訪問看護師は、病気や障害を持っている人が居宅で療養することができるようにサポートする仕事です。

訪問看護ステーションに所属し、家庭などを訪問して、健康状態の観察や日常生活の介助、栄養指導などといった看護ケアを提供します。

病棟看護師とはまた違った魅力がある訪問看護師。

このページでは訪問看護師への転職に興味がある看護師さんに役立つ情報をまとめています。

訪問看護師になるには?

訪問看護師は「病院や介護施設に併設された訪問看護ステーション」や「独立型の訪問看護ステーション」で働きます。

訪問看護ステーションによって採用条件が異なり、大抵は臨床経験を数年くらいで構いませんが、極端なところだと10年くらいの臨床経験を要求してくる場合があります。

よって、新卒の看護師や経験の浅い看護師よりも、現役で働いていて転職希望の看護師、もしくは出産や子育てがきっかけで離職した潜在看護師の方が有利と言うことになります。特に長い臨床経験を要求してくるタイプの職場では、ブランクがあっても経験者を優先的に採用する傾向にあります。

ただし、臨床経験を条件に入れず、看護師資格のみを条件にしているところも多数見られ、未経験者を全く採用しないわけではありません。未経験の新卒者や経験の浅い人を採用し、訪問看護ステーションでの研修や先輩の指導を受けて、立派に訪問看護師の仕事をこなしている人は大勢いるからです。

臨床経験に不安のある方は、経験の浅い人材を積極的に雇用している訪問看護ステーションが身近にないか探してみましょう。採用後に不安があっても、大抵は仕事をこなすうちに薄れていき、自信をつけていけることでしょう。

男性看護師も必要とされている

看護業界において男女比はまだまだ女性が多く、圧倒的に女性有利なのが現状です。その中で男性が進出しやすいのが訪問看護師です。

訪問看護師の仕事には体位変換など、利用者の身体を支え、動かすという大変筋力と体力、持久力が必要なものが多いからです。そのために筋力で勝る男性にとって入り込みやすいのが訪問看護師という仕事です。

まれに利用者の側で男性看護師を嫌がるケースはありますが、現実問題として男性の方が仕事がしやすく、そうした偏見は無くなりつつあります。

訪問看護師の仕事内容や就業環境

訪問看護師は、医師の指示のもと注射や点滴、褥瘡処置や傷の処置をするために患者さんのもとに出向いて看護ケアを行いますが、所属する職場によっても仕事内容は異なりますし、利用者に合わせて必要なケアを行うため訪問先によっても異なり、大まかに8種類に分けられます。

  1. 医療処置
  2. 医師の指示のもとの医療処置で、インシュリン注射、点滴、血糖値の測定など、主に糖尿病を患っている利用者向けです。

  3. バイタルチェック
  4. ほぼすべての利用者に行い、記録を摂ります。具体的には血圧、体温、脈拍などを測定します。

  5. 医療機器による処置
  6. 人口呼吸のための酸素、人工呼吸器、持続点滴、膀胱カテーテルなどです。

  7. 褥瘡管理
  8. リハビリ
  9. 具体的には筋力低下予防のためのリハビリや機能の回復、嚥下機能の回復などです。

  10. 利用者へのアドバイス
  11. 具体的には栄養状態の低下や運動機能の低下を防ぐためのものです。

  12. 日常生活のお世話
  13. 利用者が自分でできない日常生活のお世話で、食事の介助、洗髪、入浴の介助、散髪、口腔ケアなどです。

  14. ターミナルケア
  15. 末期がん患者や難病で在宅療養中の場合は、ターミナルケアが仕事に入ります。調剤・服薬管理・服薬指導、全体に利用者本人とその家族へのケアです。これから入院する人、退院する人への入隊員の調整など、あらゆるケアが含まれます。

訪問看護ステーションで働く看護師の1日の流れ

まず朝、8時から9時くらいまでに、所属する訪問看護ステーションの事務所へ出勤します。出勤前にあらかじめ用意した服で出勤したり、出勤してから事務所ごとのユニフォームに着替えたりします。

その日1日のスケジュールを確認するためのミーティングや朝礼を行い、昨日から今日までの報告、今日の訪問内容を確認します。加えて当番制で事務所の簡単な掃除をすることもあります。

次に、その日の訪問先へと自動車もしくは自転車で移動します。事務所で業務用の自動車を貸し出したりすることもあり、その場合車体に事務所のマークや名前がつけられています。最近は普通の自転車の他に、電気自転車を使うことも増えています。この時必要な持ち物はバッグに詰め込み、自転車なら背負い、自動車なら車に乗せて出発します。

そして、まず1番目の利用者の家を訪問し、30分から60分のケアを行います。内容はバイタルチェック、清拭、洗髪、トイレ介助、入浴介助、難病や末期がんで自宅療養している方の場合、点滴や医療機器のチェック、家族への指導、相談などが含まれます。

これらの仕事を終えたら一度訪問看護ステーションに戻るか、次の訪問場所が近ければ戻らずにそのまま移動し、同じようにケアを行います。

必ず戻るのは12時から13時くらいのお昼の休憩時間です。ステーションに戻ったら休憩を取り、昼食を摂ってステーションのケアマネージャーと相談したり、午後の訪問先について再確認を行います。

午後からは同じように訪問先でケアを行い、大抵1日で最大5件くらいをこなして16時から17時頃に訪問介護ステーションに再び戻ってきます。所定の記録用紙がありますから、看護の内容を記入します。

内容は利用者の状態を報告することで、利用者の状態について同僚たちを情報を共有し、別の人が利用者のところへ訪問する時の情報源とします。記入が終わったら管理者、他スタッフへの申し送りをしましょう。報告が終わったら随時退社の準備をし、帰宅して1日が終わります。

勤務時間は、一般的な看護師の日勤に相当し、大体朝9時に始まり、夜17時から18時くらいに終わります。

訪問介護員(ホームヘルパー)との違い

訪問介護員は「ホームヘルパー」や「ヘルパー」という名称で知られており、介護保険法に基づく資格職として介護を必要とする人の家へ訪問し、生活を送るために必要な介護や介助をしています。

訪問介護だけでなく、介護福祉施設などでもヘルパーの仕事をすることができます。訪問介護員と訪問看護師の仕事を比較してみると、食事や入浴の介助、排泄の介助など重複する部分が多くあります。

しかし、両者の職業の大きな違いは、「看護師としての仕事ができるか」という点にあります。傷の処置や酸素吸入器・人工呼吸器といった医療機器の管理などは、訪問介護員が行うことができない仕事です。

また、業務内容は似ている部分も多いのですが、訪問看護師は主に訪問看護ステーションに勤務することになります。一方で、訪問介護員は、介護サービスを提供している事業所などが主な職場です。

そのため、この2つの職業の人が同じ職場で働く機会は非常に少なくなっています。正・准に関わらず看護師免許があれば訪問介護員としても働くことが可能ですが、その際には訪問介護員の仕事しか行うことができないという点には気をつけなければなりません。

病棟看護師との違い

看護師の職場として最も一般的なのが総合病院などの病棟ですが、訪問看護ステーションと病棟には様々な違いがあります。最も大きな違いは、仕事内容です。病棟で働く看護師は高度な看護スキルや知識が求められることも多く、診療科も多いので配属先の診療科が変われば必要な知識やスキルも変わってきます。

また、入院している患者さんの入れ替わりが激しい職場も多く、1人の患者さんとじっくり向き合う余裕が無いこともあります。

一方、訪問看護師に高度な看護スキルが求められるようなことは少なく、バイタルチェックや傷の処置など基礎的な看護スキルで業務をこなすことが可能なケースが多くなっています。

訪問する患者さんが割り振られており、入れ替わりもそれほど激しくないのでじっくりと向き合うことができ、信頼関係を築いていく時間や余裕を持ちやすくなっています。その代わり、病棟で勤務するのと違って、看護だけでなく日常生活の介助なども行っており、ナースとしてのスキルも限定的です。

他の職種との連携

もう1つの大きな違いとして、様々な職種や地域の医療機関とのチームワークが不可欠ということがあります。病棟で働くナースの場合は、その患者さんの家族や主治医、院内の各部署との連携が重要で、他の機関などと連携することはそれほど多くありません。

しかし訪問看護の場合、訪問看護ステーションにはナースの他にケアマネージャーなども勤務しており、地域の医療機関や主治医、行政なども関わってくるので様々な人と関係を築いて連携することが大切です。そのため病棟で働くナースよりもチームワークを感じやすく、幅広い視点に立って看護に携わることができます。

訪問看護師として働くにあたり、上質のサービスを実現するためにはチームワークを欠かすことができません。というのも訪問看護ステーションでは多職種の人が働いており、医療機関など他の機関の協力が必要となることも多く、様々な職種のスタッフによる協力体制がしっかりしていなければ、十分なサービスを提供することができないためです。

最近では、訪問看護に様々な職種のチームワークが不可欠ということが改めて重要視されていて、医師会や自治体ではマニュアルを整えるほどになっています。

訪問看護ステーションで働くナースにとって特に連携が重要となるのは、ケアマネージャーや医師、薬剤師、歯科医師、歯科衛生士などです。また職場によっては保健師や作業療法士、理学療法士、さらには言語聴覚士などといった専門職とのチームワークも求められます。

■医師との連携
まず、連携先として大事なのが「かかりつけ医」です。定期的に患者さんの診察を担当している医師は、診察内容や当時の状況などの情報を管理しているためです。また、日頃から服用している薬や既往症の情報もなど、訪問の際に必要な情報を多く持っています。

訪問看護師にとって、このような情報を医師から提供してもらうことは仕事を進める際の大きな手助けになるだけでなく、サービスをさらに充実させることにもつながります。

反対に、直接訪問して患者さんの状況を確認する訪問看護師が医師へ情報をフィードバックするということも大切です。気になったことや前回の訪問時と比較して良くなった点・悪くなった点などを情報共有することで、入退院を繰り返さないような治療と看護の提供につながります。

■ケアマネージャーとの連携
訪問看護は介護と密接に結びついている仕事であり、やはりサービスとして利用する患者さんには高齢の人が多くなっています。そのため、ケアマネージャーとの関係も非常に重要となります。

ケアマネージャーは訪問看護ステーションで働く多職種の中でも中心的な存在であり、患者さんが自宅で不自由なく生活するためのケアプランを作成しています。ケアプランの作成には直接患者さんを訪問するナースからの情報が重要で、訪問看護師とは特にしっかり連携しなければなりません。

最近はナースにケアマネージャーが同行し、患者さんだけでなくその家族のケアを行ったり、家族がどのような介護をしてきたのかを調査したり、今後の介護の方向性を決めたり説明したり、相談にも応じています。

介護と看護は同時に必要とされる場合も多いので、訪問看護師とケアマネージャーのチームワークが良いと仕事も進めやすく、最適なサービスを提供しやすくもなります。

■薬剤師との連携
薬剤師については、日常的に薬を使用している患者さんのケースでチームワークが重要です。

例えば、薬の副作用が強いと相談されたり、薬を使用していても効果が見られないという状況が確認されたりするような場合には、訪問看護師から薬剤師に関連する情報が伝達されます。

また、その情報をもとに薬を変更した際などには薬剤師からの情報提供もあります。最近では薬剤師が直接患者さんを訪問して薬効、副作用に関する情報、薬を使用する際の注意点などを患者さんと家族に説明するというケースも見られます。

■歯科医師・歯科衛生士との連携
歯科医師や歯科衛生士との連携は、患者さんが高齢の場合に特に重要となります。入れ歯が合わないために口の中に不快感があったり食事をしにくかったりする場合には、訪問看護師から情報提供を行います。

栄養状態や栄養管理に問題・疑問などがある場合や食事ができない場合、体調不良を訴えている場合などに医師と保健師とナースのチームワークが重要です。患者さんの体調が変化することは容態悪化につながることも多いので、この三者のチームワークが良いことは病気の早期発見・治療につながります。

■理学療法士や作業療法士との連携
理学療法士や作業療法士などの専門職は、リハビリを中心とする場合に連携が重要となる職種です。ナースが健康状態をチェックして状況を伝えることによって、患者さんのリハビリも無理のないものになります。

訪問看護師が働くときの服装や持ち物

看護師の服装と言えば白衣が一般的ですが、訪問看護師の服装は機能的なポロシャツやジャージ、パンツルックが基本です。事務所ごとにユニフォームを定めて支給している場合と、自前でこうした服を用意する場合とがあります。

自前の服なら事務所側の負担が減るメリットがあり、ユニフォームだとその事務所の訪問看護師だとすぐに分かるというメリットがあります。個人で服を用意する場合、清潔感を重視しましょう。

靴は基本的にスニーカーで、移動しやすさを重視しています。

入浴介助をする場合は、これとは別の服があります。安全性を重視して濡れても動け、水をはじいて通さず動きやすい特殊素材を利用したものになります。入浴介助と他のケアとでは別の服に着替えなくてはならないため、着替えやすさも重要視されます。

また、訪問時のバッグには、入浴介助の着替えを入れておくスペースが必要です。バッグもユニフォームの一環として揃えることもあり、事務所から支給されるものだとスペースが十分に確保されています。

バッグに入れるものは、利用者のカルテノート、血圧計、聴診器、体温計、ドライヤー、ハサミなどの処置道具に加えて、爪切り、アルコール綿、綿棒、テープ、使い捨て手袋などです。

荷物が多く、そして重いのが特徴で、自分なりの整理整頓を心がけておき、どこに何を入れているのか把握するのが義務です。ケースを用意し、種類別に小分けにするなど、各自工夫が必要になります。

訪問看護師の給料はどのくらい?

訪問看護ステーションで働く看護師は、勤務条件に比して収入の比較的高い傾向があります。年収の相場は400万円から500万円程度になっていて、夜勤が無く夜勤手当が支払われないでこの年収なので、ナースの働く職場としては好条件・高収入の仕事と言えます。

高齢化の進行にともなってニーズも増しており、人手不足となっている地域や職場では基本給が高めになっているケースも見られるなど、高収入に繋がる条件も多く揃っています。

訪問看護師として働く場合に支払われる月々の給料は、大きく分けて基本給とオンコール手当の2つに分けることができます。

基本給の相場は20万円から30万円程度になっていて、地域によって基本給の差が大きい傾向にあります。全国でも基本給の高い職場が多いのは東京都や大阪府で、高いケースでは35万円を超えるものもあります。

それ以外の地域でも、県庁所在地や都市部などでは比較的基本給の高い職場が多い傾向が見られます。また職場によっても基本給の金額の差が大きく、職場選びで年収が大きく変わってしまうのが特徴の1つです。

訪問看護ステーションの多くは日中のみ業務を行っているため、病院で働く看護師のように夜勤手当は設定されていません。夜の遅い時間やカレンダーの休日に対応する体制になっている職場では、オンコール手当が支給されています。

夜勤手当のように月収を大きく押し上げるようなものではありませんが、オンコールに対応すればその分手当が支給されるので、オンコールが多い時には月収が高くなります。

オンコール手当の相場は、1件あたり1,000円~3,000円程度とそれほど高額ではありませんが、休日や夜間・深夜のオンコールに対応する際には1件あたりの金額がアップしたり、夜間対応を行う職場では待機手当が支給されたりするケースも多くあります。

オンコール手当以外にも、職責手当や勤続手当、皆勤手当、能力手当、資格手当といった形で各種手当制度を設けている職場が多いというのも、訪問看護ステーションの特徴の1つです。

訪問看護師のパート時給

訪問看護ステーションでは、常勤としてだけでなく非常勤のスタッフを募集している職場も少なくありません。パートのような非常勤職員として働く場合の時給は、東京都や大阪府のような都市部では2,000円~3,000円が相場となっており、医療機関で非常勤職員として働く場合より高額なケースが多くなっています。

しかし、非常勤職員の時給についても地域や職場によって金額の差が大きい傾向があり、時給が低い地域では1,200円前後というケースも見られるので、給料にこだわりがあって高収入を得たい場合などには注意が必要です。

また、職場によっては、オンコールに対応していてもオンコール手当がつかず、その部分で収入アップを期待することができない場合もあります。非常勤職員として訪問看護ステーションに勤める際は時給制が一般的ですが、中には時給制ではなく歩合制を採用しているケースもあり、訪問件数によって月々の給料が支払われる職場もあります。

ちなみに、非常勤職員でもボーナスや各種手当がしっかり支給されるケースが多くなっています。ボーナスについては非常勤職員ということで上限額が設定されていることも多いですが、もらえるのともらえないのとでは年収が大きく異なってくるだけでなく、仕事へ取り組むモチベーションも左右されかねません。

ボーナスや各種手当制度次第では非常勤職員でもしっかり収入を得ることができるので、非常勤職員として働きたい場合には非常勤職員の手当制度などに注目してみると良いでしょう。

訪問看護師に転職するメリット

高収入な上に勤務条件が良い

まず最大のものでは、看護師の職として比較的高収入が得られやすいという点が挙げられます。平均年収は正社員だと400万円から500万円、事務所の規模によって更に上がる可能性があります。非常勤で勤める場合は、高時給が期待できることでしょう。そして、基本的に残業や夜勤がありませんから時間を自由に使え、仕事の時間とプライベートの時間とを明確に区別できます。事務所によって違いますが、土日休みということが多く、プライベートの時間はかなり確保しやすいと言えます。。

こうした事情を背景に持つため、急性期病棟やICU、手術室などの勤務者が転職先として訪問看護ステーションを選ぶ理由になっています。夜勤がなく休日がしっかりと確保できるという点が評価の対象であり、働きやすいと転職する価値があるのです。

スキルアップやキャリアアップが可能

訪問先によって様々な経験を積むことができ、スキルアップやキャリアアップが可能というメリットも大きいでしょう。

訪問看護の分野で経験を積むことで、そのまま長く続けて働き続けたり、今後介護や福祉の分野に転職するのに有利な経験を積み重ねていけます。場合によっては訪問看護の分野で認定看護師の資格を取得することもできます。スキルアップとキャリアアップの良いチャンスに繋げられ、キャリア形成ができます。

利用者との人間関係の構築

訪問看護師の仕事は、メリットとデメリットが表裏一体という面を持ち、そのうちひとつが訪問先の利用者との人間関係が挙げられます。上手く利用者やその家族と人間関係を築ければ、仕事にやりがいを感じられ、楽しく仕事をこなせ、利用者から感謝される楽しみが得られます。

基本的にひとりで訪問するために、訪問先でひとりで判断しなくてはいけないプレッシャーも感謝されることでやりがいに転じられます。

その反面、利用者やその家族との人間関係が上手く築けなければ、訪問看護ステーションへクレームをつけられたり、以前の担当者と比べられて批判されたりと精神的なプレッシャーを受けるでしょう。

親身な看護を続けることで、人間関係を緩和する努力が必要とされます。クレームに耐えられるだけの精神力と努力とでデメリットは克服可能です。向いていないと、耐えられずに離職していく看護師もいます。よって、出来るだけ人と話すことが好きな人、在宅医療について知識や経験を身につけたい人、患者さんや家族との関係を築いていきたいという前向きな人に向いています。

訪問看護師になるための条件に、臨床経験を要求する場合があります。その理由のひとつは、こうした人間関係を上手く築けるだけの経験値があるかどうかの判断基準となります。転職するに当たって不向きと判断されるのは、それなりの基準があるということです。

訪問看護師に転職するデメリット

雇用と収入の不安定

訪問看護ステーションごとに大きく違うこのデメリットは、事務所の経営状態によって雇用が不安定になったり、小規模な事務所だと福利厚生と言った面で満足できない可能性があります。また、小規模な事務所だと一定数の利用者を確保できずに収入が上がるどころか下がる可能性があります。同じく、ひとりの看護師が抱える担当数が増え負担になる危険性が挙げられ、転職や就業の際に安全な事務所を選ぶことでデメリットを避け、メリットに転じられます。

事務仕事が多い

地味なデメリットのひとつに、意外と事務仕事が多いという点があります。訪問看護師の仕事のメインはあくまで訪問先での看護業務なのですが、その内容について記録を取り、看護記録、業務の管理を手作業で記入したり、パソコンで入力したり、記録した書類を上司に報告しなくてはなりません。

仕事を多くこなせばこなすほど事務仕事が増えるということで、事務仕事が苦手な人にとっては苦痛に感じられるでしょう。慣れてしまえば意外と日々の仕事として割り切れますが、それまでは大変かもしれません。

また、事務作業が苦にならない人にとってはデメリットにならないでしょう。

訪問看護師の求人探しのポイント

訪問看護師は在宅医療の重要な役割を担っており、今後もニーズがあり年々事業が拡大しています。そのため、求人数も多く正社員だけでなく、アルバイト・パート・派遣といった雇用形態での求人も数多くあるので、良い内容の求人も見つけることが可能です。

訪問看護師の勤務形態の違いについて

訪問看護ステーションは、医療機関やディサービス、居宅介護などの介護施設と併設されているケースも多くあります。

療養している人の居宅を訪問するので、車を使用する場合は採用の際に運転免許が必要なこともあります。訪問看護ステーションによっては、自分で車を運転して広範囲を回る場合と、近隣エリアを徒歩や自転車で巡回する場合、医師に同行して巡回する場合などさまざまです。

勤務時間は、日勤の9時から5時が多く、週2日から3日、半日勤務など勤務希望に対応するケースも多く、訪問看護は1日平均5件程を定期的に巡回しサービスを提供します。訪問看護は一人の患者さんとじっくり向き合った地域に密着した看護になるので、大病院のような慌しさがなく、落ち着いた環境での看護です。

患者やその家族とのコミュニケーションが重要になるので、信頼関係を大切にした看護をやりたい人にはやりがいを感じる仕事といえます。

また、週2日から3日といった希望日数に応じた勤務も可能なこと、土日が休みなこと、業務内容に対して高給与なことなども看護師の転職として人気です。

教育システムやフォロー体制が整っている訪問看護ステーションも多く、未経験やブランクのある看護師も積極的に受け入れているので、訪問看護の仕事は人気なのです。

夜勤とオンコールについて

病院と違い、訪問看護師は日勤の固定勤務が多く、夜勤がない代わりにオンコールがある場合もあります。

アルバイト・パート・派遣の場合は、オンコールなしといった求人も多いようですが、オンコールがある場合でも当番制、交代制などであり、1人にかかる負担を最小限に出来るようにステーション毎に工夫をしています。

しかし、オンコールがある・ないはライフスタイルに大きく関わってきますので、求人を探す場合は事前に確認すると良いでしょう。

訪問看護師に求められる能力

訪問看護師に求められる能力には、利用者の状態を汲み取り、医師へ伝えるという自立支援の働きがあります。

ひとりで訪問看護を行うこともありますから、事前に担当医と相談し、準備を整えておく計画性が求められます。訪問先で不測の事態が起きた場合の判断力、指導力も必要です。全体的に洞察力、対応力、看護知識の豊富さが必要となっています。

年齢制限などはありません。ただし臨床経験を求める場合は、事実上年齢制限を課しているようなものだと言えます。

訪問看護師に転職した後のスキルアップ

訪問看護師の新人研修

訪問看護師の研修、セミナーには、所属する訪問看護ステーションによって実施される新人研修があります。ある程度規模の大きな訪問看護ステーションは、新しく入ってきた訪問看護師を一人前に育てるため、独自の研修、セミナーを行い、個々の看護師に合ったプログラムを組むことになります。

例えばある訪問看護ステーションでは、その看護師の勤務経験から必要な看護技術のチェックリストを作ります。訪問看護に関係した勤務を経験していればその内容を外し、経験していないのであればチェック項目に入れます。本人にも確認して本当に必要な内容の研修プログラムを組むのです。

研修プログラムは短期間では終わらず、1年前後に渡って続けられていきます。前半は看取りのケア、在宅リハビリテーションなどの実践技術、訪問看護師の役割、ケアマネジメント、診療報酬と介護報酬などの概要の知識について学びます。後半は1か月から2か月おきに集合研修を実施し、実際の事例によって自分に合った看護技術、自分にまだ欠けているであろう看護技術について確認し、改善すべき点を新人研修者全員で議論するというものです。

訪問看護師のOJT

OJT(On-the-Job Training)とは、企業内での企業内教育、教育訓練法のひとつです。職場の先輩や上司が新しく入ってきた後輩に対して、仕事を通じて必要な知識、技術などを学ばせるというものです。

訪問看護師の場合はどの職場でも同じような内容となっています。まず新人の訪問看護師は、先輩看護師に同行して、その訪問看護ステーションの利用者の家に訪問します。さすがに最初からひとりで訪問するということはありません。実際に先輩訪問看護師の仕事ぶりを観察し、どんなふうに利用者の方と関わり、話し、仕事をするのが見て覚えて行きます。

訪問看護師の仕事内容は、実際に目で見て確認した方が覚えやすく、しばらくはOJTで学びます。必要な物品、医療機器の準備、片付け、利用者の方の変化を観察し、対応すること、それまで訪問看護師の仕事を見た事が無ければないほど、違いを覚えやすくなるでしょう。特に病棟勤めとはかなり違う仕事ぶりを確認して覚える必要があります。

また、場合によっては先輩看護師だけでなく、医師の診察やケアマネージャー、ヘルパーなど、他の職種の仕事を同行して見て学ぶことがあります。ojtで学ぶ間には、マニュアルやテキストから学ぶ座学の時間もあります。

ある程度訪問看護師の仕事を把握したら、次は先輩看護師と共に自分も利用者の方に直接関わって、実際に訪問看護師の仕事を行う段階へと入ります。実際のケア、患者さんの情報収集のやり方などを先輩から学びつつ、実践の段階となります。この段階で誤って覚えていたり、未熟であると判断された場合、先輩看護師がフォローしたり、指摘してあらめて覚えなおしたりと忙しくなります。

こうしたチームでのサポートを受けつつ、少しずつ自分ひとりで判断し、実践できるだけの知識と技術を磨いて行きます。あとはひとりでも訪問看護師としてやって行けるかどうか、事務所側が判断するまで同じことが続きます。

どれくらいで1人で訪問できるかどうか、事務所によって判断する時間が違い、訪問自体はひとりで出来るようになってもサポートが必要な半人前の状態は当分続きます。一人前の訪問看護師になるまで、年単位の時間がかかると考えておきましょう。

訪問看護師になると身に付くスキル

看護師のスキルを伸ばせる

訪問看護の仕事は、病棟の看護師のように多くの看護師がいる中で仕事をするのではなく、大概は看護師は一人で、個人の判断で看護を行うことが多いです。医師が同席することはほとんどありませんから、患者さんの症状や状況をすべて看護師が理解していなければなりません。医師の指示を待つことがなく自分が判断しますので、その分だけ勉強が必要です。看護師として責任をもって患者さんに対応することで、看護のスキルを伸ばすことができます。

人を診る力

病棟での看護師の仕事は、検査のデータを見て病気の治療を行うことが多いですが、訪問看護の仕事は患者さん一人ひとりに向き合う仕事のため、「人を診る力」が身につきます。その他、訪問看護では営業を医療スタッフが行うこともあります。病院の仕事では発生することがない営業ですが、訪問看護では営業を行うこともあり、営業力も身につけることができます。

利用者が利用しているサービスの管理・調整

また、患者さん一人ひとりの看護に当たるだけでなく、介護の仕事も加わってきますから介護についても学ぶことができます。患者さんが利用しているサービスの管理や調整なども行いますし、患者さんや家族の質問に答えて、適格な決断を下さなければなりません。あらゆることに関わることから、看護師というだけでなく多くの面で自分を伸ばすことができ、社会人として総合的な力が身につきます。

臨機応変の対応や判断力

訪問看護で訪れると、あらゆることの対処を迫られます。何が起きてもすぐに対処できる臨機応変の対応や判断力も、訪問看護の仕事であるからこそ身に付けることができます。担当する患者は固定していることが多く、同じ患者さんを定期的に診ることになります。ですから、患者さんやその家族とのやりとりも多くなり、技術だけでなくコミュニケーションのスキルを身につけることもできます。

訪問看護師の関連資格

訪問看護師になるためには、医療行為を行うため看護師の資格が必須です。それだけでも訪問看護師として働くことは出来ますが、訪問看護師として仕事の幅を広げたければ他にも取得して欲しい資格があります。

訪問看護師は患者さんに看護業務を行うだけでなく、身体の介護も行うため介護士としての役目もあります。

そのため、下記の資格を実際に取得している訪問看護師が多いです。

ホームヘルパーの資格があれば、患者さんにどのような家事サービスが必要かを判断することができますし、身体の介護の方法についてもわかります。ホームヘルパーとして身につけた知識は、訪問した先ですぐに役立てることができます。

また、患者さんの身体面だけでなく精神面でも支えてあげることも訪問看護師に求められていますから、介護福祉士(ケアワーカー)としての資格も有効です。

最後に、多くの訪問看護師が取得しているケアマネージャーになれば、患者さん一人ひとりの今後の方針を決めることができます。患者さん一人ひとりにどんなサービスが必要で、どんな看護が必要かを決められるケアマネージャーの資格は非常に役立ちます。

もう1つ、訪問看護師に望まれる資格は保健師です。

訪問先の患者さんが自宅で過ごしやすくするためには、家庭でどのようなことが必要か、健康相談に乗ることも必要です。保健師の資格を持っていれば、適切な健康相談を行うことができます。

訪問看護師としてさらにスキルアップを目指すならば、訪問看護認定看護師の資格があります。

看護技術があり、更に経験に基づいた知識を持っている訪問看護師が認定看護師の資格を取得すれば、看護師として他の看護師に指導やアドバイスを行うことができます。訪問看護師として1つ上を目指すならば、認定看護師の資格の取得をおすすめします。

訪問看護師として働く看護師の声

■30代女性
大体が一人で利用者の自宅へ行きますので慣れないうちは大変ですが、慣れてしまうと人に気を遣ったり煩わしい人間関係がないので気が楽です。

また、パート勤務の訪問看護師は、担当患者さんによってスケジュールが変わってくるので、他の施設で決まった時間働くより訪問看護ステーションでスケジュールにある時間だけに働くことが出来、融通が利きます。一日のうちで少しだけ仕事が出来る時間があるとしたら、訪問看護師として働くことは可能です。

知り合いの看護師は子供が小さく保育園も空きがないため、子供がもう少し大きくなるまでは働くのは無理だと諦めていました。

しかし、以前働いていた先輩から週2回夕方の1時間だけ訪問看護師をやってくれないかと頼まれ、旦那さんが仕事から帰ってきてから子供を見てもらって訪問看護師の仕事を始めました。時間の拘束がある施設での仕事は出来なくても、時間の融通の利く訪問看護師としてなら働くことが出来たのです。

患者さんのニーズは多種多様なので個々の患者さんに合った訪問看護を提供するためには、働く看護師もそれに合わせて勤務体制を整えていかなければなりません。短い時間しか働けないとか、毎日は無理だけど週に2~3日なら働けるとかいう場合は、訪問看護師として働くということを考えてみても良いかもしれません。

■30代女性
訪問看護へかかわるようになるまでは、一般病棟で働いていました。働いている中でショートステイの患者さんやその家族と話す機会があり、それをきっかけに患者さんそれぞれとしっかり向き合う仕事にかかわりたくなり、訪問看護師への転身を決心しました。

実際に働き始めて間もない頃は、言い方が悪かったために利用者の方に話をうまく伝えることができずに怒らせてしまったこともあり、苦労しました。しかし、上司に相談した結果、誤解も解いてもらいましたし、どのように利用者の方に対応したらよいかも指導してもらいました。それ以降は利用者の方への説明についても、利用者の方がわかりやすいように考えて、言葉を慎重に選ぶように気をつけています。

訪問入浴では場合によって、仕事をするにも狭いスペースしかないといったこともあって大変です。ですが来てくれてありがとうといったように感謝の言葉があると、仕事にもやりがいが出ます。

■20代女性
看護師になってしばらくは、病棟で勤務していました。もちろんやりがいを持って働いていたのですが、結婚が決まったことから将来的に妊娠したときのことも考えて、病棟ではなく在宅医療にかかわる訪問看護の仕事に転職しました。

訪問看護で働いている人には子育て中という人も意外にいて、職場も仕事と家庭について理解があるため、不安を感じることなく働くことができています。実際に、私も転職してからしばらくして妊娠しましたので、一旦は仕事を休みました。

現在は、育児休暇から復帰したところです。訪問看護の仕事は利用者の方や家族の方とじっくり向き合える仕事なので気に入っています。

医師が一緒にいないことから、看護師として責任がかかってきますが、その分だけやりがいも感じています。子供が小さいうちは続けていき、子供がある程度の年齢になって落ち着いてから、もう一度病棟で働きたいと考えています。

■30代女性
子供もいるために夜勤はすることができず、患者さんとも丁寧に接する仕事に就きたいということで、訪問看護師の仕事を選びました。

最初のうちは仕事にも慣れませんでしたし、病院と違って普段生活している家に伺って仕事をすることが難しくて悩みました。なれない仕事をすることにストレスを感じて精神的にもきつい時期もありましたが、事務所の方のサポートで何とか乗り切りました。今では仕事にやりがいを感じて頑張っています。

雪の日に訪問した時に、利用者の方にタオルで頭を拭いてもらったこともあります。コミュニケーションがしっかりしてきてからは、利用者の方から訪問した時に色々と人生に関する話をすることができる点も楽しくなっています。来てくれてとても楽しい、と利用者の方に褒めていただくと、仕事をすることに喜びを感じます。

利用者の方々のこれからの人生にかかわることができるところにも、幸せがあります。病棟の仕事では一人で何人もの患者さんを相手にしなければいけませんが、訪問看護師ではしっかり一人ひとりに向き合えるので、寄り添った看護をしたい人におすすめです。

■40代女性
在宅医療について興味があったのですが、友人からのすすめで訪問看護の仕事に転職を決めました。雨や風が強い日でも利用者の方のお宅に伺わなければならないので大変ですが、仕事にやりがいを感じています。

仕事を始めて最初のうちは病院と同じような感覚でいましたので、衛生材料もちょっと使ったらすぐに捨てていましたが、自宅に伺う訪問看護では、利用者さまが用意するものですので、むやみに捨ててはいけないことを知りました。ベットから滑り落ちて助けを求めている利用者の方のか細い声を聞いてあわてて助けるなど、毎日が新しい経験ばかりです。

利用者の方一人ひとりに寄り添って、その人にあった看護を行えると、訪問看護師になってよかったと感じます。人とのつながりに魅力がある人にも、訪問看護は合っていると思っています。