患者さんの廃用症候群を予防する試みとして自動運動や他動運動が行われます。

もともと寝たきり状態の患者さんの機能低下予防や循環動態の安定に役立てたり、安全指示による活動制限を余儀なくされる患者さんの機能低下予防に関与したりします。

これを積極的に行えば、患者さんの機能維持、低下予防、回復促進へとつながる援助となります。

しかし、看護現場ではそこまで患者さんの運動や活動に対して介入する余裕が無く、リハビリテーション技師に委ねている現場が多いことでしょう。

ですが、時間を見つけて少しでも看護師にリハビリテーションや機能訓練に対する意識があれば、その患者さんの身体、機能回復に加担できる効果的な関わりです。

では、自動運動と他動運動について理解を深め、患者さんの寝たきりを阻止できるケアを考えましょう。

「自動運動・他動運動の援助」の目的

目的は、関節拘縮予防、静脈血栓やむくみに対する対策、運動感覚(大脳)への刺激の効果があります。

動かさないということは、動かないように筋力や身体、心肺機能を低下させることで、運動刺激にによる脳の刺激や運動器への刺激は、機能低下予防に直結します。

よって、自動運動・他動運動は、患者さんの全身機能、その一部分の筋、関節運動機能に関わる支援と言えます。

また、循環へも働きかけ、寝たきり状態による静脈血栓予防、肺障害、褥創などの二次合併症予防への関わります。

自動運動とは

自動運動とは、自分の意思で筋肉や骨格を動かし、体を動かせることです。

意識があり、自分で動かそうとする意欲のある患者さんでしか成しえない運動方法で、意識が清明で自動運動の理解が出来る患者さんには、寝たきりの障害や二次合併症の理解を促し、率先して行うよう注意点と実践法の指導を行います。

他動運動とは

他動運動とは、他者や自分の四肢のアプローチ、器具や機械によるアシストで筋や骨格を動かし運動することです。

関節可動域訓練とも言い、関節拘縮を他者の支援により実践し、正常な関節可動域を維持できるよう関節を動かす運動療法でもあります。

看護師が良かれを思って行っても、患者さんの苦痛や痛みを伴う場合がある為、患者さんの訴えや表情、反応に注意して行う必要があります。

患者さんの痛みや苦痛の原因、どのような動きで苦痛を生じるか、関節異常や変形の有無、麻痺の状態等の情報を得ます。

また、重度の疾病や状態の悪化している急性期の患者さん、意識の低い患者さんには、モニターを装着し、モニタリングしながら他動運動を行う必要があります。

麻痺のある患者さんの自力での他動運動では、健側で麻痺側を支え、手指を握るよう運動したり、健側で麻痺側を屈伸運動させる等の方法もあります。

看護師が実践する以外でも、自分自身で行える他動運動の指導も意識があり、意欲のある患者さんには有効です。

麻痺や脱力のある患者さんは、無理に他動運動を行うと脱臼や骨折のリスクがあります。少しでも痛みがあればそれ以上は行わないということと、関節の状態を把握しながら実践することも必要です。

他動運動やリハビリテーションは、一度で回復を期待させることではなく、時間をかけてじっくりと可動域に刺激を与え機能維持、回復に関わればよいのもです。

明日に繋がる意識を持って施行することが、患者さんの負担の少ないリハビリケアと言えます。

患者さん全員に適応し、意識障害の有無、運動障害の有無、長期臥床や安静制限のある患者さんなど、どの方にも効果を得られ、その人の状態に応じた運動アセスメントを行い実践します。

まとめ

運動刺激を与えることが、患者さんにどのような効果をもたらせるかが理解できたでしょうか。

しかし、これが痛みや苦痛となれば、「また来た」「嫌だな」と患者さんの療養意欲の低下に繋がります。

人体の行動や骨格や筋の動きを理解したケアが望まれます。

また、動くことが心地よい、リラックスできると感じられる他動運動技術を身につけられたら、患者さんは闘病意欲がわき、快適な治療や療養を果すことが出来るでしょう。