慢性疾患看護専門看護師とは

役割

慢性疾患看護専門看護師の役割は、慢性的な心身の不調を抱えながら生活している人に対して、慢性疾患看護における専門知識や技術を用いて、病状の管理や、療養生活に対する支援などを行います。

近年、慢性疾患のなかでも、とりわけ糖尿病、高血圧、肥満、心疾患、脳血管疾患などといった生活習慣病が注目されています。これらは、我が国の国民医療費の3割にのぼり、死亡者数の6割を占めるといわれています。

慢性疾患に対する医療的な取り組みは、我が国において急務のことであり、看護の分野でも、専門性の向上が求められています。慢性疾患は治療・療養が長期に渡ることから、患者本人や、それを取り巻く家族も精神面での負担が大きくなります。こうした精神面での支援も欠かすことができません。

また、ナースをはじめとする医療従事者や地域医療、福祉分野と連携しながら、患者の生活というものを視野に入れた包括的な支援が必要となってくるのが慢性疾患看護です。

こうしたケアに関わる人に対するコンサルテーションや教育活動、関連諸機関の間に入って橋渡しをしたり調整したりすることも慢性疾患看護専門看護師の重要な役割となっています。

そして慢性疾患看護専門看護師には、これらの実践、研究を通して、慢性疾患看護の質向上に努める役割も課せられています。

求められる専門知識や技術

慢性疾患は、循環器系、呼吸器系、神経系など多岐にわたるため、慢性疾患看護専門看護師にはこれらをカバーする幅広い知識と、個々の症状に対する専門的な知識の両方が必要となります。その上で、患者の個別性を重視した、継続的な援助を行っていくことができる能力が求められます。

慢性疾患の治療・療養生活には、患者を取り巻く家族や周囲からの支援も必要です。そうした人たちに知識や技術を提供していくコンサルテーション力、地域医療、福祉関係者との連携を可能にする調整能力といったものも重要です。

そして、これらの実践、研究を通して、慢性疾患看護が直面する問題を解決していくことが求められています。

慢性疾患看護専門看護師になるには

資格取得方法

慢性疾患看護専門看護師となるためには、日本看護協会が実施する慢性疾患看護専門看護師の認定審査に合格する必要があります。

審査を受験するためには、以下の3点が必要となる。

  • 看護師の資格を有していること
  • 看護系大学院の修士課程を修了し、日本看護系大学協議会が定める所定の単位(28もしくは36単位)を取得していること
  • 実務経験が5年以上であり、そのうち3年以上の慢性疾患看護分野での経験があること

慢性疾患看護専門看護師の教育課程を実施している大学院は、北海道から沖縄まで、全国で20ヶ所あります。

教育課程では、慢性疾患看護が抱える問題についての解決能力の向上を目的とした、演習や実習も含めたカリキュラムが組まれています。

資格保有者数

2014年1月現在、全国で103人の慢性疾患看護専門看護師が登録されています。

難易度・合格率

教育機関によっては受験者全員が合格するなど、慢性疾患看護専門看護師の合格率は高くなっていますが、審査の難易度とは直結していないと考えるべきでしょう。実務経験や修士論文作成も含めた教育課程の内容など、受験するまでの道のりを考えると高い合格率は、教育課程におけるハードな勉強の成果であるともいえるのではないでしょうか。

慢性疾患看護専門看護師の資格取得後

活躍できる職場

慢性疾患看護専門看護師は、聖マリアンナ医科大学病院、順天堂大学医学部付属病院などといった大学病院や、脳血管医療センター、成人病センター、地域の拠点となるような総合病院などが主な活躍の場となります。

慢性疾患の病状は多岐に渡るため、活躍できる診療科も消化器科、神経内科、循環器科など多様となっています。患者への対応だけでなく、院内外において、ケア提供者への慢性疾患看護に対するコンサルテーションや教育活動を行ったり、患者の退院調整や療養生活のおける地域医療や福祉関係者などとの連携、調整を行ったりします。こうした業務とともに、看護外来で、療養指導・相談などを行っている人も多くいます。

また大学の教員として後進の指導にあたっている人もいます。

将来性

近年では、慢性疾患に悩まされ医療機関にかかっている人の割合が増えてきています。慢性疾患はその病状が多様であることからも、看護について個別性が要求されます。

また、「完治する」ということが難しいものであり、症状を抱えながら生活を続けていくことが必要となってきます。

慢性疾患の症状を抱えながらでも、身体的、精神的、社会的にその人らしい生活をしていくことができるかは、高齢化社会の進行も相まって、今後益々重要な課題となっていくでしょう。

こうした状況のなか、慢性疾患看護に対する専門的知識と技術を有し、その質を向上させる役割を担う慢性疾患看護専門看護師の必要性は、高まってくるもと考えられます。活躍の場は、今後さらに広がっていくのではないでしょうか。