬など様々な薬を投与することになります。中には医療に使う以外では違法となる薬物も含まれており、これまで緩和ケアの仕事をしたことのないナースにとっては違和感があるものかもしれません。

医療スタッフと連携し患者にとって最良の環境を作る

緩和ケア(ホスピス)では、医師や同僚のナースの他にカウンセラー、介護福祉士など他の職種の方との連携が重要になってきます。医療スタッフが連携して緩和ケアを行うことで、患者さんにとって理想的な環境づくりを行うのです。

看護師の役割は単体で患者さんや家族と関わるだけでなく、チーム医療のスタッフの一員としてチームワークを発揮することが重要になってきます。スタッフ同士で密接な連携を取れるように、日頃からチーム内、緩和ケア(ホスピス)内で連絡を取り合い、勉強会や報告会、研修会を行い、違う職種同士で共に学び合える環境を作りましょう。

そうすることで最初は違和感のあった緩和ケアの内容にも理解できるようになります。

生きていることに意味を見いだせるように支え続ける

緩和ケア(ホスピス)のことを終末医療(ターミナルケア)と言い換えることもでき、患者さんの最期を人間らしく終わらせるようケアするのがナースの役割になってきます。この点が一般病棟との最大の違いで、最期の時を迎えるその時まで、出来るだけ心穏やかに、そして尊厳を持って死を迎えられるようにサポートするのが重要です。

つまり通常の看護ケアに加えて、心のケアを努めることがナースの重要な役割になります。同じ職場で働く医師は、どちらかと言えば医療的な面で身体のケアを担当することになり、ナースと役割分担をしていることになります。

緩和ケア病棟では、精神科の医師やカウンセラーもいますが、日常的に心のケアをするのはどうしても看護師の役割とされています。

家族の心身のケア、ホスピスに対する理解を求める

緩和ケア(ホスピス)に入った患者さんの家族は、患者さん本人よりも追いつめられていることがよくあります。患者さん自身に死の覚悟が出来ていても、家族はそうは行きません。ゆっくりと死に向かっていく家族を見送る心の準備が出来ていないことの方が多いのです。

そこで患者さんの家族の心のケアがナースの仕事に含まれてきます。

まず患者さんの家族は、自分の家族ががんにかかったことで病名に絶望し、一度治ったかに見えて再発・転移と言った絶望を繰り返して最終的に緩和ケア病棟へやって来ます。この時点で追いつめられていない家族などいないでしょう。

中には家族ががんになったことで、自分も何時かがんで死ぬのではないかと恐怖に駆られている人もいます。そうしたご家族の心のケアをし、緩和ケア(ホスピス)の在り方について理解を求めていくことがナースの仕事です。

理由として、家族が追いつめられて行くほどに患者さんにも気持ちが伝わってしまい、状態が悪化するという悪循環が起こるからです。患者さん本人の心のケアと同時に、家族の心のケアを行うのが重要です。

また家族の中には緩和(ホスピス)の在り方を誤解している人も大勢いるため、緩和ケアに関する正しい知識を教え、今患者さんがどんな状態にいるのか理解してもらうという役割もあります。