母性看護専門看護師とは

役割

母性看護専門看護師は、人間の営みの上で重要なもののひとつである「性と生殖」について、リプロダクティブヘルスの見地から専門的な技術と知識をもって関わることが仕事です。

母性看護専門看護師の役割は、周産期における母子やその家族への援助が中心になっています。女性に対する健康への援助や地域における母子への援助などといったように、「母性」の全般に渡って関わっていきます。

近年の日本では、晩婚化に伴う高齢出産、生殖医療技術の進歩により出産を取り巻く環境が大きく変化しています。こうした状況の中で、看護に求める患者のニーズも多様化しており、緊急ケアが必要とされるような場合や出生前診断に伴う倫理的な問題などといったように、妊産婦やその家族が直面する様々な問題に対する専門的なケアの提供が必要とされています。

母性看護専門看護師は、高度で専門的な看護知識や技術をもって妊産婦、その家族を身体的、精神的、社会的にサポートしていかなければなりません。

具体的には、

  • 緊急事態への適切な看護的対応
  • 医療チームにおける調整役
  • 看護にあたる他のナースへの教育、相談への対応

などが求められています。

また、妊産婦やその家族が直面する精神的、倫理的な問題についてこれらの人たちの立場に立って、調整していくことも大切な役割です。そして、これらの実践に基づく研究によって、母性看護に関する技術の向上を図っていくことも、母性看護専門看護師の重要な役割となっています。

求められる専門知識や技術

母性看護専門看護師は、周産期の母子に対する緊急時のケアなどについて、専門的で高度な技術や知識をもって対応することが求められます。

また、妊娠や出産、育児を行う女性やその家族が持っている身体的、精神的な多くの不安に対して、こうした人たちの立場に立って問題解決へと導いていく能力も必要とされます。

効果的な母子看護をしていくためには、他の医療従事者や関連諸機関、地域との連携も必要であり、継続看護を可能にする調整能力や母子看護技術の向上のための研究、実践をしていくことができる能力も求められます。

母性専門看護師になるには

資格取得方法

母性看護専門看護師になるためには、日本看護協会の専門看護師認定審査として行われる書類審査と筆記試験に合格して認定、登録される必要があります。

認定試験を受験するためには看護師の資格を持っていて、看護系大学の大学院修士課程において日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準所定の26単位か38単位を取得していることが必要です。それとともに通算5年以上の実務経験があり、そのうちの3年以上は母性看護分野での経験があることが求められます。

母性看護についての専門看護師教育課程を設けている教育機関は、北海道、栃木、千葉、神奈川、新潟、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、広島、福岡の全国12ヶ所があります。

専門看護師教育課程では現行の26単位からフィジカルアセスメント、病態生理などを強化した38単位取得への移行が進んでいます。母子看護専門看護師教育課程では、福岡県にある聖マリアンナ医科大大学院看護学研究科が新体制に対応しています。

資格保有者数

2014年1月現在、全国で47名の母性専門看護師が認定・登録されています。

資難易度・合格率

母性看護専門看護師認定審査には、受験者の8割から9割が合格しています。審査の合格率は高いものとなっていますが、実務経験や教育課程の内容などには修士論文の作成なども含まれていて、受験までの道のりを考えると容易に合格することができるとは言い難いところもあります。

だからこそ、自身のキャリアアップに活かすことができるともいうことができるでしょう。

母性看護専門看護師の資格取得後

活躍できる職場

母性看護専門看護師は、周産期母子医療センターを備えた病院などが主な活躍の場となっています。昭和大学病院などの大学病院、名古屋第一赤十字病院などの赤十字が運営する病院、その他にも大阪労災病院、北海道社会保険病院、各地の公立病院などが挙げられます。

NICU、MFICUなどを含む病棟での勤務から、出産や育児に対する不安や心配の相談にのる外来まで、幅広く対応して活躍している人がいます。その他、地域の産婦人科医院などで専門性を発揮して活躍している人もいます。

将来性

近年における高度生殖医療技術の進歩、また少子化や晩婚化、核家族化などといった社会構造の変化は、子どもを産み育てるということについて対象者のニーズをより個別化し、多様化させるという状況をもたらしました。

こうした状況の中ではそこで起こる問題も多様化していて医療的、看護的な対応にもより専門的な技術や知識が必要とされるようになってきています。

また、「母性」については女性のライフスタイルが多様化し、そのライフサイクル全般にわたっての精神的、身体的、社会的なケアも必要とされています。

母性看護の分野は今後も実践的な看護の中で得られることをもとにして、研究とそのフィードバックを繰り返すことでさらなる看護技術の向上が必要とされる分野でもあります。こうした役割を担う母性看護専門看護師の必要性や重要性は、増していくものと考えられます。