家族支援専門看護師

役割

家族支援専門看護師は、専門看護師制度の中で特定されている「家族支援(Family Health Nursing)」分野の専門知識や技術を持つ看護師のことです。専門看護師には11の分野があり、そのすべてに共通する役割は、卓越した看護の実践(実践)、患者とケア提供者とのコンサルテーション(相談)、円滑なケアを行うためのコーディネーション(調整)、患者やその家族の抱える倫理葛藤の解決(倫理調整)、ケアを向上させるための教育(教育)、実践の場での研究(研究)の6つです。

家族支援専門看護師としての役割は、その名の通り患者の家族へ対するケアです。これは患者の家族に対して支援を行うことで、患者の回復促進や家族のセルフケアに繋げ、問題が発生した際に患者とその家族が主体となって解決できるようにすることを目的としています。

求められる専門知識や技術

本来、看護は怪我を負ったり病気を患ったりした患者に対して行われるものですが、家族支援専門看護師は患者の家族へのケアを行う職業であり、求められる専門知識や技術は他の専門看護師と比べて特殊です。

家族支援専門看護師に求められる専門知識や技術には、家族というものを系統的に捉えたうえで、家族の健康をアセスメントしたり患者とその家族の関係を形作ったりする知識や技術、家族に看護の考え方や方法を教える技術などがあります。

その他にも、家族を支援する知識や技術はもちろん、患者の症状や治療法などを理解し、それをもとに家族看護に介入する技術なども求められます。

家族支援専門看護師になるには

資格取得方法

家族支援専門看護師になるには、公益社団法人 日本看護協会が年1回実施している専門看護師認定審査(書類審査、筆記試験)に合格し、登録する必要があります。認定審査を受けるためには、3つの受験資格があります。

1つ目は、日本国の看護師免許を取得していることです。2つ目は、日本看護系大学協議会専門看護師教育課程基準にある科目単位を取得していることです。この条件をクリアするためには、看護系大学院の修士課程を修了している必要があります。3つ目は、看護師の免許を取得後、通算5年以上の実務研修を積み、そのうち通算3年以上は家族支援分野の実務研修であることです。

資格保有者数

家族支援専門看護師の資格保有者数は、全国で27名となっています。家族支援専門看護師の資格保有者数は、他分野に比べてもひときわ少ない状況です。

難易度・合格率

家族支援専門看護師の認定審査は、合格率が毎年90%前後で推移しており、難易度はそれほど高くありません。この認定審査を受ける看護師は大学院の修士課程を修了し、さらに実務研修を積んでいることもあり、審査をクリアするために必要な知識は既に身に付いているという人が多くいます。しかし、書類審査と筆記試験のそれぞれで合格点を取得しなければならないため、決して簡単な試験というわけではありません。

家族支援専門看護師の資格取得後

活躍できる職場

家族支援専門看護師の活躍できる職場は、主に大学病院や地域の中核となっている病院です。特定の診療科目に配属されることよりも、リンクナースとして所属することが多いのが特徴です。

業務を行う場所については職場によっても異なりますが、病棟で業務を行うケースが多く見られます。また、家族支援に力を入れている職場では相談室を設けている場合もあり、このような職場では相談室に常駐したり、普段は別室にいて家族と話し合いを持つ時にここを利用したりと様々です。

将来性

これまでは患者の治療が第一とされ、家族へ対するケアは後回しにされたり不十分であったりしたために、近年では家族支援の重要さが見直されてきています。専門看護分野に特定されたのは2008年と比較的新しく、家族支援専門看護師の資格保有者数はまだ少ない現状があります。

しかし家族支援が注目され始め、今後は需要が高まる資格と言えます。そのため、家族支援専門看護師として働きたいと考えている人は、早目に計画を立てて資格を取得すると良いでしょう。また、この資格を取得することで転職の際に有利になったりスキルアップに繋がったりすることも多く、将来性の高い資格でもあります。