看護師の職場選択の上で、医療機関以外にも多くの現場があります。介護現場、企業、教育や保育現場、イベント救護、検診センター、この他に、あまり耳慣れない刑務所での看護師勤務があります。

刑務所の看護師とは、どのような仕事で、どのような待遇で雇われているか興味がありませんか?

刑務所における医療の現状

刑務所では、受刑者の高齢化により医療を必要とするケースが後を絶ちません。医師不足、看護師不足とも言われています。

受刑者の7割に何らかの医療処置や健康管理が継続的に必要な場合が多く、医療が手放せない状況となっています。

医師に関しての調査では、必要とされる医師の8割にしか至っていないようです。

刑務所内での医療は、医療機関に設備されているような検査機器が少なく、充実した診療体制や看護体制が得られているわけではありません。

問診、自覚症状、観察や感覚を持って診断しなければならない事も多く、経験や実績がものを言うという事もあります。

検査や機材を利用した診療というよりは、看護師は正しい観察と状況判断を持って、医師の診断を仰ぎ、必要な処置やケアを行うこととなります。

刑務所での看護

受刑者の高齢化、女性受刑者の増加、妊婦、更年期障害など、健康被害を抱えた受刑者をケアすべく、刑務所では、看護師や保健師を雇用しています。

仕事内容

働く場所としては、一般の刑務所で働く看護師と、医療刑務所で働く看護師があります。

●一般刑務所
受刑者の急な体調不良や怪我へのケアや処置、急病への対応があります。

また、感染症や時々に流行る感染症等への対策も行います。

●医療刑務所
身体や精神的に疾患や不都合がある受刑者が収容される刑務所得ある為、何らかの医療介入が必要となります。

疾病以外にも障害をおっているケースもあり、看護度合いが一般刑務所より増します。排泄や食事支援、慢性疾患の治療など医師と共に看護師も健康管理に関わります。

受刑者との関わりとして、看護師が一人で受刑者にケアをすることはありません。医師や刑務官と共に受刑者を訪れ、必要なケアや処置を行います。

よって、身に危険を感じたり、危害が及ぶことはありません。

また、その際に必要以外の発言や言動はできず、一般の看護師に求められる傾聴や共感姿勢で関わることはできません。機械的、画一的と言った、淡々とした作業のような看護となります。

勤務形態

刑務所勤務の看護師は、公務員としての勤務となり、身分が保障されます。休暇や各種手当も国家公務員と同等となります。

また、刑務所では夜勤はなく、土曜日、日曜日、祝日が休みのカレンダー通りの業務、そして有給休暇などの取得もできます。

必要なスキル

人とコミュニケーションを図ることが苦手な看護師には勤めやすい現場ですが、手厚く優しく、言葉をかけたい看護師には不向きと言えます。

それは、直接受刑者と話す、明るく接すると言う事、不用意に声をかけることは禁じられ、冷静に事をこなす作業的業務となるからです。

また、限られた医療機器や環境での医療となる為、看護師の観察力や判断力、推察力が鍵となります。

看護師としての様々な経験をもち、少しの異変をキャッチしたり、もしかしたらこうなるかもしれないとの予測的観察が出来る看護師が求められます。

刑務所の看護師求人動向

各刑務所には多くの看護師が勤務しているわけではありません。5人から6人程度と言われるところもあり、求人数が多いとは言えません。

また、採用試験には公務員試験などの難しい試験もあり、簡単に勤務できるようではありません。適性検査や看護以外の試験をクリアしなければなりません。

まとめ

罪を犯しても、ある命は大切な命です。

看護師として勤務するのであれば、自分を守る意識と、受刑者の健康を守る意識、そして、偏見や偏った考えをなくし、与えられた仕事を着実にこなせる姿勢が大切となります。

受刑者が、罪を償い、社会に戻る為に健康を守り、健全さを取り戻せるよう健康管理できる知識や観察力が必要です。

コミュニケーションが十分に取れない環境下で、看護師に出来ることは少ないかもしれませんが、「何か異変を感じる」との直感を活かした観察力を役立たせることが出来る現場です。