老人看護専門看護師とは

役割

老人看護専門看護師は、高齢者が入院、入所、利用する保健医療福祉施設において、認知症や慢性疾患など様々な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるべく、専門家として質の高い看護を提供することが役割です。

また、同時に高齢者だけでなくその家族に対しても配慮することが重要です。在宅にて看護・介護する家族の負担は計り知れないものであり、身体的・精神的な介入が必要となります。訪問看護などにおいても、家族が負担と感じないように考慮しつつ、専門家として適切な指導やアドバイスをする役割が求められます。

求められる専門知識や技術

老人看護においては、対象者の老化過程により身体の状態や抱えている慢性疾患が異なり、また認知症の症状が見られる場合もあるため、老人看護専門看護師は個人個人に合わせた看護を提供することが必要です。

また、看護だけでなく介護の面からも介護スタッフをはじめとした他職種の方と協働して行うことが必要であり、総合的なケアとともに患者のQOLを考慮した看護を提供するための知識も必要です。現場において一人で全てを見ることができないため、家族を含めた情報共有や同僚や部下の看護師などへのアドバイスや教育、指導ができる能力も求められます。

老人看護専門看護師になるには

資格取得方法

老人看護専門看護師となるためには、日本の看護師免許を取得し、免許取得後に看護実務経験が5年以上かつ、その内3年以上は高齢者の入院・入所・利用者が多い施設や場所において、老人看護の実務経験があることが必要です。

また、老人看護分野の実務研修において、実績報告書の提出が必要です。報告書は直接的な看護の実践を2例、看護職を含むケア提供者に対するコンサルテーションを1例、ケアを円滑に行うための保健医療福祉関係者間のコーディネーションを1例、看護師、介護士などに対する教育を実施した教育活動を1例、記載して提出する必要があります。

その上で看護系大学大学院修士課程もしくは関連領域の大学院修士課程において必要な科目単位を取得し、その教育課程で取り組んだ論文等の研究報告が必要です。

以上の必要要件を満たし、老人看護専門看護師認定審査を受け、書類審査と筆記試験で合格すれば、老人看護専門看護師になることができます。

資格保有者数

2014年2月20日現在、専門看護師資格を認定管理している公益社団法人日本看護協会に登録されている老人看護専門看護師の資格保有者数は66名です。

資難易度・合格率

他の専門看護師同様に、老人看護専門看護師の合格率はおよそ90%前後で推移しているとされています。

しかし、これは決して難易度が低いのではなく、老人看護の分野で活躍するために求められる知識や技術を身につけるため、様々な努力を行っている人たちだからこその高い合格率といえます。

実務研修や教育課程をクリアすることは中々簡単なものではなく、実現するための様々な努力や周囲の協力も必要です。そうしたハードルを乗り越えた看護師であれば、十分合格できるということです。

老人看護専門看護師の資格取得後

活躍できる職場

老人看護専門看護師は、入院施設のある病院や、リハビリテーション施設のある病院や福祉施設、訪問看護ステーションや老人介護施設など、医療施設以外でも様々な場所での活躍が可能です。特に近年は、高齢者が入所しているグループホームなどの施設は数多く、どの施設においても看護師の存在が不可欠となっています。

老人看護専門看護師の多くは大学病院や公立の病院に勤めていますが、中には独立行政法人の国立長寿医療研究センターや看護大学に勤務するなど、研究や教育の分野で活躍されている方もいます。

将来性

現在、日本は高齢社会として高齢者の介護や看護に携わる人間を数多く必要としています。当分の間、この状態が続くことが予測されるため、老人看護専門看護師の資格を取得し、より質の高い看護を提供するべく看護の現場で活躍することは非常に素晴らしいことです。

また、医療施設だけでなく介護施設や訪問看護の分野など、様々な現場で活躍できることから、都市部や地方など関係なく日本全国どこででも活躍できる資格といえます。