患者の自覚症状として表れることは少なく、症状として異変を現した時には、手遅れや遅いと言われることの多いのが、栄養状態や体液、電解質バランスです。

栄養状態に異常を来たすと、疾患や病状、創部の回復を遅らせる要因となります。

また、体液や電解質異常をきたすと、心負担を増大したり、腎臓疾患などの内臓疾患の原因となりかねません。

この状態を明らかにするためには、血液検査や尿検査などの生理学的検査を行う必要なあり、看護師には、その検査を行う知識と技術、そしてそのデータから読み取れる事象をアセスメントできなければなりません。

また、時に明らかな電解質異常や栄養不良が生じると、患者さんの身体的症状として現れることがあります。

患者さんの訴えが何に当たるかを、その検査データと照らし合わせて検証する力も必要です。

では、栄養状態、体液や電解質バランスをアセスメントするために必要な看護師の基礎知識について記載します。

栄養状態

栄養状態は、タンパク質、脂質、糖質、電解質で評価します。

総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、血糖値、HbA1c、Hb、赤血球や白血球量、血漿、総たんぱく、アルブミン等から評価を行います。

また、皮膚状態や血管の弾力性、患者さんの食事摂取量や摂取カロリー、体重の変動などからも評価できます。

そして、患者さんの活気や精神状態等もアセスメントに加えることができます。

体液と電解質のバランス

人体の60%は水分と言われています。細胞内液や血漿などを体液とし、その中にはミネラルが存在します。

電解質とは、体液に溶けて電気信号を通すイオンの事で、体内水分量やpHの恒常性維持に役立ちます。

神経や心臓、筋肉を動かす為の電気信号を発信するために重要となります。

よって、この恒常性が保たれなければ、人体の運動や活動、生命維持に必要な情報や信号は途絶え、人が正常に稼働することが困難となります。

また、体液バランスが崩れると、疲労感、けだるさ、やる気の低下、精神機能の低下による活動性低下や鬱状態等を起こしやすくなります。

患者さんのなんとなくしんどい、なんとなく尿が出にくい、むくんでいるなどの症状は、体液バランス異常が潜んでいる場合があります。

Na(ナトリウム)
基準値:135~145mEq(ミリエクイヴァレント)/ℓ

【Na上昇】
体液を体内に保持されるよう身体が働きます。

よって、高血圧や浮腫の原因となり、この原因は、嘔吐や下痢による脱水、糖尿病や副腎ホルモンの異常、下垂体異常(尿崩症)等が挙げられます。

【Na低下】
心不全、腎不全、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症等があり、嘔吐や下痢の後、利尿剤使用の副作用等も原因です。

Cl(クロール)
基準値:98~108 mEq/ℓ

clは、体内水分量の調節やPHの調節に関わります。

【Cl上昇】
脱水症や過換気症候群、腎不全が原因です。

【Cl低下】
嘔吐、下痢、肺気腫、肺炎、腎疾患などが原因です。

カリウム(K)
基準値:3.5~5.0 mq/ℓ

Kは、神経や筋肉の働きを調節し、高値は不整脈の原因に、低値は神経や運動異常の原因となります。

【K高値】
腎不全、糖尿病、アジソン病などが原因です。

【K低値】
嘔吐、下痢、利尿剤副作用、呼吸不全、副腎疾患に由来します。

Ca(カルシウム)
基準値:8.6~10.2 mg/dℓ

Caは、骨や歯の形成、神経伝達、血液凝固に関わります。カルシウム濃度は、副甲状腺ホルモンや活性型ビタミンDが調整します。

【Ca高値】
悪性腫瘍、多発性骨髄腫、骨代謝異常、副甲状腺機能亢進症等が原因です。

【Ca低値】
甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、サルコイドーシスなどが原因です。

IN/OUT(水分出納)のバランス

IN:食事量、飲水量、輸液量

OUT:尿、便、ドレーン排液、出血などのガーゼ汚染、不感蒸泄など

体液は、水分出納、性別、体重、年齢などが指標となります。

また、基礎疾患が原因する事が多く、糖尿病、心疾患、腎疾患、副甲状腺や副腎疾患の有無などの病歴にも着目する必要があります。

そして、その患者さんが何の治療を行い、何も薬を飲んでいるかも大切な情報です。

また、年齢の情報も重要です。高齢者は、体液保有量は少なく、また渇中枢が働きにくくなっている為、体内水分量は50%程度と少なめと言われています。

よって、もともと成人より脱水や水分不足状態になっているという視点が必要です。

アシドーシスとアルカローシス

これは、pHの評価を行うものです。

体液の酸化やアルカリ化を示します。

アシドーシス
pH7.45以下で、体液の酸化を示します。

【代謝性アシドーシス】
脱水、発熱、下痢、糖尿病、肝性昏睡で、体液の喪失が原因です。

【呼吸性アシドーシス】
過換気症候群、肺炎、喘息、脳炎など酸素を吐き出せず、二酸化炭素が体内に溜まります。

アルカローシス
pH7.45以上で、体液がアルカリ性を示します。

【代謝性アルカローシス】
急激な嘔吐、胃液の喪失、低カリウム血症、利尿剤効果により、体内の酸性物質が喪失した状態です。

【呼吸性アルカローシス】
過換気症候群や発熱、肺塞栓などにより、呼吸が吸い込みにくい状態から体内の二酸化炭素濃度が低下します。

まとめ

栄養状態や体液の評価は、一見では分からない事ばかりです。

しかし、生命維持に重要情報となる為、検査によりアセスメントする力が必要です。

患者さんの症状や、バイタルサイン、検査データを照らし合わし、患者さんの異常早期発見に努めなければなりません。そのためには、患者さんの発するあらゆる情報が成しを示しているかを知識として持っておかなければなりません。

特に、心疾患、腎疾患、呼吸器系、糖尿病などの患者さんが入院する病棟ではこの知識は必須と言えます。