泌尿器科は外科的治療も内科的治療も両方存在します。手術の患者さんも多いですが、前立腺癌や膀胱癌などで抗がん剤治療をしている患者さんもいます。

そのため、短期入院から長期にわたる人までさまざま。中年の男性の患者さんが多いという特徴もありますが、もちろん女性もいます。自立している患者さんから全介助の患者さんまで幅広いです。

なんといっても、羞恥心の伴うケアや処置が多いです。疾患が排泄に関することや生殖器であることが多いため、イメージがつくかと思います。患者さん自身が恥ずかしいと思うと、痛いほどよく分かります。

実際、自分に当てはめてみて考えると、泌尿器科は異変に気づいて、病院に行くまでも勇気のいることだろうと思えます。

しかし、こちらは恥ずかしがってはいられません。いかに患者さんに不安を与えず、信頼をよせてくれるかというところが腕の見せどころでになります。

とはいえ、看護師はおむつ交換をはじめ、患者さんが羞恥心を伴うケアや処置に携わることも多いです。それが仕事の大半を占めるといっても過言ではないほどです。

そのため、慣れているといっては変な言い方かもしれませんが、手際の良さには自信がつきます。だからこそ、その手技はスマートにすることはもちろん、いかに気を遣い、声をかけられるかということに患者さんの信頼はかかっていると言ってもいいでしょう。

最初の入りは特に大切です。

例えば、一番多い患者さんは、中年の男性。前立腺の疾患、まさか自分がシモのお世話をされるとは…。自尊心が強く、亭主関白な男性、無口で頑固そうなオジさん。

こちらも、ちょっと声がかけにくそうだと気が引き締まります。まるで自分の父を相手にしているようです。とはいえ、自分の父にこんなことしたくないのですが…。

それでも、そこはぐっと、笑顔を作ります。恥ずかしいことなんて重々承知の上!にこっと笑顔、優しい言葉をかけます。当たり前のことですが、こちらが緊張せず、慣れているという感じを出していくのです。

新人のとき、緊張していると、すごく不信がられたことがある。「あなたがやるの?大丈夫?」と言われたこともあります。そんなに不安そうな顔をしていたのかもしれないが、その言葉はグサッと刺さりました。

しかし、それだけ患者さんは不安でいっぱいなんだと思います。ただでさえ、世話になりたくないと思っているのだから、せめて慣れた人にやってもらいたいと思っているはずです。

緊張していることが伝わると、不安を増強させてしまいます。だからこそ、こちらも堂々と、「いつものようにやりますよ」的な雰囲気を出していくことが、信頼関係をつくれる一番のポイントになります。

日々、病気や症状に関して質問することも普段では聞きにくいし、答えにくい質問も多いです。排尿や排便について、色や性状、回数、排泄時の症状の有無など、事細かに尋ねなければならないこともあります。

「そんなこと聞くの?」と思われることも多いかもしれません。実際にいわれたわけではないけれど、言いにくそうな顔をされることもあります。だからこそ、信頼関係や話やすい雰囲気作りが重要になってきます。

泌尿器科で働き、自分の父や旦那様がそういった病気にかからないか、ということに対して関心を持つようにもなりました。

もちろん、看護師という仕事をしていると、病気の患者さんを目の当たりにし、自分の家族は大丈夫だろうかと心配することが多いのだけれど、特に泌尿器科はそう思うことが多い気がします。

なぜなら、初期段階では、症状がないことが多く、また単に加齢での変化だと思うような症状が、実は危険なサインだったりもするからです。さらに、泌尿器系の癌は、鼠径のリンパ節に近く、転移することも多いです。

冒頭に書いたように、泌尿器科に行くのが恥ずかしいと思うこともあり、なかなか病院にいかないこともあるのではないかと思うとさらに心配になります。

家族に「ちゃんと人間ドック受けてね」が看護師の口癖になるだろうけれど、泌尿器で働くとその思いが強くなるかもしれません。