みなさんは、遺伝子について考えたことがありますか?

遺伝子診療科では、遺伝子レベルの検査を行い、これから起こりうる疾患や、胎児が抱えるかもしれない疾患や遺伝子異常について検査する診療科です。

この診療科で働く看護師は遺伝子や染色体の検査を希望される患者さんへの対応を行います。

検査に対する説明や指導、その検査を受けるに至るまでの心のケアや、その結果に基づく精神的フォローを行います。

とてもデリケートな問題であったり、その結果によっては、とても心苦しく感じる患者さんやどのご家族が多い為、細心の注意と配慮を持って対応しなければなりません。

では、遺伝子診療科に勤務する看護師に必要な知識や技術について学びましょう。

必要な看護技術・知識

遺伝子診療科では、患者さんの粘膜、血液、羊水などを採取し、その検体を用いて遺伝子レベルの検査を行います。

実施前のカウンセリングと自己決定支援技術

遺伝子検査を行う事は、まだ見ぬ疾患の予測をしたり、自分の今後を知る検査と言えます。

それを知る事で前向きに生きられる患者さんと、それを知ってしまった事で心悩ませ、これからの生活に自暴自棄になってしまう患者さんもいます。

そして、この検査をすべきか否かを深く悩む患者さんもいます。

そして、この検査の中には、まだこの世に生を受けていない胎児を対象とした先天性異常や遺伝子異常を調べることもあり、この結果によっては中絶を選択したり、産むことに関して不安を強めてしまう患者さんやそのご家族もいます。

よって、自分が納得いく形での意思決定が出来るよう支援が必要です。

充分に話を聞き取り、検査を受けることによりこれからの人生に悪影響が出ないか、後悔しないか、その検査がその方にとって本当に必要な情報になるかなどを含めて、ともに悩み、自分の力でその検査を受けると選択出来るよう支援する技術が必要です。

なぜなら、この支援をかんごしや医療スタッフが指示したと思わせてしなったならば、その結果によっては、「受けるべきではなかった」「知りたくなかった」と医療職者側を責め、その事実を受けとめられなくなる患者さんもいるからです。

よって、自分の意思で受けたい、受けないと判断しで貰えるよう、カウンセリングとコミュニケーションを持って支援する力が必要です。

実施後の精神的ケア

思い悩み検査を受けた患者さんは、その結果が知りたいけれど、知るのが怖いと感じています。

しかし、結果は知らされます。

そして、その後の対応について考えていなかければなりません。

異常を知った患者さんは、落胆し、今後の良き不安を強めます。

特に、隔世遺伝や胎児異常を思わせる結果では、自分自身ではない存在に影響を与えると言う結果である為、心を痛める患者さんが多い現状があります。

まずは、ショックを受ける患者さんに対し、優しく思い遣りある対話技術が必要です。

心に寄り添い、時間を取ってコミュニケーションを図ったり、言葉が無くとも、一人にせず傍で支え、一人ではないという心強さを与えられるようメンタルケアを行います。

そして、患者さんが思いを表出し、これからの意思決定が出来るよう言葉を発し始める事を待つ姿勢も重要です。

検査の介助技術

遺伝子検査の検体採取の介助を行います。

口腔や鼻腔等の粘膜採取、血液採取は看護師が行う事があります。

これらの手技を練習し、痛みや苦痛なく円滑に採取行為が出来る技術が必要です。

また、羊水検査や細胞検査等を行う際は、医師が検体差う腫を行う為、その検査の必要物品を用意し、検査が円滑にいくよう介助する知識と技術が必要です。

また、医師の行う検査については、専門的で難しい検査が多くあります。

検査が安全に受けられるよう患者指導する知識が必要です。安楽に検査が受けられる体位保持技術の理解も必要です。

倫理的知識

遺伝子検査に対して、看護師自身思う事があると思います。

その意思決定と、その後の結果による意思決定についても何か感じることがあるかもしれません。

しかし、思い悩み、心を痛めた患者さんに対して、その意思決定を支援する立場で無ければなりません。

よって、その方の決定に対し、尊厳と人権に配慮し、自分たちが決めたことに後悔が無いよう支援する思いと配慮が必要です。

深く倫理について学び、プライバシーや情報管理を徹底する心配りを求められる診療科です。

まとめ

一般の診療科では、自分がその方の立場に立ちどう考えるかなどを思い、その方の気持ちになれるよう看護を行います。

しかし、遺伝子診療科では、それが求められない場合があります。

自分の考えではなく、患者さんの考えを尊重し、その決定を支えると言う姿勢が必要な診療科です。

と言うのは、羊水検査を例にとりましょう。

遺伝子検査結果によってはダウン症や先天性異常に気づくことがあります。

看護師によっては、それを知ってどうするのかと感じる看護師もいますし、それを知ったとすれば、生まれるまでの準備がしたいと考える看護師もいるでしょう。

また、その結果によっては出産をあきらめると言う看護師もいるでしょう。

その様々な選択肢のある遺伝子診療科ですが、自分主観を持って患者さんに関わると、時に患者さんを傷つけたり、患者さんの意思決定を混乱させてしまう事があるからです。

心悩む患者さんに寄り添う事は大切ですが、その方の意思を支える看護者であることが求められます。