現代病とも言われるうつ病は、ストレスの多い我々の社会に大きな影響を与えています。

仕事をする年代のうつ病により、人材不足となったり、学生のうつ病による不登校や引きこもり、高齢者のうつ病による自殺などが社会問題となっています。

医療職者として、人々の心のケアを行い、うつ病にならないよう対策したり、うつ病になった人の心が早期に解放されるよう関わらなければなりません。

「援助希求」という言葉を知っていますか?うつ病の対処に必要な援助能力です。

では、うつ病罹患者と関わる上で大切となる「援助希求」、そして必要な支援能力について記載します。

近年のうつ病患者の傾向

1995年代のうつ病患者さんは43万人程度と言われていましたが、現在では104万人以上と患者数の急増が伺えます。自殺者や自殺企図者も増加し、医療機関を受診されるケースもたくさんあります。

何より、早期受診、治療開始が大切ですが、うつ状態、うつ病の人々が人に助けを求められることが最も大切な能力と言えます。

真面目で責任感が強い人に多いとされるうつ病ですが、何かうまくいかなくなった時、自分の責任や能力不足と判断し、自責の念にかられる人々に罹患し易いと言われています。

また、その問題に対し自分で何とか対処しようとして頑張りすぎ、周囲に相談や助けを求めることは少ないと言われています。

その為に自分で対応できる許容範囲を越え、ストレス過剰となり、今、している事が手に付かない、うつ症状や状態の悪化を来たし、社会生活までも困難となることがあります。

そうなる前に受診、相談が必要ですが、精神科受診に対し人々は高い壁を感じ抵抗感を表します。

何より、うつ状態やうつ病の人々に知って貰いたいことは、日常生活が困難になるほど自分を追い詰める方が、周囲の人々を困らせる結果になると言う事です。

よって、人の手助けを求めて事をこなすことの方が結果的に迷惑を少なくすませることができる、また、対応等がスムーズに進む結果となる事を分かって貰いたいことです。

苦しい時に援助を求めることを「援助希求」と言い、援助希求が出来る人ほど自己管理能力が高いと言われています。

うつ病のチェック項目

●睡眠障害の有無
仕事や役割に失敗し睡眠障害が「続く」ことがあればうつ病を疑います。

●感情失禁の有無
涙が止まらない、感情の変化に対応しきれない等があればうつ病を疑います。

●胃腸の調子が悪い
胃薬には抗うつ作用成分が入っており、その内服により気がまぎれる為うつ病発見が遅れることがあります。胃薬を常用している人は、うつ病を疑いましょう。

新型のうつ病

最近の若い人々のうつの傾向として、自分要因でなく、周囲の原因からうつ病となることがあります。周囲が理解してくれないとの思い込みからやる気が出ない、頑張れないと言う状況です。

仕事中元気が無く、就業後に元気を取り戻している様子を見て周囲は、怠けて言えると判断します。

この原因として、幼少期の養育に周囲の手厚い理解があった場合があります。しかし、社会に出ると自分を必ずしも理解して貰えると言う事はなく、周囲の不理解が不快感となりやる気をなくす結果となります。

この場合、社会性を身につけるためにカウンセリングが必要です。スモールステップの原則で、小さな事を少しずつクリアしていくことで出来る事を増やしていく方法をとるよう支援します。

看護師本人の「うつ病」

特に、新人看護師には、前述の「新型のうつ」のような症状が増加しています。

特に人の命を扱う医療現場では、善悪、良し悪しがはっきりしており、叱られる、注意されることが多くあります。経験の浅い新人看護師となればチェック体勢が強く、厳しい目で見られる事があります。

それが原因でうつ病を発症してしまう事があります。

うつ病の予防

●ストレスを溜めこまない
看護師であれば、白衣を着る、脱ぐと同時に仕事について考えることを辞めましょう。考えすぎは、心の疲弊を招きます。

白衣を着たら看護師となり、白衣を脱ぐと一般の女性に戻るように意識付けましょう。

反省や振り返り、学習も必要ですが、人間の集中力は限られています。けじめを付けて生活する事でストレスを溜めこまないようにしましょう。

また、趣味や得意なこと、ストレス発散法を見つけ、存分に楽しむことでそのストレスを叩き込みましょう。

●食生活の改善
うつと栄養には密接な関係があります。セロトニンを多く含む食材は、うつ病を軽減させると言われています。

不規則生活で栄養が偏りがちな看護師でも、チーズ、牛乳などの乳製品であれば簡単に摂取できますし、朝食などに納豆やたらこ等を取り入れてトリプトファンを摂取しましょう。

また、良質なビタミンはストレスを撃退します。野菜や果物でビタミンを補給するとストレスに強い人になることができます。

●日の光をしっかりと浴びる
サーカディアンリズムを聞いたことがあるでしょう。一日のリセットは、明るい光からと言われ、人は25時間の体内時計を有し、一日24時間をどこかでリセットしなければなりません。

充分に日光に当たり、体内時計を整えるように生活しましょう。

●専門機関の受診
「なんだか気が乗らない」「集中力が無くなった」などと感じるかもしれません。そのような時は、早期の受診がお勧めです。

仕事に支障が来たすようになれば、患者さん、同僚、先輩に迷惑がかかります。

そして、自分自身悪くなってからではなかなか治らないと苦労します。早めの専門機関受診が大切です。

最後に

看護師も世の中の働く人と同じで「うつ病」を発症する危険性を秘めています。

専門家の助言を受ける「援助希求」がうつを感じる看護師にも重要な姿勢ではないでしょうか。元気に患者さんの為に働けるために、人に「助けて」とSOSを発せるようになりましょう。