看護学部を併設する大学がどんどん作られ、看護師人気の熱は収まるところを知りません。

しかしその一方で、辞めていく看護師が多いのはみなさんもご存知の通りです。もしかすると、これを読んでいるあなたも辞めたいと考えている一人かもしれませんね。

一体どの位の新人看護師が職場を去って行っているのでしょうか。

日本看護協会が実施した「2016年病院看護実態調査」によると、2016年の新卒の離職率は7.8%。実に13人に1人の新人看護師が退職している計算になります。
常勤看護職員の離職率が約11%であることを考えると、新人看護師の離職率がいかに大きいかが分かります。

様々な研究において、新卒看護師の離職要因は

  • リアリティショック
  • 職場内の人間関係
  • 勤務時間・指導体制
  • 心と身体の健康問題
  • 新人看護師自身の問題

が大きな原因とされています。

それでは「新人看護師自身」はどのように感じているのでしょうか。
新人看護師が仕事を辞めたいと思った理由の上位5つをご紹介します。

理由その①【自分は看護師に向いていない】

新人看護師が仕事を辞めたいと思う1番の理由、それは「自分は看護師に向いていないのかもしれない」との思いです。

  • 仕事についていけない、覚えられない
  • 仕事でミスをしてしまった
  • 先輩からよく怒られる
  • 体力的にきつい
  • 看護師に向いていないと言われた

このような場面に遭遇し、自分は看護師に向いていないと考えてしまいます。

「もっとできると思っていたのにできない自分」「理想の看護師像とはかけ離れた自分」「こんなはずではなかったのに」

そういう思いが出てきます。これはリアリティショックを受けている状態です。

リアリティショックとは「数年間の専門教育と訓練を受け、卒業後の実社会での実践準備ができていないと感じる新卒専門職者のショック反応」のこと。

卒後、病院で働き始めた新人看護師は、学生時代の臨床実習と現場との違いにリアリティショックを受けてしまいます。

たいていは半年ほど経過するとリアリティショックのステージを乗り越えていくことができるのですが、中には「自分は看護師に向いていない」と思いこみ、離職してしまう人もいるのです。

理由その②【医療事故を起こさないか不安】

辞めたいと感じるふたつめの理由、それが「医療事故を起こさないか不安」という医療ケアへの恐怖心です。

  • 十分な自信がないまま、フォローが外れて一人立ちしてしまった
  • ヒヤリハットをしてしまった
  • 緊急度の高い現場に遭遇した
  • 先輩から怒られることが多く、職場で萎縮してしまう

こういった場面で新人看護師は医療ケアへの恐怖心を抱くと考えられます。

入職して数か月は先輩看護師やプリセプターと共に患者を持つことになりますが、その後一人で患者を受け持つようになります。

知識や技術などは、仕事をしながら覚えていく部分も多くありますが、あまりにも不安を抱えた状態で一人立ちしてしまうと、医療ケアを行うことへの恐怖心を生んでしまう結果となります。

理由その③【ヒヤリハット・インシデントレポートを書いた】

「ヒヤリハット・インシデントレポートを書く」ということも、新人看護師にとっては辞めたいと感じてしまう場面です。

ヒヤリハットの発生件数は新人看護師が圧倒的に多く、経験年数を重ねるごとに徐々に少なくなっていきます。また、ヒヤリハットが多く発生する季節は、新人看護師が配属される4月から夏にかけて増加します。

ヒヤリハットやインシデントレポートは、書く作業以外にも新人看護師を追い込みます。

  • なぜ自分はこんなミスをしてしまったのだろう
  • こんな簡単なこともできなかったのだろう
  • レポートを書かされるというストレス
  • レポート報告により、周りから非難を受けるのではないか、評価が悪くなるのではないかという恐怖
  • 立て続けにヒヤリハットをしてしまう自分のふがいなさ

ヒヤリハットレポートは、同じ過ちを繰り返さないためにも重要な報告書です。しかし、新人看護師にとっては、レポートを書かなければならないという事実ですら「辞める理由」となってしまうのです。

理由その④【勤務時間内に仕事が終わらない】

「勤務時間に仕事を終えることができない」というのも新人看護師にとっての大きな悩みです。

  • 仕事配分がうまくできない、要領を得ていない
  • 人手不足
  • 先輩看護師から十分に指導されていない
  • 実力以上の仕事量を任されている

ということが考えられます。

看護師の仕事は常に時間に追われています。複数の患者を受け持ち、スケジュール管理を自分ですべて行いながら仕事を回しています。

しかし、新人看護師は時間配分がまだ上手にできません。処置やケアはなんとか行っても、勤務終了時には記録の山ががっつり残っている、なんていう経験は誰もがあるはず。

残業代もなかなか満足に付けてもらうことができず、先輩看護師が帰っていく中、ひとり暗い病棟で記録に追われる…

「自分の要領が悪いから」「自分が看護師に向いていないから」と、自己肯定感を低くしてしまいます。そしていずれ、心と身体の健康を崩してしまい、退職へ追い込まれる原因となるのです。

理由その⑤【配属部署の専門的な知識・技術が不足している】

新人看護師が仕事を辞めたいと考える理由の5つ目が「専門的な知識や技術の不足」です。

大きな病院だと、ある程度教育体制が整っている所が多いかと思います。新人看護師の離職率が中小病院の方が大きな病院に比べて高いのは、中小病院の教育体制が不十分であることが原因のひとつだと考えられます。

プリセプターシップをとっている病院も多くあります。利点がある一方で、プリセプターとの関係性に悩む新人看護師も多く、人間関係をうまく作ることができない場合は、指導体制がうまく機能しない可能性もあります。

職場では初めての経験ばかりで緊張しっぱなしの生活。せめて帰宅後はゆっくりと心身を休める時間が重要です。

しかし、知識不足や技術不足によって仕事についていけず、先輩に怒られたり、患者から強く言われてしまうことで、新人看護師の自身は喪失してしまいます。

勉強する時間は必要です。しかし時間内に仕事を終えることもできず、やっと仕事が終わる頃には疲労困憊。勉強時間を確保することも、新人看護師にとって苦痛な日々となってしまうのです。

「こんな自分が看護師を続けていたら、いつか医療事故を起こしてしまうのではないか」「自分は看護師には向いていない」と考えるようになってしまうのです。

辞めたいと思ったら…まずは一度深呼吸!

新人看護師がどのような時に辞めたいと感じるのか、その上位5つの理由についてご紹介しました。実際に辞めたいと感じている方にとっては、共感できるところもあったかもしれませんね。

実は今回ご紹介した5つの悩みは、多くの看護師が乗り越えることができた悩みです。

自分一人では解決できないと思った悩みでも、必ず解決の糸口はあるはずです。

身近に相談できる人はいませんか?
師長さん、先輩、同期、家族、恋人…

勇気を持って一度相談してみると、案外するっと抜け出せるかもしれませんよ。

どうしてもだめなら、転職するという方法をとっても良いのです。

せっかく勝ち取った看護師免許です!
ここで諦めず、あなたらしく看護師として輝ける日をぜひ目指してくださいね!