社会保険の被保険者は退職すると社会保険の資格を失効することになりますが、一定条件を満たしていれば退職後も社会保険の継続が可能です。

退職後すぐに次の職場が決まっていれば健康保険の心配をする必要はありませんが、なかなか再就職出来なかったり、家族が加入している健康保険の被扶養者になれなかった時には非常に便利な制度です。

この制度を利用せずに国民健康保険に加入することも可能ですが、保険料が高くなってしまう事があり、任意継続被保険者になる方が保険料を安く抑えることが出来る場合が多いのです。

■任意継続被保険者になる条件

  1. 退職前、2ヵ月以上継続して勤務先の健康保険に加入している事(公務員が加入している共済組合の場合は1年以上)
  2. 資格失効日から20日以内である事

入社してすぐ退職しない限り、ほとんどの人が対象になることになります。

任意継続被保険者のメリット・デメリット

メリットについて

最大のメリットとして、保険料が挙げられます。

在職中の保険料は、本人が50%負担し、残りの50%は勤務先が負担していました。

しかし、任意継続被保険者になると本人が全額負担することになり、今までの2倍支払うことになります。本人が退職時に支払っていた保険料と健康保険組合全員の平均保険料を比べ、安い方が任意継続保険料となりますが任意継続の標準報酬月額は上限28万円と法律で決まっています。

退職時に27万円以上の報酬月額だったとしても、一律標準月額28万円で計算されるのです。

月額報酬40万円、50万円だった人も標準月額28万円として計算されるので、たとえ保険料が全額自己負担になったとしても収入が多い人ほど任意継続被保険者になった方が保険料を抑えることができます。

また、退職者の月額報酬で保険料が決まるため、扶養家族がいても保険料が上がりません。

国民健康保険の場合、被扶養者の人数によって保険料が変わり被扶養者が増えるごとに保険料も上がります。任意継続被保険は何人扶養家族がいても保険料は上がらないので、扶養家族がいる場合は国保よりかなりお得になるということです。

デメリットについて

メリットばかりでなく、一度任意継続被保険者になると原則2年間は止めることが出来ない、つまり脱退することが出来ない縛りがあります。再就職し新たに社会保険に加入することになった、被保険者死亡の場合は脱退となりますが、「国民健康保険に切り替えるから」「配偶者の扶養に入るから」など任意の理由で脱退することは出来ません。

また、任意継続切替前から支給要件を満たしている場合を除き、任意継続期間中は新たに傷病手当金、出産手当金を受給することも出来ません。更に、加入期間は最大2年間です。その間に社会保険に加入できなかった場合は、国民健康保険に加入することになります。

後期高齢医療の資格を取得した場合にも、資格喪失になります。

任意継続被保険者の保険料納付方法

  • 毎月納付書により納付する
  • 一定期間分を一括して納付書によって前納する
  • 毎月口座振替により納付する

この3つの方法があります。

ここで注意したいのは、保険料を期限までに納付しなかった場合、翌日に強制的に資格喪失になってしまいます。

口座振替だからと安心していても、振替日に残金不足で振替出来ず強制喪失ということもありますので、十分注意が必要です。1日遅れてしまっても認められません。

比較的収入が多く、扶養家族も多いのであれば任意継続を行った方がメリットがありますし、独身の場合や前年収入が少ない、配偶者の扶養に入る前提の結婚間近な方は国民健康保険の方が無難と言えます。人それぞれ立場が違うので、どちらが正しい選択ということはないため状況に合わせて選択すると良いでしょう。

任意継続被保険者加入手続き方法

加入している健康保険によって違いますが、申請先は健康保険組合または社会保険組合事務所です。

■必要書類

  • 任意継続被保険者資格取得申請書(健康保険組合か社会保険事務所にあります)
  • 本人確認の書類(運転免許証やパスポートなど)
  • 住民票
  • 健康保険被扶養者届(扶養家族がいる場合)
  • 印鑑(認印)

ここで気を付けなければならないのは、退職した日から20日以内に手続きを行う必要があります。20日間を超えてしまうと如何なる理由でも手続きが出来ません。

退職手続の際、担当者が任意継続保険制度を説明する義務はありません。このような制度がありますよと教えてあげる、退職者側から任意継続保険制度を利用したいので聞いてみるという程度です。

担当者も退職者も退職に際しての知識として知っておくべきだと思います。

任意継続保険制度を利用するからといって事業主側に影響はありませんし、健康保険を任意継続してもしなくても事業主は関係ありません。不明な点があれば、会社や健康保険組合、または協会けんぽの都道府県支部に問い合わせてみましょう。