乳がん看護認定看護師とは

役割

乳がん看護認定看護師の役割は、乳がん治療に関わる看護全般に及びます。年間4万人の人が乳がんと診断されている昨今ですが、近年では、有効な検査法やさまざまな治療方法が確立され、乳がんは決して治すことのできないがんではなくなってきています。しかし同時に、乳がん治療には、患者やその家族が向き合わなければならない問題も、たくさんあります。

乳房は女性のセクシャル的な面で、重要なもののひとつであることから、時に治療のために切除しなければならない選択は、患者自身だけでなく、そのパートナーや家族にも影響を及ぼします。

また、長期に渡っての経過観察の期間、患者や家族は、転移や再発という不安や心配を抱えがなら、治療にあたる必要があります。患者や家族が乳がんと向き合いながら治療や療養生活を送ることができるよう、実践的な治療や看護だけでなく、心理面も含めて包括的にサポートするのが、乳がん看護認定看護師に課されている重要な役割のひとつということができるでしょう。

また、乳がんは、チームを組んでその治療にあったっていく必要があります。乳がん看護認定看護師は、チームの中心的な存在となって、適切な治療が行えるよう指導、相談、調整していく役割も担っています。そのほかにも、乳がんの早期発見、早期治療につなげる一般への啓蒙活動も、乳がん認定看護師が果たす大切な役割となっています。

求められる専門知識や技術

乳がん医療は、専門性の高いものであり、幅広い知識と高い技術が求められるといえます。具体的には、早期発見のための検診や遺伝カウンセリング、患者が治療法を選択する際のサポート、治療に伴う副作用に対する専門的なケア、症状を緩和するための専門的な看護、治療継続のための患者へのセルフケアの指導などができる知識と技術です。

加えて乳がん患者や家族への心理面でのサポートも不可欠で、患者や家族の心理過程を理解し、精神面での適切なサポートができるようにしておく必要があるでしょう。

また、「チーム」を組んで行う乳がん治療では、乳がん看護にあたる他のナースからの相談や、指導に対応できる能力、他の関連する分野の専門、認定看護師との協力・協働、患者の経過観察などでは、地域医療との連携も求められます。確かな技術と知識に加え、こうしたことを可能にするコミュニケーション力も必要となってくるでしょう。

乳がん看護認定看護師になるには

資格取得方法

日本看護協会が定める乳がん看護認定看護師教育課程において、6ヶ月615時間以上の研修を受ける必要があります。

乳がん看護認定看護師の教育課程は、千葉大学大学院看護学研究科付属看護実践研究指導センター、静岡県立静岡がんセンター認定看護師教育課程、鳥取大学医学部付属病院看護師キャリアアップセンターの3ヶ所となっています。

教育課程を受講するには、看護師免許取得後、通算で5年以上の実務経験が必要です。かつそのうち3年以上の乳がん看護に関する分野での実務経験が必要となっています。教育課程修了ののち、日本看護協会が実施する認定審査(筆記試験)に合格し、認定・登録となります。

認定は5年毎の更新となっており、更新には、自己研鑽や実践経験が審査されます。

資格保有者数

2014年2月現在、全国で211人の乳がん看護認定看護師が登録されています。

難易度・合格率

ここ数年は受験者全員が合格する年があるなど、合格率は高いものになっていますが、乳がん看護教育課程の受講内容や、教育機関が全国に3ヶ所しかないことなどを考えると、容易に取得できるものとは言い難いでしょう。それだけに、認定後は、乳がん看護についての専門知識や技術を活かした、さらなる活躍が期待されています。

乳がん看護認定看護師の資格取得後

活躍できる職場

全国のがん診療連携拠点病院が主な活躍の場となっています。聖路加国際病院、三井記念病院、聖マリアンナ医科大付属病院、各県のがんセンター付属病院などをあげることができるでしょう。乳がん看護認定看護師は、外来から病棟まで継続的に患者の治療にかかわります。

また、遺伝性乳がんカウンセリング外来などで、がん遺伝に関する相談などへの対応を行っている病院もあり、活躍の場は広がってきています。

将来性

乳がんは、有効な検査法や治療法が確立されているのと同時に、治療の多様化、療養生活の長期化に伴い、患者やその家族を、実践的な治療と心理両面から、専門的な技術や知識をもってサポートしていかなくてはならない場面も増えてきています。

また乳がん治療には、早期発見、早期治療が有効であることから、そのことを周知させる社会一般への指導・教育も欠かすことはできません。これらの中心的な役割を果たすものとして、乳がん看護認定看護師への期待は、患者、家族のみならず、医療従事者からも大きくなっています。近年、社会的にも乳がんの早期発見と、適切な治療への関心は高まってきており、今後も活躍の場は広がっていくものと考えられます。