行政保健師のメリット

給与や待遇が安定

保健師として働くフィールドとしては、都道府県の保健所、市町村の健康福祉課などの行政機関で働く行政保健師の割合が最も多くなっています。行政保健師は公務員として採用されるため、給与や待遇が安定していることが最大のメリットです。

公務員ということもあって産休や育休などといった休暇制度が充実しており、出産や子育てがしやすいという点も女性にとっては働きやすい環境です。ほとんどの市町村や県が3年の育児休暇を取得することができ、男性保健師もいますが大多数が女性のため出産や子育てに関して理解もあります。

自分の知識と経験を活かして働ける

行政保健師の仕事は、地域住民すべての健康管理と維持をすることです。幼児から高齢者まで対象となる人は非常に幅広いですが、自分のアドバイスや意見によって健康維持や病気の予防が可能になります。

また、保健師は妊娠中のさまざまなケアや出産に対しての不安、不慣れな育児、赤ちゃんの病気に関しての心配事などの相談に乗るため、妊娠や出産をした女性にとって頼りになる存在です。

自分の知識と経験を活かし地域医療の最前線で働くことができる点は行政保健師としての誇りでもあり、保健活動を本来の業務とする保健師にとっては適材適所であるということもできます。

夜勤がなく体力的には長く続けられる

行政保健師は夜勤がないため、体力的には楽なところもあります。病院のように交替制であると生活のリズムも崩れるし、若いうちはあまりきつく感じられないとしても年齢とともに厳しくなってきます。

保健師業務の1つとして健診があり、1日立ちっぱなしになるほか早朝の健診を行うこともありますが、頻繁ではありません。生活のリズムが安定するということも、長く勤務を続けることのできる理由です。

行政保健師のデメリット

採用枠が少ない

デメリットとしては行政保健師の採用枠が少なく、どこの自治体でも若干名になっている場合がほとんどです。公務員試験も非常に難しく、競争率は5倍から10倍ともなっているため、採用されることもかなり難しい状況です。

また、一度採用された人は長く勤務する傾向が強いため、必然的に募集枠も少なくなっています。

公務員のため給与面では安定していますが、夜勤がないため看護師と比較すると年収は低くなります。年功序列で給与は上がっていきますが、公務員給与の見直しが進んでいることもあって、以前に比べると昇給率は下がっています。夜勤をしていて病棟勤務で同期の看護師と比べれば、その差は歴然です。

比較的残業が多い・業務の幅が広い

業務の中に本来の保健活動以外にも事務的業務が多いため、時間で上がれることは少なく残業をすることもなります。また、看護関係のスキルを用いることは非常に少ないため、看護技術を活かしたいという人には不向きです。

行政保健師の業務は、妊産婦や乳幼児、高齢者、障害者の戸別訪問も含まれます。自宅を訪問して健康チェックにあたり、体調や様子を確認しながら話を聞き、また相談に乗る業務です。コミュニケーション能力を問われますがうまくコミュニケーションをとることができない場合、対応のまずさから苦情が入ることもあり担当を変えて欲しいという要望もあります。

最近問題になっている、家庭での児童虐待や引きこもり、登校拒否、育児放棄、片親家庭への対応なども業務の範囲です。行政指導をしたことで時には逆恨みされることもありますし、精神疾患がある人からの相談には対応することが難しく、自殺をほのめかす相談などが続けば精神的な負担も大きくなります。

業務範囲があまりにも広いために対応が煩雑となることもあり、そのことがストレスの要因になる場合もあります。

看護師にもコミュニケーション能力は必要ですが、保健師には相談への適切な回答、科学的根拠にもとづいた保健指導能力も必要不可欠です。さまざまな業務を行わなければならないことで多忙になり、自分が思っていた保健師業務と実際の業務に差があって退職へ至るというケースもあります。