ICUのイメージといえば、ドラマの「救命病棟24時」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。いつも慌ただしく、生死をさまよう患者さんに溢れており、忙しく走り回っているイメージがあるかと思います。

あんなドラマに出てくる江口洋介のようなかっこいい医師はいませんが、患者さんの状態が厳しく、一人の患者さんにつきっきりでやることだらけな時も多々あります。

救急車で搬送されてきた患者さんが緊急入院してくる場合や、病棟での急変を受ける場合などは、一気に慌ただしくなり、ICU内が騒然とします。

医師の指示の確認や、物品準備はとにかく、正確さとスピードが求められる仕事も多いです。とにかく早く患者さんに処置をすることが求められるため、医師の指示を予測して、さまざまな構えをしておく必要があります。
頭の回転の早さも求められるし、様々な引き出しを持っておくことも必要になり、何より、科を問わず、様々な患者さんが入ってくるため、膨大なる病態理解力が求められます。

私は最初は全く勉強が追いつきませんでした。しかも、その患者さんについて、勤務後勉強しても、ICU入室期間はせいぜい3日間、頭で病態が整理出来た頃には、病棟へ移動になってしまうことがほとんど。

「けっこう頑張ったんだけどな」となんだか救われない気分でいっぱいでした。同じ疾患の人は次いつくることやら…。

それでも、新たに頭を切り替え、再び運ばれてくる患者さんの病態を頭に詰め込まなければなりません。常に満床のことが多く、患者さんの入れ替わりも激しい、次から次へと様々な患者さんがやってきます。

私は、人事異動でICUへの異動が決まったのですが、そんな大変なところでやっていけるか、とても不安でした。

もちろん、最初は大変なことも多かったです。何より、自分の知識の足りなさや自分の手際の悪さを実感することが多かったです。

しかし、患者さんの疾患の特徴をつかむことができれば、ケアや処置につなげることができることに気づかされました。

ICUは緊急で急変した患者さんばかりかというと、そういうわけではありません。

大手術後の患者さんが半分程度を占めます。そのため、その患者さんは前もって、手術後に入る事が決まっており、手術が行われるその日には、そのベッドが確保されます。

手術の患者さんは、同じ術式の患者さんも多いため、挿入物などの術後の状態はある程度予測がつき、状態把握もしやすいです。なんといっても、患者さんの病態を理解・予測しておく時間があるので、緊急の患者さんが多い中で、準備しておける患者さんがいることは何よりの救いです。

手術後の患者さんがICUに帰室してきたところを予測して、なるべくスムーズに処置ができるように準備しておくことが重要になります。それができれば、決められた処置はスムーズにでき、患者さんの訴えに耳を傾ける余裕もうまれます。

患者さんは術後、不安や痛みを抱えて戻ってくることが多いため、まずは、笑顔で声かけをすることが重要です。しかし、帰室時には、点滴をつなぎ変えたり、医師の指示を確認したり、挿入物やバイタルサインを頻回に確認する必要があるため、どうしても業務的になりがちなのです。

そこをこなしながら、患者さんに顔を合わせて話すことができれば、在室日数が少ないなかでもコミュニケーションがとれ、信頼関係も築くことができるのです。

ICUは他の病棟と違い、患者さんの受け持つ人数も少ないため、仕事の段取りも変わります。

ICUはICUの看護師ならではのやり方もあり、その特徴や方法はとても大変で、苦労もします。しかし、その特徴と方法を掴むことさえできれば、自分の立ち回りもうまくできるようになります。

病棟との違い、自分の役割、そこを理解し、医師との連携を図れれば、仕事のできる素敵な看護師への道は近いです。

急性期の患者理解や緊急時の対応力が身につき、きっと他の病棟で働くことになっても、この経験が生かされることは間違いありません。