救急科とは、命の危機に瀕する患者さんが送られてくる最初の現場です。急病、事故や災害、状態悪化など、今、命が消えてしまいそうな患者さんが助けを求めて搬送されます。

高齢化により、脳血管障害、急性心疾患、癌疾患で運ばれてくる患者さんが増加しています。また、仕事中の災害や交通事故、薬物中毒やアルコール中毒などにより運ばれてくる成人、急な心停止や意識障害の患者さんもいます。

いずれにせよ、まさか、今日、自分の命が危機を被ると思ってもみない患者さんが多い現状があり、本人、家族共にショックや衝撃が強いと言えます。

このような救急現場で看護師に必要とされる知識や技術とはどのようなものでしょうか。

必要な看護技術・知識

救急科では、命を救う目的のために、医師、看護師、検査技師などが協力連携して力を尽くします。

医師と言っても、一つの診療科ではなく、その病気や怪我に応じた専門医や、麻酔科医、救命医などあらゆる診療科の意思が行き来する現場です。

ここでの看護師は、どの怪我や疾患にでも対応できるジェネラリストとしての知識や技術を要します。

点滴ルートの確保技術

まず、救命には各種薬剤を投与するために、点滴ルートの確保を行います。

意識の有無にかかわらず、救急科に来院する患者さんは、状況を理解できていないことが多く、点滴を刺入することが理解できなかったり、その刺入時の痛みに過剰反応して、動きを生じ正しく挿入できない場合があります。

よって、固定する看護師と、刺入する看護師が必要であったり、一度で確実に刺入できる穿刺技術が必要です。

また、その点滴ルートを抜かれないよう固定方法を知識として持っておく必要があります。

挿管介助技術

呼吸状態の悪い患者さんには、挿管をして酸素投与したり、人工呼吸器のよる呼吸管理を行う事があります。

そのため、医師の挿管する介助知識と技術が必要です。円滑にその操作が行われるよういつでも活用できるように物品準備や管理を行い、介助が正しく行えるよう練習しておくことも必要です。

メンタルケア技術

救急で搬送された患者さんは、意識があったり無かったり、状況を把握できなかったりと、精神的不安定な状態にあります。また、意識がある場合でも、「何故自分が」「これからどうなるのか」と不安を強めている場合があります。

分かる患者さんには、状況を正しく説明し、これから何をどうするかを細かく説明し、安心できるよう心のケアを行います。

また、意識の無い患者さんや意識の混濁した患者さんには、タッチングや優しい声かけにより、緊張を強めないよう配慮した関わりを行います。

どのような状況にしても、分からない、理解できない状況は、患者さんにとってストレスです。

その方の病状や症状に応じたメンタルケア技術が求められます。ここでのメンタルケア技術とは、配慮した関わりと言えるでしょう。

家族支援

救急科では、家族支援が重要となります。まさか自分の身内が、今日、救急車で運ばれるとは考えにくいものです。衝撃やショックが強く、家族の方が平常を保てないことがあります。

患者さんを一番に支えられる人が平常を保てないと、患者さんも不安を強め、治療や療養に支障をきたします。

そのため、家族の方の精神的ケアやカウンセリング技術が必要です。

連携調整力

救急科では、医師、検査部、薬剤部、医事課、救急救命士、看護師間など、多くの職員が関わる職場です。「報告」「連絡」「相談」を十分に行い、各種機関との橋渡し役を看護師が行う場合があります。

医師の指示を他部署に伝えたり、看護師間で共有したり、検査結果を医師に伝えたりなど、得た情報を適切に管理、情報提供する調整力も患者さんの安心した診療や治療に求められる力です。

まとめ

救急科の看護師のイメージは、テキパキとして頼れる看護師の憧れとも言える看護師が多いことでしょう。

しかし、そのテキパキとした様子になるまでには、多くの経験を積み、辛いこと、悲しい事を乗り越えてこそ得られた様子があると言えるでしょう。

救急科を目指す看護師の方は、慣れるまでそのプレッシャーや責任に押しつぶされそうになることがあるでしょう。しかし、命を救えると言うやりがいは、とてつもなく達成感のあるものです。