「患者さんとのコミュニケーションが苦手…」
「同僚とのコミュニケーションが上手くいかない…」

看護師の数ある悩みの中でも、コミュニケーションに関する悩みを抱えているナースはとても多いです。

それもそのはず。

患者さんは緊張していたり、ナーバスになっていたり、興奮していたりするので、その一人ひとりに合わせた臨機応変なコミュニケーションが必要になります。

また、医療の現場は早さや正確性が求められ、精神的な余裕が失われがちなので、患者さんだけではなく同僚とのコミュニケーションも難しくなります。

このように、医療の現場は特殊な環境なので、コミュニケーションも一筋縄ではいきません。

コミュニケーションに苦手意識を持っている看護師は、意識的に改善するように心がけないと、苦手をどんどんこじらせてしまいます。

私は看護師歴8年。元々はコミュ力に自信があるほうではありませんでしたが、試行錯誤しながら患者さんや同僚とのコミュニケーションを自分なりに発展させてきました。

このページでは、私が考える「看護師がコミュニケーションの苦手を克服するためのヒント」をまとめています。コミュニケーションで悩んでいる看護師さんはぜひ参考にしてみてください。

看護師が患者と上手くコミュニケーションが取れないとこんな弊害が…

患者と医師の信頼関係が築けない

看護師が患者と上手くコミュニケーションが取れないと、医師に伝えなければならない患者の情報量や質が乏しくなり、医師との連携が上手くいかなくなります。

その結果、治療に支障をきたすことになり、患者と医師との信頼関係も築けなくなります。そして、それが病院への不信感にも繋がってしまいます。

患者の本音を知ることが出来ない

患者さんは自分の病気の心配以外にも、どんな検査だろう…治療は怖いわ…家族はどうしているだろう…仕事が溜まってるかも…などと様々なことを考えています。

そのような心配事を打ち明けてもらえないことで、看護目標に挙げることが出来ないし、患者さんの気持ちを楽にしてあげるような声がけが出来なくなってしまいます。

スムーズに検査、治療が出来ない

検査や治療のための説明に、患者さんが耳を傾けてくれないかもしれません。

いくら頑張って説明したとしても、聞いてもらえてないのですから、禁食と言ったのにご飯を食べてしまった…歩行禁止と言ったのに歩いてしまったなんてことになります。

これでは患者さんがいくら早く退院したくても、出来なくなってしまいますよね。

患者さんとのコミュニケーションの難しさを痛感した出来事

患者さんは、いきなり心のモヤモヤをぶつけてきます。はっきり言って重いです。答え方が見つからない時もあります。

私の経験の中でコミュケーションの難しさを感じた場面をいくつか紹介したいと思います。

●場面1
深夜のラウンドの時、ターミナルの50代の男性患者さんが、「こんな僕でも、心が折れてしまうんだよ」と泣くのです。

気丈に振舞っていた患者さんだっただけに、かけるべき言葉が見つかりませんでした。

●場面2
「手術しないと余命1年と宣告されたけど、君ならどうする?」と男性患者さんから質問されました。

「先生の言う通りにします」と答えたら「人のことだと思って」と叱られました。いいかげんさが丸見えだったのかもしれません。

●場面3
点滴しようとしたら、患者さんから「これ、毒入ってないか?」と言われました。”点滴ボトルに異物混入事件”の後だったのです。

「人聞き悪い事を言わないでください」と言ってしまいなんとなく後味が悪い思いでした。

看護師が患者と上手くコミュニケーションを取るためのコツ

深く考え込まない

周りの看護師さんを見てください。無口な方もいます。お話が上手な方ばかりではありません。

自分だけが患者さんと上手くやれていないとか、コミュニケーションが苦手だから、看護師には向いていないなどと悩むことはありません。

「今日は、患者さんと上手く話せなかった」と思っても、職場から一歩出たら考えないことです。そして明日また明るく患者さんに声をかけてみてください。

苦手な会話は笑顔でカバー

「今日は何を話そう」とラウンド前から悩んでいませんか?そんなことは考える必要はありません。特別な事を話そうと思うから悩むのです。明るい挨拶で良いと思います。

笑顔が基本です。病室に入ってくるだけで気持ちがいい印象の看護師さんていますよね。

そして笑顔にプラスして声のトーン、視線、身振り、手振りなどに気をつけたら、患者さんからも良い印象を持たれると思います。

焦らず、じっくり。地道に経験を積む

経験を積むといろいろな患者さんと接したり、様々な病気を見ているので患者さんとも億劫なく会話が出来るようになります。

「この花、素敵ですね」「おうちの方がいらしていましたね」などと愛想も上手になったりします。

「もっと上手にコミュニケーションを取らないと!」という焦りは身振りや言葉に現れてしまいがちです。そうなると、さらに上手くいかなくなって苦手意識がどんどん強くなってしまいます。

看護師がコミュニケーションのスキルを伸ばしていくときは、「焦らずじっくり」という気持ちが大切です。

新人看護師が患者とのコミュニケーションを苦手に感じたときにやるべきこと

新人看護師の中には、「患者とのコミュニケーション」に苦手意識を感じていたり、仕事を辞めたくなるほど嫌になっている人が多いんじゃないでしょうか。

まだまだ経験が少ないですからね。コレばっかりは仕方がないことです。

私も新人看護師の時代は「早く年をとってコミュ力抜群のおばちゃん看護師になりたい…」なんて思ったものです(笑)

そうなるためには、一つひとつ目の前の課題を解決していくしかありません。

新人看護師ならではのコミュニケーション術をいくつか紹介するので、参考にしてみてください。

孫や娘のような存在になってかわいがってもらう

これは年上の人との人間関係において1番有効な方法です。新人看護師の特権とも言えます。

外来でも病棟でも、患者さんは体の不調に不安を抱えています。家族と離れて淋しさや心細さを感じている方も。

そんな時に1番身近な存在になれるのが看護師です。新人看護師は若さや初々しさを売りに、患者さん達の家族の代役を担うことだって出来るのです。

看護師だからと言って「与える側」だと思うのはやめましょう。相手は何十年も多く生きてきた先輩達。実は自分が何かをしてあげるというより、いろんなことを教えてもらう立場なのです。

まず患者さんの情報収集をしましょう。仕事・地域・家族の役割・育った環境・趣味や好きなこと。疾病だけを見るのではなく、全体像を把握することで会話の糸口が広がるはずです。

とは言え忙しい業務の合間に患者さんのところに足を運ぶのは難しいですよね。学生の実習のようにはいきません。

日々の業務の中で、介助中や処置・検温の間にベッドサイドに腰を下ろす習慣をつけましょう。(忙しく動き回っちゃうんですよね。)

ただ話を聞いてくれる存在、患者さんにはそれが何より嬉しいのです。

先輩看護師と仲良くなる

患者さんとのコミュニケーションなのに、なぜ先輩?と思う人もいるでしょう。でもこれ、実は1番の近道です!

新人看護師よりも患者さんとの付き合いが長い先輩方。その分患者さんも心を開いています。そんな先輩ナースに可愛がってもらえればしめたものです。

患者さん達は、結構見ています。先輩看護師と信頼関係が築けていれば、自然に患者さんからも信頼されるのです。

「あの子頑張ってるから」と先輩の口からフォローしてもらえると、とても助かりますしね。私は何度もそういう経験をしました。

先輩と仲良くなるには、一緒に飲みに行くのが一番早いです。素直に話しを聞くこと、正直に悩みを打ち明けることを心がけましょう。素直な新人看護師は、大抵助けてもらえます(笑)

そして他のスタッフから好かれている先輩と仲良くなるのが理想。そうすれば一遍に仲間が増えますからね。

誘ってもらえる機会があったら是非活用しましょう!とは言えお子さんがいる先輩や看護師長さんクラスになると、なかなかチャンスも少ないもの。

夜勤中は日勤よりスタッフの人数も少なく親密な話しがしやすいですから、話しかけてみてくださいね。後輩から相談されて嫌な先輩はいないと思いますよ!

出来るフリをしないで、応援してもらう

やっと勝ち取った看護師免許。「私は看護師なんだ!」と誇りを持つのは素晴らしいことです。

でも、意気込んで配属先に向かったこの数カ月。思ったより出来ないことがいっぱいで自信をなくしていませんか?それなのにそんな思いを隠して「私は看護師!」と、無意識のうちに上から目線になってしまうことも。

患者さんに信頼してほしくて、一人前を装うのはやめましょう。必死に鎧をまとっている人間に、人は心を開かないものです。

新人看護師が一人前に看護出来ないことなんて、当たり前。皆わかってくれているのです。

大事なのは成長しようという姿勢です。出来るフリをして1人で突っ張っていては、助けたくても助けようがないのです。

出来ない自分を認めてあげることから始めましょう。どんなベテラン看護師だって、何も出来ない新人時代があったんです。

患者さんにも素直になることが大切です。失敗してしまったら正直に謝ることも。そういう姿勢の人を、誰しも応援したくなるものです。

プロセスレコードをとってみる

学生の時にさんざんやらされた、アレです。ちょっと面倒な作業ですが、やはりコミュニケーションの振り返りには最適なもの。

自分の言動を振り返ってみて「どうしてこう言ってしまったんだろう?」と深く考察します。

コミュニケーションが上手くいかなかったとき、大抵の原因はこうです。

  • 患者さんへの苦手意識
  • 自分が傷付くのを恐れての自己防衛
  • 楽をしたいズルをしたい気持ち

けれど、自分のこういった本心と向き合うことは簡単じゃないんですよね。

それでも、自分の本心と向き合わない間は自分本位のコミュニケーションしかとれないと思ってください。

それこそ、尊敬出来る先輩に相談するチャンス。見たくない自分の本心を見るのは辛いです。でも大丈夫。皆そうなのです。いっぱい泣いてください。素直に泣けたら、あとは自然に成長していくだけです。

そういう新人看護師は、患者さんにとっても先輩看護師にとってもかわいいものですよ。

看護師が同僚とのコミュニケーションを円滑にするためのコツ

先にもお話したように、医療の現場は精神的にも体力的にもハードな場面が多く、そのような余裕がない状態でのスタッフ同士のコミュニケーションはギクシャクしたものになりがちです。

看護師が同僚と上手くコミュニケーション取っていくためにはどうすればよいのか。いくつかポイントを紹介します。

医者はとりあえず持ち上げておく

それはそれは、重い漬物石です。なかなか上がりませんし、頑張って上げようとしている自分の気も重い…けれど、医療の現場では医師である彼らがルールです。

何があっても上手に付き合わないと仕事になりませんし、患者さんに不利益があってはいけません。

時には下から、時には少し馴れ馴れしく、色んな方法で持ち上げるべくアプローチしてみましょう。

心配することはありません。医者はたくさんの患者さんを抱え、山程のスタッフと働いていますので個々のケースに関してこちらより寛容です。邪険にされたら後ろでアカンベーしつつ、次回への傾向と対策とし、上手くいって思い通りの指示を貰えたらこちらの勝ちです。

上手く手玉に取って、もとい、上手くコミュニケーションを取って、患者さんのより良い療養環境に繋げましょう。

無理にコミュニケーションを取ろうとしない

同僚の看護師に対するコミュニケーションの苦手意識ほど面倒なものはありませんね。規模の大きな病棟ならまだしも、限られた人数で週4、5日は同じメンバーで働かなくてはならない場合、そこはもう職場という名の針地獄です。

避けたくても業務連絡があり、明日の我が身を考えると苦手意識を露骨にもできない。特に先輩や同期が相手だとなおさらですね。

毎日顔を合わせる相手に無理をしても続きません。無理からくる空回りの無限ループに堕ちてはいけません。

挨拶、必要最低限の業務連絡、その繰り返しで十分です。

無理をし過ぎず日々の仕事や人々と向き合ううち、ある日ふと以前より働きやすくなっている、周囲とコミュニケーション取りやすくなっていることに気付く日が来るはず。

自分は人付き合いが苦手…と思う方ほど、同じところで長く勤めることをお勧めします。時間をかけて気長に、自分の働きやすい環境を作っていけるといいですね。

看護師としてのコミュニケーション能力に限界を感じたときは

口数が少なくて済む部署への異動願いを出す

病院の部署は、病棟ばかりではありません。話すのがやっぱり苦手だという方は、患者さんとのコミュニケーションが少なくてすむ部署もあります。

内視鏡室や手術室などがそうですね。外来も病棟ほど多くは話しませんから良いかもしれません。

苦手意識を持って萎縮しているより、自分の良い面が発揮できる部署で働くほうが良いですね。

病院以外の職場への転職も視野に

どうしても患者さんとのコミュニケーションが辛いという場合は、自分の気持ちが楽だと思える場所へ転職するという方法もあります。

例えば、クリニックであれば、検査、処置の説明は必要ですが、病棟などと比べれば軽いコミュニケーションですみます。経験した事のある科なら、自信を持って患者さんに接することもできますね。

また、産業看護師や治験コーディネーターなどの企業看護師の仕事は、基本的に健康体の人と関わることになるので「患者を相手にする」という感覚が薄く、医療の現場ならではのコミュニケーションの難しさを感じにくいと思います。

このように、病院以外に転職することで、苦手なことが克服できたり軽減できたりする可能性があります。選択肢の一つとして検討してみてください。

「聴く看護」の重要性 ~がん患者とのコミュニケーションの中で~

多忙を極める看護のお仕事ですが、患者さんの心を癒すケアがどれほどに行えているでしょうか。

安楽、リラックス、思いの表出など、これらストレスの消失に関わるケアは、不安や苦痛を抱える患者さんに大きな力を与えるケアです。

しかし、現状の看護現場と言えば、日々の業務、検査、処置に手いっぱいとなり、一人一人の患者さんにじっくりとコミュニケーションを取る時間が少ないように思います。

闘病する患者さんの力が取り戻せる聴ける看護師になりたいと感じませんか?

では、「聴く看護」「聴ける看護」とはどのような看護でしょうか。

まず大切なことは、患者さんと看護師という関係ですが、その壁をとっぱらい、一人の人間として対話することです。

その空間が一人の人間として存在し、自分が自分として話し、コントロールできるように支援します。

話をすることで、その患者さんは孤独感や不安感を和らげ希望を取り戻せます。

看護師は、ただその思いに耳を傾け、相槌や理解しようとする雰囲気を持って対応し、自分の意見を言うわけでなくただひたすら聴くことに徹します。

それは、患者さんのみでなく、心を痛める患者さんの家族や関係者にも適応し、その方に関わる全ての人々の心痛に対応します。

アドバイスや指導を行う看護師の仕事を一時中断して、ただひたすら訴えに耳を傾けます。

がん患者さんとの関わりの中で

がん患者さんの意思決定は、疾患の衝撃と恐怖、たくさんの選択肢もある為に困難を極めます。

しかし、医療職者は、「どうしますか?」と迫ります。

患者さんは、どうすべきか考えなければならないことを充分に分かっています。そんな心境でないということを医療職者は分かっていなければなりません。

患者さんは、聴いてほしいのです。

何を考え、何を不安に感じ、どうすれば良いのか、自分の選択は間違っていないのか、多くの心をにぎわす事柄を聴いてほしいのです。

そして、話して理解をして貰い、自分の意思についてもう一度考えてみて、自分の意思を固めていくのです。

話して、話して、自分を納得させ今後の方向性を決めていくのが告知を受けた患者さんなのです。

看護師は、医療職、専門職者としてベストな方法を指導、教育、導き出すのではなく、患者さん本人がベストと考えることを引き出す支援やコミュニケーションを行うのです。

そうすることで、患者さんは、自分の決めた道を歩み出せ、治療に参加できるようになるのです。

これからがんという疾患は増えてくるでしょう。高齢化、食の欧米化、生活習慣の変化からそのような時代が来ます。

2人に一人ががんを経験する時代が来るとも言われています。

医療の進歩により、癌は不治の病ではなく治る病気になっています。早期発見、早期治療開始がカギとなります。

また、治療開始が早いと、その治療の選択肢も多くなります。

生活の質も落とさず、自分らしさを保った治療が出来るでしょう。

医療職者として、がんを宣告された患者さんがショックを受け、前を向けなくなった時、そっと目を向け、耳を傾け、その言葉を聴けることが大切ではないでしょうか。

がん告知後のコミュニケーション

告知を受けると、患者さんは死を連想します。死を連想した患者さんは、元気に振舞おうとしたり、本当に衝撃に耐えられなくなったり、様々な表出をします。

どのような対応を患者さんがしたとしても、看護師は患者さんに付き添い、付き合う気持ちで関わる必要があります。

患者さんが今後、どのような選択をしても、寄り添い、人生と向き合い、信頼関係に元治療が継続できるよう支援しなければなりません。

看護師自身、落ち込む患者さんと付き合う事に辛さ、しんどさを感じることがあります。

しかし、患者さんは心を寄せられる居場所を求めています。

やり場のない気持をしっかりと受け止める看護が必要です。

がん告知後の患者さんは、様々な事を考えます。予後、死後、これからの生き方、治療方針など心を巡らせます。

そして、告知を受けた患者さんの周囲の人々の変化に気付きます。異様に優しくなったり、腫れものを扱うように大切にし始めます。

患者さんの本音は、いつも通り変わらない接し方をしてほしいと感じています。

私の経験を言うと、「あなたが来てくれると普通の人に戻った気がする」と言われたことがあります。

私の性格上、同情やオブラートに包んだような対話ができません。思った事を思ったように話しますし、そこから対話を生みます。

周囲の人々や看護師は、言葉を選びながら慎重に話してくるけれど、あなたは自分の思いを率直に話してくれる。

そんな人と人との会話がしたい、重病を忘れるような会話がしたいと言われたことがあります。

患者さんは、がんと知らされても一人の人間として、人と人とのつながりやコミュニケーションを求めています。大切に、愛護的に「がん、大変ですね、かわいそう」と言われたいと思っていません。

これまで通りの関係で、変わらず日々を送りたいと考えています。

患者さんにより、性格や思い、どのように対応してほしいかと考えているかは違いますが、このようなケースがある事も知っておいてほしいところです。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。

このページの中から「コミュニケーション上達のヒント」を見出してもらえていたら嬉しいです。

でも、もしコミュケーションがうまくいかなくても、あまり気にしないことも大切だと思います。コミュニケーション=人間関係ではないからです。

会話が盛り上がるからって良い看護師では決してないですよね。口下手な人だっています。緊張してしまいがちな人だっています。でもそこだけで人は判断されません。

私は、大切なのは誠実さだと思っています。少ない会話の中からもそれは伝わるもの。人は案外、ちゃんと見てくれています。

小さな信頼関係を積み重ねていくつもりで、日々誠実に看護していってほしいなと思います。

頑張ってくださいね!