在宅看護専門看護師とは

役割

在宅看護専門看護師は、在宅看護(Home Care Nursing)について卓越した看護技術や専門知識を持つ看護師のことです。在宅看護が専門看護分野として特定されたのは2012年で、専門看護分野の中で最も新しいものです。

専門看護師には6つの役割があり、これは11の専門看護分野すべてに共通しています。その6つの役割とは実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究で、特に倫理調整、教育、研究は専門看護師ならではの役割と言えます。在宅看護専門看護師の役割は、在宅での療養を希望する患者とその家族に対し、それぞれの生活空間で行う在宅療養を支援することです。

求められる専門知識や技術

在宅看護専門看護師に求められる専門知識や技術には、自立支援や病状悪化の防止、リハビリテーションなどがあります。在宅看護では病院で行うようなケアを在宅で行うため、その人の置かれる環境を考慮しながら最適な看護の提供・実践を行うスキルが求められます。

また、そのためには患者1人1人についてアセスメントを行う必要もあり、様々な視点から状況判断ができる能力も求められます。さらに、在宅医療を希望する理由には様々なものがあります。そのため、患者とその家族の人権を尊重しながら看護を行うことや、終末期ケアに関する知識や技術も求められます。

在宅看護専門看護師になるには

資格取得方法

在宅看護専門看護師になるには、専門看護師認定審査に合格し在宅看護専門看護師として登録を行う必要があります。この認定審査は、公益社団法人 日本看護協会が実施しているもので、認定審査は年1回のペースで実施されています。認定審査は書類審査と筆記試験の2種類が行われ、それぞれ定められた合格点を取らなければ合格にはなりません。

また、認定審査には3つの受験資格が定められています。まず、日本国の看護師免許を取得していること、次に、日本看護系大学協議会専門看護師教育課程基準にある科目単位を取得していること、最後に、看護師免許を取得して通算5年以上の実務研修があり、そのうち通算3年以上は在宅看護分野の実務研修であることの3つです。合格後に認定証が交付され、登録をすることで在宅看護専門看護師として働くことができます。

この資格は5年ごとに更新が必要で、その際には書類審査が行われます。

資格保有者数

在宅看護専門看護師の資格保有者数は全国に11名しかおらず、専門看護分野の中でも最も資格保有者数が少ない資格です。これは、在宅看護が専門看護分野として特定されて間もないことが主な理由ですが、在宅看護が注目され始めたのが最近であることも影響しています。

難易度・合格率

在宅看護専門看護師の認定審査は、合格率が毎年90%から95%と高い位置で推移しています。そのため、認定審査の難易度がネックになって取得が難しいと感じることは少ないでしょう。

しかし難易度が高くないからと言って、楽に取得できるというわけではありません。認定審査では実務研修実績の内容も審査対象となっており、筆記試験の出題内容も専門的なものであるため、合格するために努力は不可欠です。また認定審査の受験資格を取得するのにも時間がかかるため、実際には受験資格の取得の方に苦労する人もいます。

在宅看護専門看護師の資格取得後

活躍できる職場

在宅看護専門看護師が活躍する主な職場は企業が運営する訪問看護ステーションで、資格保有者の半分以上が、実際に訪問看護ステーションで活躍しています。訪問看護ステーションは在宅看護を行うための職場であり、在宅看護専門看護師としての専門知識や技術を最大限に活かせる職場です。

また近年では、地域の中核病院などで訪問看護や在宅看護への取り組みを進めている職場が増えており、このような取り組みを行う病院には付属の訪問看護ステーションが設置されていることもあります。そのため、病院で在宅看護専門看護師として勤務する際は、診療科に配属されるのではなく付属の訪問看護ステーションに配属されるというのが一般的です。

将来性

在宅看護専門看護師の資格は、将来性の高い資格と言えます。というのも、在宅看護という医療サービスが社会に普及したことや、在宅での治療や終末期を自宅で過ごしたいと希望する人が増えてきているからです。そのため多くの企業が訪問ステーションを運営し、病院にも訪問看護ステーションが設置されるようになってきています。このように需要は高まってきており、それに伴って在宅看護専門看護師の需要も高まりつつあります。