他の診療科に比べ、より様々な特徴がある「精神科」。

クリニックも同様で、他の診療科クリニックに比べ、様々な特徴があります。

そこで今回は、精神科クリニックで働きたい看護師さんへ、求人情報を見る際にチェックしておきたいポイント、そして転職を成功させるための秘訣をご紹介します!

精神科クリニックの仕事内容

精神科クリニックでは、看護師としての仕事内容が他のクリニックと異なる部分があります。

では、精神科クリニック特有の仕事内容には、どういったものがあげられるでしょうか?

患者さんの状況を見極め、スムーズに診察が受けられるようにフォロー

精神科クリニックを受診する患者さんは、たとえ病名は同じであっても、対応方法は一人ひとり違います。

病気ゆえに強いこだわりを持っている方や、ルーチン通りに物事が進まないと混乱してしまう方などがいらっしゃるため、看護師として患者さんの病名はもちろんのこと、「この方はどんな対応をすべきなのか」を見極め、スムーズに診察が受けられるようにフォローすること、それが精神科クリニックの看護師として大切な仕事の一つです。

医療処置もあるが機会はかなり少ない

精神科で働く上での特徴として、医療処置が少ないということがあげられますが、それはクリニックでも同様です。

精神科の病棟では、身体的疾患を持つ患者さんもいることから、点滴や採血、注射を行う機会がありますが、クリニックではあくまで精神科疾患のみを対象とするため、身体的疾患を扱うことはまずなく、それに伴って医療処置を行う機会はほとんどありません。

「処置に自信ないから、そういった機会がない職場へ転職したい」という看護師さんにとって、精神科クリニックは魅力的な職場だといえます。

受診および内服を自己中断しないよう、患者さんをフォローする

精神科クリニックでは比較的症状が落ち着いている方が多い、とご紹介しましたが、一方で注意しなくてはいけないのが、「医師は治療継続を指示していたにも関わらず、自己中断してしまった患者さんが、症状が悪化して再受診してきた場合」です。

精神科における通院の自己中断は決して珍しいことではない一方、適切な内服管理ができないとそれまで軽快していた症状が一気に進行してしまい、重篤な症状になってしまうリスクがあります。

精神科クリニックの看護師として、「通院の大切さ」そして「継続して薬を内服してもらうことの大切さ」を患者さんに理解していただくことが何より大切となります。

精神科クリニックの特徴

精神科クリニックには、内科などのクリニックとは異なる、様々な特徴があります。

では、どういった点が特徴として挙げられるのでしょうか?

予約患者が多く、時間的の余裕あり

精神科クリニックでは、ほとんどが「予約制」を導入しています。

精神科では、患者さんと丁寧に問診を行い、症状を判断する必要があります。

そのために診察は予約制とし、「時間がなくて患者さんから聞きたい話が聞けなかった」という状態を避けるようにしています。

よって看護師としても患者さんが次から次へとやってきて対応のために走り回る、ということはなく、余裕をもって働くことができます。

比較的症状が落ち着いている方が多い

精神科病棟や精神科の単科病院では、精神科疾患を持つ患者さんを広く対象としているため、様々な症例の患者さんを看護する必要があります。

中にはスタッフに対して症状の進行から暴力・暴言をふるう方もいます。

一方、精神科クリニックでは基本的に症状が落ち着いており、社会で生活できている方を対象としているため、暴力行為に合う確率は低くなります。

精神科の中でも、この点はクリニックの大きな特徴といえます。

周囲との連携も

精神科クリニックを受診している患者さんの中には、日常生活において様々な支援が必要な方もいます。

そのため、患者さんがスムーズに日常生活を送れるよう、地域の生活支援機関と連携し、お互いに情報交換をすることがあります。

また、症状が悪化し入院加療が必要と判断された場合には、病院との連携も重要となる他、患者さんがスムーズに入院加療へ移行できるよう、ご本人の他にご家族へも協力を依頼するのも、精神科クリニックの看護師が担うケースがあります。

精神疾患を抱えた患者さんがスムーズに日常生活を送れるよう、サポートする一員としての役割が、期待されているのです。

精神科クリニックへ転職することで見につくスキル

精神科クリニックへ転職すると、「必要な技術はほとんどないから、新たに身に着くスキルはほとんどなく、看護師として成長できない」と考えてしまっていませんか?それは大きな間違いです。

精神科クリニックだからこそ身につくスキルも、たくさんあるんです。

では、精神科クリニックへ転職すると、どういったスキルが身につくのでしょうか?

患者を含め、家族全体を「適度な距離感」で支えるスキル

精神科クリニックでは、精神科病院に比べると患者さん一人ひとりあたりにかけられる時間は短く、より短時間で患者さんの状況を見極め、適切な対応を取る必要があります。

一方で、あまりに感情移入してしまうと、患者さんにあらぬ誤解を与えてしまう恐れがあり、業務自体にも支障をきたす恐れがあります。

そのため、精神科クリニックへ入職することで、「患者さんとの適度な距離感」を身につけることが期待できます。

「患者さんに寄り添いたいけれど、かえってその気持ちが患者さんにとって負担になってしまっているかもしれない」等、患者さんとの距離感がつかめずに悩んでいる看護師さんにとって、このスキルを身に着けることができれば、看護師としてより大きく成長できるのではないでしょうか。

感情をコントロールできる

精神科クリニックに通院している患者さんは、みなさん精神疾患を抱えています。

中には症状からスタッフに対して理不尽にクレームをつけてくる方もいますし、一方的にご自身の主張を繰り返されてしまうこともあります。

精神科クリニックの看護師として、こういった患者さんがいても決して自分の感情は表に出さず、プロとして冷静に対応することが求められます。

仕事上こういった場面を多く経験することで、感情をコントロールできるスキルが身につくのです。

ちょっとの変化から患者さんの状態を見極める観察力

精神疾患を持つ患者さんの中には、自分の不調を言葉にして説明することが難しい方もいます。

また、ご自身でうまく感情をコントロールできず、突然怒り出してしまう、反対に泣き出してしまう、ということもあります。

はたから見るとこういった行動は突然に起こっているように思われがちですが、これらの症状が出る前に、患者さんの多くは何らかのサインを出しているケースがほとんどです。

手が小刻みに震えている、瞬きが多くなる、落ち着きがなくなっている等、患者さんの変化を敏感に感じ取り、患者さんが今どういった状態なのかを見極める観察力、これは精神科クリニックでは重要なスキルであり、働くことで見につくスキルとも言えます。

キャリアアップするために取得できる資格

精神科クリニックの看護師としてよりスキルアップするためには、以下のような資格が主にあげられます。

精神科認定看護師

看護師のスキルアップとして一般的な「認定看護師」。

精神科にも、「精神科認定看護師」があり、精神科看護のスキルアップとしてもおすすめの資格です。

認定看護師の資格を取得するためには、認定学校への半年間のスクーリングおよび認定試験に合格しなくてはならず、難易度は高くなっていますが、苦労して取得する価値は十分にあります。

日本精神科医学会認定看護師

精神科には、日本看護協会が主催している認定看護師の他に、日本精神科医学会が主催している、「日本精神科医学界認定看護師」という資格があります。

この資格は、書類選考後、筆記試験(選択問題・小論文)および面接に合格することで取得できる資格であり、スクーリングが必要な精神科認定看護師に比べると、難易度はやや低くなっています。

クリニックでは看護師の人数が少ない分、こういった資格を取得していることは転職等にも非常に有利となり、採用される可能性は飛躍的に上がる他、より募集条件の良い精神科クリニックへ転職できるチャンスにもなります。

どちらの資格も、一定期間の精神科看護師としての経験がなければ受験することはできませんが、精神科クリニックへ転職した後、今後のキャリアアップのために、ぜひ取得を検討していただきたい資格となります。

精神科クリニックへの転職、ここが落とし穴

精神科クリニックについてここまで様々な視点からご紹介してきました。

数ある求人から選び出し、募集要件を隅々までチェックしたにも関わらず、無事に採用されて働き出してから、「こんなはずじゃなかった」と思ってしまう精神科クリニックの看護師さんも、少なからずいらっしゃいます。

では、どういった点が想像と違ったのでしょうか?ここでは「転職後の落とし穴」について、ご紹介します。

クリニック=症状が軽い方のみとは限らない

精神科クリニック=患者さんはみんな症状が軽い、と思ってしまっていませんか?

確かに精神科クリニックでは、病院や病棟に比べると、症状が落ち着いている方が比較的多い医療機関です。

一方で、それが患者さん全員に当てはまる、とは限りません。

中には自己中断によって症状が強く出現する方がいる他、症状に波がある方もいらっしゃいます。

「精神科クリニックは楽だ」と楽観的に考えていると、痛い目にあってしまうかもしれません。

看護師側が精神的に辛くなってしまうことも

精神科クリニックでは、日々精神疾患をお持ちの患者さんを対象としています。

看護師さんの中には、仕事とはいえそういった方々と毎日接していることで、徐々に自分自身の精神的な健康を保てなくなり、辛くなってしまう方もいらっしゃいます。

「この発言は病気からくるもので、決して本心で言っているものではない」と頭ではわかっているつもりでも、何回も繰り返し聞いているうちに精神的に疲れてしまう方が残念ながらいる、というのも精神科クリニックとしての特徴であり、転職にあたっては注意しなくてはいけない点となります。

やりがいを第一に求めるならば、クリニックは対象外となる恐れも

精神科クリニックでは、予約制が多く、時間も比較的余裕があります。

そのため、精神科クリニックへ転職した後、「看護師としてのやりがいを見いだせない」と悩む看護師さんもいます。

残業がなく、カレンダ―通りの休みがとりやすいということで、精神科クリニックは主に家庭がある方や子育て中の看護師さんに人気の募集条件である一方、「仕事にもっとやりがいがほしい」と考えている方にとっては、少し物足りなさを感じてしまうリスクがあります。

もし仕事に対して「大変なのは嫌だけど、やりがいを感じられる職場で働きたい」と考えている場合には、精神科クリニック以外に複数の候補も検討しておくことをお勧めします。

転職の際、必ずチェックしたいのはココ

精神科クリニックへ転職を希望する場合、チェックしていただきたいポイントをご紹介します!

通院している患者さんの病名および割合

数ある求人情報をから精神科クリニックの募集を選ぶ際、まず確認していただきたいのが、通院している患者さんにはどういった疾患が多いのか、という点です。

精神科クリニックと一言でいっても、経営している医師の得意分野によって、患者さんのタイプは大きく異なります。

中には小児精神や老年精神といったように、より専門性を強く出している精神科クリニックへ応募する場合、小児精神ならば、発達障害のお子さんが多く来院されますし、老年精神ならば、様々な認知症を持つお年を召した方が来院されるため、という特徴があります。

就職後、どういった仕事がメインになるのかを想定するためにも、患者さんの病名および割合の把握は非常に重要となります。

この部分は求人情報や募集要項には記載されていない部分なので、把握するためには転職会社などを使用し、情報を収集されることをお勧めします。

クリニックが併設している施設の有無

精神科クリニックの中には、デイサービスや作業所など、精神疾患を持つ方を対象とした施設を併設していることがあります。

こういった施設がある場合、精神科クリニックの看護師が看護業務を兼務しなくてはいけないこともあり、業務内容が多くなっている可能性があります。

兼務できなければ採用を見送る、という条件を提示しているクリニックもあるため、就職にあたってはこういった施設の有無、またある場合には兼務しなくてはいけないことはあるのかを、採用試験を受ける前にぜひ確認しておきましょう。

職場で働くナースの事情

精神科クリニックは、精神疾患を抱えた患者さんを対象としています。

中には症状ゆえに患者さんから理不尽な対応をされることもあります。

こうした時、大切なのは周囲のスタッフとの連携です。

特定の看護師がターゲットとならないよう、看護師全体でフォローしあうとともに、支え合うことが重要となる精神科クリニックにおいて、職場内での人間関係は非常に重要です。

人間関係は看護師が転職先を選ぶ上で元々重要なポイントとして挙げられることが多いですが、特に精神科の場合は、「職員同士でフォローし、支え合う」ことが重要となるため、見学や面接時などで、「あ、この職場は人間関係がよさそうだ」と感じられる職場へ転職されることを、強くお勧めします。

最後に

精神科クリニックは、それまで精神科を経験したことない方にとっては、未知の領域であり、不安も多いかと思います。

一方で、精神科クリニックは残業がなく家庭との両立がしやすいこと、そして精神科で働くことで人間関係について学ぶことができ、それを日常生活でも生かすことができる、というメリットがあります。

「患者さん一人ひとりと関われる仕事をしたい」「医療的処置だけでなく、患者さんの心に寄り添った看護をしたい」と考えている方へ、精神科クリニックはお勧めの転職先といえるのではないでしょうか。