専門看護師とは、日本看護協会によって認定される資格のひとつです。同じく日本看護協会から認定されている認定看護師と混同されがちですが、別々の資格です。認定看護師は特定の分野において技術と知識の熟練している看護師が学び、水準の高い看護を行います。

一方で専門看護師は個人や家族、一定の集団を対象として水準の高い看護ケアを行うために、それぞれの専門看護分野に関する知識と技術を高めていきます。その上で認定試験を受け、合格することで名乗ることが許されるということが共通しているため、間違われやすいのです。

専門看護師の役割

専門看護師の役割は、大まかに6つあります。「実践」は個人、家族、集団に対して看護を実践することです。「相談」は、看護スタッフへのコンサルテーションです。「教育」もまた、看護スタッフに対して専門分野のことを教える役割となります。「調整」は保健医療福祉チームをコーディネイト、調整することによって適切な看護が提供されるようにすることです。「提供」は専門知識と技術を向上させるため、実践の場において研究活動をします。そして「倫理研究」は対象となる個人や家族、集団の権利を守るために倫理面での問題や葛藤を解決し、精神的なサポートをします。

専門看護師の仕事内容

専門看護師の仕事内容は、その専門分野ごとに異なります。精神看護、がん看護、地域看護、老人看護、小児看護、母性看護、成人看護(慢性)、クリティカルケア看護、感染看護という9つの分野に分かれています。たとえば精神看護専門看護師ですと患者さん本人とのやりとりだけでなく、患者さんの家族とのやりとりも重要な仕事となります。

精神疾患の難しいところは患者さん本人が不安を感じていることと同様に、家族にとっても不安があり、どのように接して良いかがわからず二次被害を生んでしまう可能性があるという点です。逆に家族の愛情に包まれることで劇的に回復することもあり得ますから、その橋渡しとなるべく間に立ち、包容力と強い心によって患者さんと家族を守る必要があります。

また、感染症看護専門看護師ですとその仕事には大変繊細なところがあります。感染症の患者さんは避けるべきような存在として扱いを受けているケースもあり、孤独を感じている人が少なくありません。感染症に加えて精神疾患も発症し得る状態になっていますから、そうした孤独を埋めるために専門看護師が家族のように接することも求められます。精神看護との違いがここにあり、家族が接触することで感染してしまう危険もあるため、専門知識を持つ専門看護師にかかる責任も大きくなります。入院中は専門看護師が患者さんの家族であるというスタンスでこまやかに様子を見守り、容体が変化すればすぐに気づかなければなりません。

専門看護師が一般の看護師ともっとも異なる違いは、専門看護師がその分野において専門家であるとして公的に認められているという点です。一般的な看護師は診療科目の異動も多く、専門的という域に達するほど分野に特化することはあまりありません。もちろん希望すれば一定の分野に詳しくなることもできますが、専門看護師のように集中して学んでいるわけではないため、周囲からの信頼度には違いもあります。そのため一般看護師が専門看護師から学び、専門看護師や認定看護師を目指すという事例もあります。

後輩看護師の育成という仕事も専門看護師にはあり、現場における看護師のリーダーとしての役割もあります。通常のキャリアとしては役職に就かない限り、「いち看護師」として働くことになりますが、専門看護師については早い段階から現場のリーダーとして力を発揮することになります。

専門看護師の今とこれから

専門看護師は2013年になってようやく1,000名を超える数になったばかりであり、今後さらに増えていくことが期待されています。なかなか数が増えない理由としては、認定の前提になる教育機関が少ないため、認定試験を受けるための条件が整いにくいというところもあります。少しずつ教育機関の整備が進んでいき、専門看護師の絶対数も増えることで、社会的な認知度も高まるはずです。