摂食・嚥下障害看護認定看護師とは

役割

摂食・嚥下障害看護認定看護師はまず摂食・嚥下障害の原因についてアセスメントし、どのようにサポートするのかを明確にします。そして、個人に合った適切な嚥下訓練や食事についてのプランを立て患者さんや家族に実践、指導を行います。さらに栄養低下や窒息、脱水、誤嚥性肺炎などを予防します。

求められる専門知識や技術

脳神経、筋骨格系フィジカル・アセスメントのほか、摂食・嚥下機能評価法を使用して、摂食・嚥下機能を評価する知識がまず求められます。また摂食・嚥下障害の病態について理解するために、摂食・嚥下障害の原因に関する知識を持っていることも大切です。

さらに、適切な摂食・嚥下訓練を選んで安全に実施し患者さんの呼吸や栄養、体液平衡状態について評価することのできる技術が必要です。誤嚥性肺炎や窒息、栄養の低下、脱水などの予防と摂食・嚥下障害の悪化防止などのリスク管理能力も欠かすことができません。

これ以外に、患者さんや家族へ対する摂食・嚥下訓練の指導や医師、歯科医師、作業療法士、栄養士などといったスタッフと連携してチーム医療を進めていくコミュニケーションも必要です。

摂食・嚥下障害看護認定看護師になるには

資格取得方法

まずは、日本の看護師免許を所持していることが条件となります。そして、看護師免許を取得してからの実務研修が通算で5年以上あり、そのうち3年以上は摂食・嚥下障害看護分野であることが求められます。

加えて、摂食・嚥下障害の患者さんが多い保健医療福祉施設か在宅ケアでの看護経験が通算で3年以上あり、摂食・嚥下障害のある患者さんを5例以上看護した実績があることもそれぞれ必要です。現在は、摂食・嚥下障害患者さんを看護する現場にいることが推奨されています。

摂食・嚥下障害看護認定看護師教育機関で6ヶ月、615時間以上の学習を経て認定審査に臨み、筆記試験で行われる認定審査に合格すると、摂食・嚥下障害看護認定看護師認定証が交付されます。

認定後は、5年ごとに更新する必要があります。摂食・嚥下障害看護認定看護師のコースが現在設定されている教育機関は茨城県立医療大学・地域貢献研究センター、愛知県看護協会、日本赤十字広島看護大学・ヒューマンケアリングセンターです。

資格保有者数

439人

難易度・合格率

ここ数年の合格率は90%台になっていて高めですが、この数字は教育課程を終えた人のものであり、教育機関の入学試験に合格しないというケースもありますから、難易度は高いということができるでしょう。

摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格取得後

活躍できる職場

現在の摂食・嚥下障害看護認定看護師が所属する施設については、95%が病院です。そのうちおよそ5割ががん診療提携拠点病院、3割が救急センター、2割が特定機能病院となっています。所属部署に関しては病棟が85%、外来が4%、残りがそのほかの部署という割合になっています。

摂食・嚥下障害看護認定看護師の多い病院としては、3名が勤務する蘇生厚生会松浪総合病院、愛知県がんセンター中央病院、茨城県立医療大学病院、大阪府立急性期・総合医療センターなどがあります。東名厚木病院摂食嚥下療法部、杏林大学医学部付属病院摂食嚥下センターなどの摂食・嚥下専門部門、脳卒中センターなどをはじめとして、病棟も含めていろいろな部門での活躍が見込まれます。

将来性

日本の高齢化は、これからもますます加速されると予想されます。高齢になっても病気になっても、口から物を食べたいという願いは誰でも持っているものです。近年はクオリティライフの観点から、加齢や疾病などで摂食・嚥下機能に問題がある人に対して専門的で高度なケアをすることのできる看護師が求められています。

しかしながら全国で400名強ということで、摂食・嚥下障害看護認定看護師の数は決して多いということのできない現状となっています。今後は医療機関だけでなく介護施設や個人宅など、幅広い場所で活躍することのできる可能性もあります。摂食・嚥下障害看護認定看護師の必要性は、さらに高まっていくでしょう。