労働基準法が規定する妊娠中の就業制限

産前の休業

第65条においては妊娠中の女性を労働者として雇用している事業者へ向けて、就業の制限に関する規定があります。出産予定日より6週間前、双子など複数の赤ちゃんがお腹にいる場合では14週間前より、休業の申し出があれば就業させてはいけないとされています。

夜勤の免除

第66条の第3項で、妊娠している間について深夜勤務を免除することが規定されています。夜勤もあって1日の生活時間が落ち着かないと、妊娠中の身体もより不安定な状態になりかねません。

作業の転換

第65条の第3項では、妊娠している女性から希望があった場合、事業者は別に軽易な内容の仕事へ従事する業務を変更しなければならないとされています。やはり妊娠中は仕事に伴って身体へかかる負荷が早産、流産といったリスクにもつながる懸念があるために定められたものです。

■上記の制限は本人次第?

あくまでも本人の希望にもとづくのですが、業務の軽減といった希望があれば職場では配置転換などの措置をとらなければならないのです。特に重いものを運ぶ、階段を昇り降りする回数が多いなど身体の負担になるところもある仕事ですと軽易作業転換が適用されることになります。

危険有害業務の制限

第64条の第3項が根拠となっています。妊娠中に重い物を扱う仕事や有害ガスが出る場所での仕事など、有害となり得る業務はしていけないことになっています。

  • 重量物を取り扱う業務
  • 患者さんの移動や医療機器の運搬などが該当し、それぞれ短い時間であっても母体や赤ちゃんへの影響に注意しなければなりません。妊娠中に従事することで子宮下垂などにつながるリスクがあり、健康を損なうだけでなく出産へ障害がともなってしまうことも懸念されるのです。

  • 有害ガスが出る場所での業務
  • 看護師としてそれほど該当するケースはありませんが、喫煙スペースの付近やたばこの煙が入り込む可能性もある場所などが当てはまるでしょう。医療機関は大体の場合で禁煙となっているものの喫煙所などを設けている場合には、付近での仕事が免除されるよう希望することができ、職場でも請求に対して応じるよう義務づけられています。

病棟から外来への転換

病棟で夜勤も含めた交替制の勤務をしている場合に、夜勤がない外来勤務への配置転換がなされるケースは多く見られます。ただ法律上は実質的な業務軽減になっていなければならないと定められていますが、看護師ですと負担の軽減にあたる業務ということで判断することに難しいところもあるのです。

また、外来では患者さんが次々に訪れることで病棟以上に身体を動かさなければならないような場合も少なからずあります。職場によって必ずしも外来の仕事が楽ではないということもあり、逆に慣れない仕事からストレスを受けて体調不良へ至り逆効果になってしまうといった事例もあります。

フォローの重要性

単純に配置を換えるということではなく、職場で協力する体制を整えることが大きな助けになります。症状の重い患者さんや手術への対応、移動の補助など負担が大きい業務について免除するといったように話し合いのもと全体でサポートすることも大切です。

認められている権利

看護師が働いている職場では、慢性的な人員不足が問題になっています。そのため、職場へ迷惑をかけてしまうという考えが先行しがちになりますが、妊娠中に業務を拒否することは当たり前のこととして許されていますから職場からの理解を得ることが大切です。

法律にかかわらずとも…

特に高齢者介護施設などですと、入居者の居室で汚物の臭いがきついといったケースなどもあります。有害ガスというわけではありませんが、妊娠中の体調変化によって不快感を覚えるということであれば居室へ入ることができないといったことも周囲から理解してもらわなければなりません。