日本の健康保険制度はすべての国民が加入し、給付を受けることができるというものです。そのうち「扶養」という概念が取り入れられているものは社会保険であり、国民健康保険にはありません。

社会保険では職場が保険者、勤務している労働者が被保険者ということになります。病気やケガのほか死亡、出産などといったことがあると保険給付も行われることになり被扶養者に対しても同様です。

被扶養者の定義

被保険者の配偶者に加えて直系家族である両親や祖父母、子どものほか孫なども該当します。さらに兄弟姉妹も含め被保険者によって生計を維持されている人ということになりますが、家族であれば誰でも良いということではなく法律の定めている条件を満たしていなければなりません。

●「生計の維持」とは?
同居しているかどうかということは、問いません。たとえば子どもが進学にあたって実家から出て一人暮らしをしているという場合に、その生活費を仕送りなどといったかたちで被保険者が支出していれば扶養の範囲として含まれることになります。

●配偶者について
必ずしも、事実として婚姻している法律上の夫婦に限定されません。いわゆる事実婚の状態であっても、被扶養者ということになります。

●祖父母について
年齢によって、扱いが異なります。後期高齢者医療制度の被保険者として該当する場合には、被扶養者から除外されることになります。

被扶養者の認定基準

まず何をおいても、健康保険法によって定められている被扶養者として当てはまることが大前提となります。その上で、職場が加盟している保険組合によって示されている条件も満たしていなければなりません。

さらに、職場で継続的に雇用されていて安定した収入を得ている被保険者には、家族を継続的に養う経済的扶養能力があります。被保険者自身にも家族を扶養しなければならない理由があり、事実として実際に扶養していることも必要です。

そして、家族がすべて無収入ということもありませんから、被扶養者となる家族の年収が被保険者と比較して半分に満たないことも条件となっています。

その上で恒常的な収入についても1年間で130万円未満となっていて、60歳以上か59歳以下で障害年金を受給している場合には1年間で180万円未満になっていなければなりません。

●被保険者と同居の場合
被扶養者は配偶者の両親や祖父母、配偶者が内縁である場合の連れ子などが該当します。それに加えて子どもの配偶者、甥や姪なども含まれます。

同居している上でさらに、被保険者がその生計を維持していなければなりません。なお失業中に雇用保険の失業等給付金を継続的に得ているなどといった場合も収入として見なされますから、その金額なども考慮することが必要です。

●被保険者と別居の場合
被扶養者は、直系尊属ということで、子どもが大部分となります。配偶者のほか両親に加えて祖父母や兄弟、孫なども含まれます。

保険組合によっては条件として別居している家族の名義になっている預金口座へ振込入金していることを求める場合、送金証明を準備しておかなければならない場合などもあります。

つまり継続的に仕送りをして生活費が負担されていなければなないのですが、大体の別居家族は子どもであって送金することも親であれば当然のことであるという考えからそれほど厳格な証明提示までは求められません。

被扶養者になるための手続きの流れ

退職して配偶者や家族の扶養へ入るならばすみやかに、大体ですと5日以内には家族が加入している事業所経由で保険組合などへ届け出なければなりません。

被扶養者(異動)届や離職票、源泉徴収票などを提出すると事業所が手続きを行い、それを受けて組合で扶養の事実を認めて受理した日付が認定日となります。

※認定日の例外
結婚や被保険者の資格喪失といった異動事由であれば、1ヶ月のうちに異動事由を証明する書類が提出されて組合などで受理した場合に限り事実が発生した日までさかのぼっての認定となります。

それでも離職票や源泉徴収票などを準備するまでにある程度の時間がかかりますから、時間の余裕があるわけではありません。